スター精密|既存事業を優先しつつ生み出す新規事業
会社概要
弊社スター精密は静岡にある創業76年の中小の製造メーカーです。主力事業は2つあり、小型の業務用プリンターを製造販売している特機事業部。もう1つは、自動旋盤など、工場などで金属を加工する工作機械を製造販売している機械事業部です。古くから海外ビジネスを展開していることもあり、海外向けの売上が9割近くあるという点が特徴です。
スピーカー:山田 隼也氏(特機事業部 営業部 営業企画室 室長 )
アクセラレータープログラムを開催した背景を教えてください
2022年、経営陣が「2030年に目指す姿」を掲げ、中期経営計画を策定し発表しました。それにむかって全社で動いていますが、今回のアクセラレータープログラムには、特機事業部として参加しました。
特機事業部は、既存ビジネスで収益は確保しつつ、サービスビジネスの事業化を牽引する役割を担っており、今までのプリンターという既存プロダクト・既存ビジネスに捉われことなく、その周辺領域や新たなサービスを提供していくことにチャレンジしています。
既存プロダクトや既存ビジネスの領域においては、我々も経験が長く、ノウハウや技術も充実していますが、新しい領域になると持ってるノウハウや技術だけでは不足してしまいます。そこで、アイデアも含めて外部の方々と連携してやった方が効率がいいだろう、ということでオープンイノベーションにチャレンジすることになりました。
Crewwのサービスで解決したかった課題はどのようなものがありましたか?
困っていた課題は、筋のいいアイデアが社内だけでは生まれないことです。そこで、外部からアイデアを募集する方法を活用してみようとなりました。我々業界人の常識内では出てこないような発想を欲していました。
2つ目は技術的な面です。スタートアップの方々は、我々とは違う領域でコ独自の技術を持って会社を立ち上げられているので、自社のビジネス領域で使えるかもしれないという視点で将来的なパートナー、あるいは弊社のコア技術になりうるような技術をお持ちの方々を探したいというのがありました。
3つ目としては、オープンイノベーションを実施してみることで社内文化の醸成や人材育成的な面での課題です。一朝一夕で変化するわけではないですが、外部から刺激を得ることで、それを社内に取り込み、イノベーション人材の育成や文化育成をしていきたいという狙いがありました。
実際にプログラムを進める中で課題はクリアされましたか?
そうですね。もちろんいきなり100点満点にはならないですが、総じて30点くらいの感覚です。100点満点が例えば、1つ目のアイデア収集に関する課題において、「これは売れる!」というアイデアがポンっていきなり出てくることを示すとしたら、初回である今回は30点ぐらいという感覚でした。つまり、ポジティブな意味での30点です。
2点目の技術面においても、来年には新規で製品が生まれ事業化できるというコア技術が目の前にある状況を100点とした場合の30点くらいの感覚です。 3つ目も、社内文化がすごく外向きになって改革された状態をゴールで100点だとしたら、30点ぐらいという意味合いです。
30点と聞くと微妙と思うかもしれませんが、この半年間の取り組みでそういう芽が出はじめているなっていう感覚はあるっていう意味で30点なので、これを今後着実に進めていけば40、50、60と着実に成果が積み重なる感覚があります。ですので、この30点というのは、半年間の取り組みにおいて確かな成果があったという意味です。
具体的にどのようにCrewwのサービスを活用しましたか?
最も助かったのはやはり募集プラットフォームを通じたスタートアップさんに声掛けをする仕組みです。プラットフォーム上で募集ページが綺麗に作れ、Crewwさんのコミュニティリーチの中で、2週間ぐらいの短期間で協業案の応募をかけました。25社の応募をいただくことができたので、ここの仕組みが一番ありがたかったです。
他には、田尻さんや舟田さんといったカスタマーサクセスの方々によるアドバイスが非常に役立ちました。Crewwさんのカスタマーサクセスの方々はスタートアップに様々なネットワークをお持ちで、かついろんなご経験があるので、「ここはこんな風にしたらいいと思いますよ」といったアドバイスをくださいました。具体的には、弊社があまり協業をイメージできなかったスタートアップさんであっても「実はこのような魅力があるスタートアップさんなので1回お話しした方がいいです」という助言をくださり、その後の会話につながりました。
また、システム化されているため、やりとり履歴が残るという面は役に立ちました。総じて、管理するという点では楽に進めることができました。現状のステップがどのようなフェーズで進んでおり、フェーズにより「この画面でこうやってください」というヘルプがあり分かりやすかったです。
今回採択して実証実験段階に進む中で、全体を通してプログラムの中で目標数値とか訂正目標などは定めましたか?
