「図解でわかる!人事制度の作り方」を読んで
津留慶幸さんの『図解でわかる!人事制度の作り方』を拝読しました。私自身ちょうどいま初任給や昇格基準の見直しを手掛けているということもあり書店で手にしました。
著者の津留さんは賃金・人事コンサルタントとしての実績を持ち、特定社労士でもある方のようです。
本書は2024年7月に出版された比較的新しい書籍ですが、基本に忠実な内容で、人事制度設計の要点を整理された形で提供しています。
人事制度とは、①等級制度、②評価制度、③報酬制度の3つを指します。本書はこの3つを軸に、それぞれの制度の作り方をわかりやすく解説しています。例えば、等級制度については「能力等級」「職務等級」「役割等級」の違いを丁寧に説明し、企業ごとに異なるニーズに応じた選択肢を提示している点が印象的です。
全体的に実務的かつ合理的な内容で、著者の豊富な経験が随所に感じられる一冊でした。
ただし、本書の内容が平易である一方で、人事制度設計そのものは簡単に実現できるものではありません。
以下のような理由から、実際に制度を構築するには相応の準備と専門知識が必要です。
人事制度設計が難しい理由
膨大な工数
等級制度、評価制度、報酬制度の3つを整合性のある形で構築するには、多大な時間と労力が必要です。企業ごとの現状分析や課題抽出を丁寧に行わなければ、形骸化した制度になりかねません。多岐にわたる知識の要求
モチベーション理論やリーダーシップ理論といった経営学の知識に加え、賃金計算や昇給昇格のルール設計、時には社会保険や労働法に関する知識も求められます。評価制度は社員へ落とし込むための研修設計、実行も欠かせません。これらを網羅的に理解していなければ、制度運用における実務上のトラブルが発生するリスクがあります。失敗が許されない
人事制度は給与やキャリアに直結するため、社員の信頼に大きな影響を与えます。不備があれば、社員のモチベーション低下や離職といった深刻な結果を招く可能性があります。
自社設計か、外部の専門家活用か
こうした課題を考えると、自社で人事を広く理解した人事制度を構築できる人材がいる場合は理想的ですが、そうでない場合は外部の専門家を活用することも多いと思われます。
腕の良いコンサルタントを活用することで、制度設計のスピードアップやリスクの回避が図れるだけでなく、より客観的な視点から企業の課題を見つめ直すことで実効性の高い制度設計ができると考えます。
本書を読み、改めて人事制度設計の重要性を感じました。今後、私自身もこれまでの幅広い人事経験を活かし中小企業診断士・社会保険労務士として、知識をさらに深め、人事制度の設計や改善に取り組んでいきたいと考えています。社員のモチベーションを高め、組織の生産性を高める制度を実現するために、経験と知識を積み重ねていきたいです!!
人事制度に興味のある方は一読して損はない一冊です。最後までお読みいただきありがとうございました。