
当初のアイディアよりも、もっと凄いものができてしまった / 田嶌 直子さん特別インタビュー
フ ル A I C M 制 作 カ レ ッ ジ / S p e c i a l I n t e r v i e w v o l .1
フルAIによるCM制作が習得できるオンラインカレッジのリアルタイム受講をされた田嶌 直子さんに、生成AIへ持っていた当初のイメージや受講に至った経緯、受講によって変化した心境と今後への展望を伺いました。
フルAICM制作カレッジ参加前の状況
>>生成AIを使った広告動画制作について、どのようなイメージを持っていましたか?
田嶌さん :
生成AIを使った広告動画で言うと、伊藤園や、マクドナルド、キンチョールの広告は面白いなと思いました。個人的には生成AIが話題になり始めた頃にオンエアされたキンチョールのCMのように、AIならではの、想像もできないような狂った世界観のものの方が好きです。伊藤園やマクドナルドのように、生成AIで作られた美女を使っていることも素敵なんですけど、女性をアイドル化してたり、オブジェ化しているようなものが多い気がして、フェミニスト観点から世の中の女性はこういうものを見て、どう思うだろうっていうのは、感じますね。やっぱり、ぶっ飛んだ世界観、生成AIならではのものの方に興味がありました。
>>実写は現在の生成AIにおいてまだまだ苦手分野で、感情を持たせることは非常にハードルが高い一方、実写では表現しづらい部分が割とAIが得意だったりしますが、どう感じますか?
田嶌さん :
それはそうだなと思います。だからこそ、私は今の自分の生成AIスキルでいかに実写に近いものができるかを知りたかったです。そして、どこまで感情移入できるものが作れるかっていうのに興味がありましたね。
>>フルAICM制作カレッジに参加しようと思ったキッカケは?
田嶌さん :
私が参加しようと思ったのは二つ理由があって、一つ目は単純にMidjourneyとかRunwayを使うにあたり、わからないことがたくさんあったので、講師に相談したり、参加している皆さんと話し合ったりする場が欲しかったということと、二つ目はAI動画で感情移入できるものに出会えていないため、実際に自分が作り手となってやってみてどう感じるかを知りたかったからです。例えばCGで言うと映画の「アバター」などには感情移入してきましたが、AI動画で感情移入できるものに出会ってないので、自分で実際にやってみてどう感じるかを確かめたかったです。
>> ありがとうございます。実際その感情移入する映像が、現状では難しい領域だと思いますが、実際受講し制作してみて現状と今後の未来も含め、今はどのように感じられてますか?
田嶌さん :
今は難しいと思いました、それはハリウッドが作っているものを見ててもAI感満載っていうか. . . 生成AIでつくりだされた女性像で例えると、普遍的な美女が生成されて、どこかでみたことある映像になってしまう。不完全の中にある美しさみたいなところの表現の難しさがあると思うので、今は難しいけれども、去年のMidjourneyのレベルと今年のを比較するとだいぶ性能もアップしていますし、今後は作り手によっては感情移入できる映像がどんどんできるんじゃないかと信じています。ただ生成AIというよりもディレクションや、編集、音楽などをどう掛け合わせていくかなので、
実写だろうが生成AIだろうが結局はトータルクリエイティブディレクション次第だと思っています。
フルAICM制作カレッジの印象
>>5日間のカリキュラム*を通して、最も印象に残っている内容は何ですか?
*5日間のカリキュラム
1日目 : イントロダクション・工程の確認・静止画生成〈基本篇〉
2日目 : 静止画生成〈応用篇〉と静止画加工
3日目 : 動画生成
4日目 : 音楽生成
5日目 : 総評 / 実践アドバイス
田嶌さん :
私は最後の日の5日目でしたね。
>>5日目だったんですね!
田嶌さん :
総評がすごく良くて、Midjourney、Runwayとかそういうのはある程度はいじっていたので、一つ一つの講義ももちろん役に立ったんですけど、最後に参加者の幅広いクリエイティビティを見ることができたことが面白かったし、とても勉強になりました。一つの課題に対して、こうも幅広く出てきたか!みたいな。
今後のAI動画生成において、みんなが何を期待しているかっていうのは人それぞれだと思うんですね。例えば、私の場合、如何にリアリティと同じようなことができるのだろうか?っていうとこに興味がある。一方で、非現実的世界を思い切り遊びたいという方々もいる。みなさんが生成した動画を見ながら、どんなプロンプトを打ったんだろうと想像するのも面白かったですし、改めてAIならではの映像ってどんなものがいいんだろう、と考えさせられるいい機会だったという意味で、最終日の総評が一番印象的でした。
>>課題提出と作品の総評がある、参加クリエイターがどのように作ったのかを発表し合うイベントがあったら参加してみたいと思いますか?
田嶌さん :
はい。最後の日は対面でやりたかったなと思いました。みんなで一緒にパソコンを持ち寄り、経過やプロンプトについても共有できたら面白いなと思い出したね。
>>それは面白そうですね、ありがとうございます。
Midjourney、Runway Gen-3、SunoAI などのツールを実際に使った講義でしたが、どのような感想を持ちましたか?