今回弊社では予算目標についても採択する企業の目標の数も設定しませんでした。
➖今回のプログラムはまずはファーストチャレンジというところで何がどこまでできるのかを試してみる形だったんですかね。
そうですね。やってみて「いいパートナー、いいアイデア、いい技術に出会えたら嬉しい」というくらいのつもりで参加いたしました。実際は幸いにも、Crewwさんに支援いただいたおかげもあって、4社のスタートアップさんを採択させて頂くことができたので、良かったです。
実際に採択した4社のプログラムはどのようなものでしょうか?
採択させて頂いた4社の中でも、短期的に実験に取り組みましょうという企業さんと、長期的な関係として一旦プログラム内での取り組みは完了とし、お互いアンテナを貼りあい情報交換をしていく企業さんもありました。
実際4社のうち3社と実験に向けた取り組みの協議を行っており、プログラムは終了したので、お互いビジネスとして、また同時に深く考えすぎずに、「こういうモノをつくってみましょう!」」と、弊社の方でも手を動かしつつ、スタートアップさんのアイデアや技術を組み合わせたプロトの作成をしはじめています。実証実験というより、まだその一歩手前のフェーズだと思っています。ニーズ掘りのため、MVPサンプルのようなものを作って、我々の潜在顧客に紹介するという、取り組みです。
事前にスタートアップの社長さんたちにも私たちがやりたいことー 今回作るMVPサンプルの結果を持って、その次のフェーズに行くか行かないかを判断をしたいー をお伝えしています。そこにかかる費用は負担しますが、それ以降については現時点では分かりませんので、結果次第ということに賛同いただいて進めています。
スタートアップ共創を実施してみて感じたこと
例えばスタートアップさんと実証実験に取り組む前に知財系はどのように考えるべきか方などをCrewwの田尻さんにアドバイスをもらったり、お互いの認識の相違なきようにやるにはどういうステップ踏すべきかといったアドバイスは勉強になりました。
今回のアクセラレータープログラムは、本当にまだ入り口の入り口をCrewwさんのプラットフォームとスタッフの皆さんに支えられて実施したという位置付けです。
既存事業とバッティングしたら既存事業を優先して構わない。
➖実証実験に進む3社との共創プロジェクトについては、御社の中で事業部の人たちの巻き込みが必要となってくると思いますが、どのように工夫されましたか?
開発のエンジニアの方たちに集まってもらい、私から一緒にやりましょうという声かけを中心に進めました。
➖事業部の方を巻き込むにあたって、皆さん本業がある中、アドオンで新規事業創出に取り組むことになると思うのですが、その点はいかがでしたか?
エンジニアの方たちとは2つ約束をしました。1つ目は、既存事業とバッティングしたら既存事業を優先してかまわないこと。隙間時間など本業の合間で、かつ期限をあえて定めずに進めてもらえるよう約束することで参加してもらっています。
2つ目ですが、既存事業であるプリンターを作る時というのは、すでに仕様がある程度決まっているものを作ることが多いんです。ですが、今回に限っては、私がスタートアップの人と「こういうものを作りたい」と言ってるものをベースにしつつも、皆さんの意見を反映して好きなように作ってくれていいという約束をしています。
まだ手探りではありますが、スタートアップさんとのピッチを見てもらったり、上記の約束をすることなどで、割と楽しそうにやり始めてくれていると信じています。
今後の展望
物づくりという点が根底にあるので、それはハードソフト問わず技術的なシナジーがある会社さんやスタートアップさんが味方でいてくれることがとても大きな力となるんです。
彼らの技術を弊社の技術やリソース、チャネルなどとコラボした時に、どんな提案をお客さまにできるだろうか、という目線で常にパートナーを探してます。
ある程度可能性を感じたものに関しては、コストもかけつつ、まずは短期間でサンプルやMVPを作り、お客様に当て、フィードバックをいただくことを繰り返しやっていきたいと思っています。
ですので、10個プロジェクトを進めて10個が事業化されることはありえませんが、10個やって1個、2個、3個と確率を上げるように努力をしていきたいと思います。とはいえ、我々だけでやってるとおそらくその10個を生み出すのにも10年かかってしまうと思いますので、アクセラレータープログラムの名前の通りスタートアップや外の方と共創することで、できるだけ短期間でその10個の種をつくり、市場に実証実験を通じて当てていくことで、試行錯誤していければと思っています。
ただ、その後の製品化や事業化に進めるかどうかという点はこれから頑張らねばならない領域なので、成果を出すという意味だとまだまだ勉強すべきことが多くあります。まずは1個でも成果を出していきたいです。
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