2019入学式式辞。読まれてないのもあるけど、どれもすばらしかった。
これまであまり読んでいなかったが、
東大がこうして長年にわたり
式辞を残していることは驚いた。
それに、どれも素晴らしい。
私大のものとかこの機に見てみたが
あまり見つからない。
これだけ公表する前提で
文章を書きあげていると思うと
中身にも自ずと力の入りようが伺える
主に
・学部生向けの総長式辞では
大学でどう過ごすことが望ましいのか、
大学院や祝辞では
多様性とグローバルな社会について
学問をする身としての振る舞いについて
言われている。
注)あとで自分がちゃんと
原文を読み返すように
変に内容箇条書きをして
まとめていないので
もし読んでいる人がいるなら
ちょっと不親切かもしれません。
●H31学部入学式 総長 五神真 先生(量子光学)
大学の価値・過ごし方。
「まず、踏み出すこと」
存外、大学の価値を理解して
過ごしている学部生は少ない。
というか、ほぼいない。
簡潔に、鋭く、
大学の価値がまとまっている。
●H31大学院入学式 総長 五神真 先生(量子光学)
総長として、次の時代見据えた式辞。
次の世代が世界から求められていること、
東京大学が養成しようとしている人物。
知をもって人類の発展に貢献する人材を、私は、
「知のプロフェッショナル」と呼んでいます。
●H31人文社会系研究科 大西克也 先生(古代中国語)
『史記』を題材に、
古代中国語の深み、研究の深み、
人文学の深みが沁み入る。
人文学が危機を迎えているこの時代に、
人文社会系研究科長が選ばれている意味を深読みしたくなる。
おびただしい量の注釈や翻訳があるが、
『史記』は原文を読むと「何もわからない」。
当時の作者の目に何が映っていたのか、
言葉と言葉の表現する世界認識が対応しておらず、
「何も分からない」。
●H31大学院入学式 Takao K Hensch先生(NeuroSci)
氏が伊藤教授から教わった重要な考え。
研究者として過ごすにあたって、
忘れられない大事なこと。
研究をする人にとっては
これほど原点回帰できる文章には
ないのではないかと思う。
本人が受けた感銘が伝わってくる。
My goal was simple: to learn from my scientific hero, the late Professor Masao Ito, who sadly passed away just a few months ago at the age of 90.
there is just no substitute to meeting your mentor in person. It is said that a mentor is someone whose hindsight becomes your foresight. This is what the graduate training experience is all about.
I fondly recall and deeply cherish every moment I had to speak with Professor Ito, because his wisdom about life more broadly was so precious. I would like to share five of the highlights with you today.
●H31学部入学式 祝辞 上野千鶴子氏
話題の祝辞。
余計なことに触れたくは無いが、
いろんな人に議論させることがいかに大変なことか。
一つだけ付けるなら、
「成功体験」の真っ只中にいる新入生は
これくらいの内容で翼は折れない。
勝手に誇りに浸っている親には
しんどいのかもしれない。
どう思ったっていいが、
自分の手で 調べて、
自分の頭で 真摯に考えなくてはいけない。
知は、快/不快とは関係ない。
知を生み出す知を(中略)
学生に身につけてもらうことこそが、
大学の使命です。
ようこそ、東京大学へ。
●H31 教養学部長 太田邦史 先生(生物学)
教養学部入学を前に、
知っておいてほしいことばかり
・日本で珍しい教養学部について
「教養学部」は、
一般教養をただ教える場ではなく
専門研究を行っている。
第一線の研究者による
リベラルアーツ教育が行われている環境である。
・教養とは
・マナー、東大生は苦手なようです
・cool head, warm heart
●H30年度早稲田大学 卒業生に贈る言葉 長谷正人先生
先生が培ってきた
人文学の深い洞察が
にじみ出ている様に思う。
真に理解できる気がしなかった。
読むほどに思うことがあるが、
少し開けてから読んだら
見える景色は変わるだろうか。
変に言葉にしたくないので、
気になっているところを
少し引用してみる。
もしかしたら人間が人間を信じられなくなった不幸な時代に、
みなさんは新しい人文学
(つまりヒューマニティーズという人間についての学問)を
唱える文化構想学部で学ぶことを選び、
ここに卒業されたことに
わたしは心からの敬意を払いたいと思います。
いささか図々しいお願いですが、
私としてはみなさんに、
そのような弱者の世界に、
積極的に自分の魂を住まわせてほしいと思うのです。
みなさんがこの表象・メディア論系で学んだのは、
そうした魂を自らのなかに育てることなのだと思います。
●H31京大 大学院式辞 総長 山極 壽一先生(霊長類)
研究の本来のあり方、
近年の置かれている状況について。
多様な学びが共存し、
対話が行われて、
未来の課題を解決することにつながる。
広い学問を奨励するとともに、
現況において学問のあり方を
問うているように感じた。
昨年、ナイジェリア出身でノーベル文学賞受賞者の
ウォーレ・ショインカ氏が京都大学を訪れ、
話を聞くことができました。
グローバル化が進む中で、
世界各地で格差が急速に広がり、
ヒューマニズムが危機にさらされている、
とショインカ氏は危惧を抱いていました。
文学は創造的な力を持ち、
それは決して科学と矛盾するものではない。
どちらも論理的な思考に基づいて世界を解釈し、
未来を創造する。
文学と科学は互いに補完しあいながら、
世界を先導する知的人間にとって
欠かすことのできない力であるというのです。