田嶌さん :
まだまだ生成されるものがゲッティーやグーグルで集めた映像の集大成な気がしてて、先ほど申し上げたんですけど、今後どうなっていくかが楽しみです。思い描いている映像が瞬時にできてしまうところはすごいし、逆に想像を遥かに超えた映像ができてしまうところも面白い。出来上がったものからインスピレーションをもらえたりして、さらにアイデアを膨らませることができるのは、いいなと思いました。
具体的にMidjourneyに関して言うと、同一人物で、同じ服装とか、同じ髪型で数カットを生成するのは本当に難しくて、少しでも変えると指の本数が変わっちゃったり。
人物を回転させたら、回転途中でいきなり顔が変化したり、どうしてわざわざこんなに面白いことやってくれるんだろう?と、AIそのもののマインドがすごく面白かったです。
Runway Gen-3に関しては、カメラワークには本当に苦戦しました。例えばバーズアイビューとか打ち込んでもなかなか上手くいかなく、そこらへんはまだまだ限界がある印象を受けました。
今回一番感動したのはSunoAIでした。音楽の方向性を明示するためのサンプルが簡単にできでしまう。クライアントさんへの音楽の方向性のプレゼンをするのにもってこいのツールで、とても便利だと思います。本番用に使えるかというところがまだまだ疑問ですけど...
習得したスキルと成果
>>フルAICM制作カレッジで学んだことで、どのようなスキルが身についたと感じていますか?
田嶌さん :
2つあります。
1つ目は、想像力を言葉として整理をするスキル。これまではビジュアルが頭の中にあって、それを自分で絵コンテにする、というビジュアルベースの考えだったのですが、改めて言葉として整理するスキルって面白いなと思い、今後は必要なスキルだと思ってます。
2つ目は、創造の無限性。
創造の無限性の中で、アイデアを膨らませるスキルが身についたかなと。プロンプトを打って、面白いものが出てきた。その面白いものに、またインスピレーションをもらって、プロンプトを打ち直して、もっと面白いものが出来上がっていく...といったように、アイデアがどんどん膨らんでいく感じがすごく面白いなと思いました。
>>ありがとうございます。
印象的だったのでお聞きしますが、今までのクリエイティブの制作では言葉を整理して. . . という工程はしてこなかったと思います。
実際にやってみていかがでしたでしょうか?違う脳を使った様な感覚でしたでしょうか?
田嶌さん :
そうですね。なんかコンテのト書きを整理する様な感じ。
本当に映画の脚本と小説の違いなんですけど、映画の脚本って視聴者が見るものだけを描くわけじゃないですか。太郎は何々を感じたって書かないわけですよね。感じている時の表情を書くわけで。生成AIのプロンプトもそうで、言葉で考え、整理して、コマンドしてあげるというのはまさにそういうことかなと。いかに眼に見えるものを言葉として上手くパソコンに伝えられるか。このスキルは本当に面白いと思いました。
>>特に、静止画 / 動画 / 音楽 生成の技術を学んだことで、クリエイティブの幅が広がったと感じましたか?
田嶌さん :
三つの中で言うと、Midjourneyは自分のクリエイティブの幅を広げてくれるなと思いました。頭の中のイメージを絵に描き起こすのに時間がかかっていたものを、Midjourneyなら簡単にビジュアル化できるし、インスピレーションをもらって、当初の予定よりももっとすごいものができてしまったりするというポイントにおいては、すごく感動しました。
Runwayは、イメージをどう動かすかなので、クリエイティブの幅が広がることには直結しない気がしました。
SunoAIは、すごいんですけど、クリエイティビティの幅が広がるかと言ったら、自分がMidjourneyに感じたものに比べたら薄いかなと思いました。
>>音楽(Suno AI) に関しては、クオリティ面ではまだ厳しいと感じる点がありましたでしょうか?
田嶌さん :
自分が想像してる以上の、すごいものができるかって言ったら、まだまだだなと感じました。例えば音楽プロダクションに「ジャズで、歌詞はこういう方向で作ってください。」と言ったら驚くものができあがってきたりしますよね。それに比べて、SunoAIですごいものが上がってくるかと言ったら意外とそうでもないように感じました。まだまだどこかの誰かの真似のような. . . 例えばジャズ。ヒートテックの作品を作った時に、「ジャズ、THE MANHATTAN TRANSFER、4人ボーカル」と入れて生成させたら、まさにTHE MANHATTAN TRANSFER)のあの曲だよね?って彷彿させるようなものが出来上がってきた。
ただ瞬時に音楽が出来上がる、というのはすごいですね。サンプル曲を膨大な量の音楽から探すよりSunoAIで1回作ってしまった方が効率よく仕事ができる、という意味ではいいと思います。Vコンやプレゼンにはもってこいのツールですね。
今後の展望
>>フルAICM制作カレッジで学んだスキルを、今後どのように活用していきたいと考えていますか?
