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土佐日記はじめました#3 船の上で正月を迎える③

お正月のお酒にいれる薬を海に落としたり、色々ないからしょうがなく鮎に吸い付いたりしていたことを前回お伝えしました。
今回は、高知沖をゆく船の上で迎えたお正月のまとめです。

やっぱり思い出すのはふるさとのこと

わざわざ持ってきてもらったありがたい薬も海に落とし、期待もしてなかったとあまのじゃくになりつつもやっぱり欲しかった正月の食べ物も無い。

あーあ、さびしい正月だなあ、しょうがないんだけどさ...

そう言って嘆く船の上のみなみなさまの顔がなんとな〜く浮かびます。そして言うのです。
「今日は京の都のことばっかり思い出しちゃう。町家のしめ縄に飾ったなよしとか、ひいらぎってどんな感じだったっけ...」

なよしとは、今でいうボラのことです。各地方で呼び名がさまざまにあるそうですが『要説 土佐日記』では「いな」と紹介されています。「なよし」は漢字で書くと「名吉」。成長するにつれて名前が変わるため出世魚といわれています。
船の上のみなさんが思い出した京都の町家のしめ縄に飾ったなよし...え、魚をしめ縄に飾ったの?ぜひその本物をみてみたい!みてみたいもの・さらに調べたいものリストに追加です。

ひいらぎは、幼年期を欧米で過ごした私には完全にクリスマス飾りのイメージですが、土佐日記に出てきたので衝撃を受けました。
節分の夜に鰯の頭を柊の小枝にさして軒下に吊るすことで、鬼が柊の棘で目を指し、鰯の匂いで逃げる、という風習があるそうです。正月だと節分の夜は大晦日の夜ということで間違いないでしょうか。
これも地域差があるそうですが、もちろん私の家にはこのような風習は伝わってないし聞いたこともありません。

ここまで調べると、紀貫之たちが思い浮かべている京都のしめ縄飾りには魚とひいらぎがささっていて、この魚はボラだった、ということで合ってるのでしょうか。
ああ、当時の京都のしめ縄飾りをこの目でみてみたい。

以上が、土佐日記で出発してすぐ紀貫之が迎えた正月の様子です。こう調べてみると今でも伝わってる風習しかありません。薬を船の小屋のどっかにはさむバカは現代でもいるのでしょうか。

「あーあ、なんだかなあ」っていう日には、過ぎ去りし古き良き日のことを思い出す気持ちはわかります。あのころはよかったなあ、あの場所はよかったなあ。やっぱり遠い地でそんな気持ちになると、思い出すのはふるさとなんですね。思い出せるふるさとがあるのって幸せなことなんじゃないでしょうか。

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