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「7日間映画チャレンジ」六日目 『スターシップ・トゥルーパーズ』

冒頭のニュース映像に度肝を抜かれます。未来の惑星間戦争の地獄の肉弾戦に、誰もが言葉を失うでしょう。第二次大戦時の米国の国策ニュースフィルムを、好戦的かつ残虐に拡大したコピー。監督ポール・バーホーベンのタフで底意地の悪い批評精神があふれかえってます。

まず、恒星間宇宙航行が可能な遠未来での戦争の主力が歩兵ですからね。しかも彼らはマシンガンと手榴弾しか持たされていないっていう……。そんな確信犯的なアナクロニズムに、監督の黒い哄笑が響き渡ります。どんな時代にも、使い捨ての人間は掃いて捨てるほどいるってわけです。

ところで、マシンガンと手榴弾で思い出すのは、ジェームズ・キャメロン監督の『エイリアン2』ですね。これも遠未来のエイリアンとの戦いに臨む兵士たちに、ベトナム戦争当時と同じ武器を持たせている。しかも、ヒロインのリプリーの武器はどんどん原始的なものになっていって、最後にボスキャラエイリアンと戦う場面では、彼女はほとんど徒手空拳です。武器の放棄の過程は、この監督の終生のモティーフと言えるでしょう。『ターミネーター』や『アバター』でも、それは貫かれているわけですからね。

でも、ポール・バーホーベンって人はそうじゃない。彼には人間の弱さが強さになる、などという弁証法には一瞥もくれないほどの絶望があります。それが、『スターシップ・トゥルーパーズ』を煮ても焼いても食えない映画にしています。主人公の青年兵士たちのテレビドラマ並みに薄っぺらいキャラや、ご都合主義だらけのプロット……、辟易する要素が充満してるのに、なぜか目を逸らせない。これでもかと繰り出してくる戦闘場面が生半可じゃないからです。アンチヒューマニズムのど真ん中に立つ監督の鋼鉄の意志が、これをよく見とくんだ、と叫んでいるからです。

昨今の戦争映画が見て見ないふりをしている部分を、バーホーベンは描いています。いいか、戦争を描いてる限り、それは好戦映画なんだ。反戦映画なんて生っちょろいもんに興味はない。人間ってのはたちの悪い種族なんだ、それをよく覚えとけ。『ロボコップ』や『トータル・リコール』の時代から最新作の『エル ELLE』に至るまで、この監督の立ち位置は一歩も動いてないんです。

この映画の5年後、ベトナム戦争の痛みや傷を未だ抱えたままのアメリカ合衆国は、イラク戦争に突っ込んでいきます。

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