田嶌さん :
1個目はCMとか、映画制作をする上でのビジュアルリファレンスを作るという意味で役立てたいなと思っています。
2つ目は、アイデアを膨らませるためのインスピレーションとして活用したいです。
3つ目は、時間に余裕があるときに、面白いものを作り上げてクリエイティビティを伸ばしていくということに活用していきたいなと思ってます。
>>やはり実際の現場で活用していくには、まだまだ乗り越えないといけない壁があるとお感じになられたのではと思うのですが、いかがでしょうか?
田嶌さん :
背景作りには活用できると思います。例えば、サイエンスラボを舞台にしたCMがあるとします。グリーンバックで研究員を撮り、その後ろのラボはAI生成動画にするなど、背景だったらあると個人的には思いました。
>>生成AIを活用した広告制作が、業界にどのような影響を与えると思いますか?
田嶌さん :
AIならではの、非現実世界のクリエイティビティだったり、ぶっ飛んだクリエイティビティが増えると思います。
>>映像 / 音楽業界など危惧している部分というと、具体的にはどの辺りになると考えていますか?
田嶌さん :
全ジャンルですね。
「Kポップの何々風」ってプロンプトを入れたらすぐにそれらしきものが出来てしまう。先ほども申し上げたように、代理店やプロダクションや監督がSunoAIを使って簡単にサンプル曲を作れてしまうようになると、音楽プロダクションや作曲家さんの仕事がどんどんなくなっていってしまいますよね。そして、CGの分野においても今後どうなっていくんだろうと正直、心配です。
>>なるほど. . .ありがとうございます。CG関連の繋がりの方々とその辺りのお話しなどはされていますでしょうか?
田嶌さん :
そうですね、今のところ皆さんあまり心配されていないようですが、時間の問題だと思います。ハリウッドでも、映像だけでなく、音声、音楽なども生成AIで制作されたものが増えていますね。スマホ対応のCM制作などは、クライアントによっては生成AIでいいと言い出すところも出てくると思います。そして今の時代、視聴者自身が自分のセルフィーを肌修正したりするので、見慣れているものがそもそも生成AIっぽいものなので、そこも気になります。解像度の云々とか、人間の細かい手話なんて別にもういい. . .って、思っている人が多いのではないでしょうか?そういったことも踏まえて、プロとして波に乗っていかなければならないと思います。AIの波に乗りつつ、じゃあ自分のプロフェッショナリズムをどう構築していくかが大事だと思います。
フルAICM制作カレッジはどんな方にオススメ?
>>フルAICM制作カレッジの魅力を一言で表すとしたら、何だと思いますか?
田嶌さん :
ヒューマンファクターだと思います。
一人で考え込むよりも、生成AIで作ったものをみんなでああだこうだ言い合ったりして議論すること自体にクリエイティビティの本質があると思います。
>>講師の橋本伸吾氏から直接受けられる講義の魅力とは?
田嶌さん :
私の場合、最初に勤めた会社での先輩が橋本さんだったんです。同じ企画演出部で、10年在籍していた間に大変お世話になりました。広告業界に入って、右も左もわからない中、指導していただきました。橋本さんはストレートですし、何でも相談に乗ってくださいますし、ご自身で培った知見を包み隠さず皆に教えようという姿勢がおありなので、橋本さんが講師をやってくださるなら、絶対に受けたいと思いました。(講師が) 他の方だったら、今まで通り自分一人で研究してればいい、となっていたかもしれません。
>>以前ご一緒に働かれていた時の橋本さんらしさ、のような何かはフルAICM制作カレッジの中にありましたでしょうか?
田嶌さん :
そうですね、橋本さんって、ビシっと、バシッと、きちんとされてる方なので、資料から何もかもが完璧でした!また、飽きない工夫などもされていて、プレゼンテーション資料の作り方も勉強になりました。
そして、英語が不自由な方にとっては、今回橋本さんが作ってくださったテキストがあることで、とても助かったと思います。Youtubeなどでセグメントごとに解説は出ていても、MidjourneyからSunoAIまでのトータルフローでの教材はなかなかないので、橋本さんが作られた教材は大変貴重なものだと思います。頭が上がりません。
>>どのような人にこのフルAICM制作カレッジをおすすめしたいですか?
田嶌さん :
AI動画の初心者、もしくは中級者にとって最適だと思います。ある一定のレベルを超えてしまうと、あとは自分でどんどん作って経験を積んでいくしかないと思うんですよね。 逆に橋本さんに経験者向けのもっと上位クラスの何か講義やってもらえると、さらに参加したくなりますね。私はまだ上位クラスではありませんが、次の段階のものがどんなものかが楽しみです。
< プロフィール >
田嶌 直子 (たじま・なおこ)
脚本・演出・監督
2003年~2012年まで博報堂プロダクツの企画演出部に属し、ディレクターとして活動。2012年より独立、東京をベースに国内外で活躍中。2020年より、株式会社WONDERWORLDを設立、活動の幅を広げている。

本講義の動画を1年間見放題のオンライン講座として販売します。
2025年1月24日まで先行予約受付中、お見逃しなく!
※クリショアでは随時生成AIの最新情報やクリエイターの活動のサポートを行っていますので公式Facebookやインスタ、Xもチェックしてみてください
〈取材・文=ノースショア株式会社 / 大河原 喜行