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【世紀の対決?】蒸気機関車(SL)を車で追いかける!!

こんばんは、おはようございます。

トップギアという番組をご存知だろうか。
車・飛行機・列車・時々船を使い、皮肉の効いたブリティッシュジョークを織り交ぜながら色々なことに挑戦するイギリスのバラエティ番組である。
ある時は攻撃ヘリコプターとスポーツカーでカーチェイスを繰り広げ、ある時は車を線路で走らせ、ある時は戦闘機とスポーツカーでスピード対決したりと、奇想天外でド派手な企画を絶妙なジョークを交えて行っている。

ある日、そんなトップギアを見ていた私は、たまたまとある企画を視聴した。
「トップギアが1949年に放送されていたら?という前提のもと、当時使われていた蒸気機関車(SL)とクラシックカー、バイクでロンドン〜エディンバラを競走する」という企画である。
なかなかに手に汗握る展開で面白かったのだが、見終わってふと思った。

これ自分でもできるんじゃないか?

9月に移り住んでいるここ九州では、幸い蒸気機関車、俗に言うSLが走っており、車かバイクが用意できればこの企画と同じことができる。ならば、同じように競争できるんじゃないか?どっちが速いのか?やってみよう!と言うことで早速チャレンジしてみることにした。

SLはどこを走っているのか?

現在、九州では「SL人吉号」という列車が熊本と鳥栖の間を走っている。
区間としては以下の通り。

熊本県ー福岡県ー佐賀県を走る

車両は「8620形」という、大正時代に製造された機関車だ。

2020年筆者撮影

鉄道に興味がない人に分かりやすく説明すると、鬼滅の刃「無限列車編」のモデルになった車両である。
このSLが熊本ー鳥栖間約90kmを2時間半ほどかけて走っているのだが、2024年3月をもって運転が終了するそうなので、やるなら今しかねーZURAというわけだ。
このSL人吉は、次のような時刻で終点鳥栖まで運転される。

着時間は筆者の注釈

途中、玉名、大牟田、久留米に止まって終点の鳥栖に到着するという感じだ。途中何分か停車する駅もあるので、そこで巻き返せる可能性もある。下道で追いかけるにはちょうど良いぐらいの速度だ。

車か、バイクか

さて、トップギア本編ではSLと車とバイクで競争していたわけだが、私の身は1つしかないので、自然車かバイクかのどちらか選ぶことになる。
しかも、私は普通免許しか持っていないので、車に乗るか原付に乗るかということになるのだが、原付は最高速度が30km/hであるため、90kmを走るのには単純に計算して3時間かかることになるし、信号待ちや渋滞も考えるともっとかかる。
さすがに原付では勝ち目が無さすぎる・・・
ということで、車で線路沿いの下道に沿って走っていくことにした。
今回乗るのは三菱の軽自動車 ekクロスだ。

もう何度も乗っているが、小回りが利き変な道に案内されても問題なく走れそうなので、期待は持てる。
令和製の車と大正製のSL。どちらが勝てるのか。ほぼ100歳差のバトルがいよいよ始まるーーーー

いざ熊本へ

10月某日 午前10時半。
我々は車で熊本に降り立った。天気も良く、絶好のバトル日和である。
とりあえず、熊本でSLの発車を見てから出発することにした。
天気の良い日曜日ということもあってか、多くの家族連れがSLの姿を一目見ようと集まってきている。
10:50、熊本駅に車庫からやってきたSLが到着した。

客車3両、補助機関車1両を率いてやってきた8620形は大きく煙を吐き、今日は絶好調じゃと言わんばかりの様子だ。
数枚写真を撮ってから、59分の発車に備えて急いで駐車場に戻る。
我々は、熊本駅のすぐ近くにある線路脇の立体駐車場に止めていたので、そこから発車を見てから出発することにした。
車に戻ってしばらくすると、甲高い汽笛が聞こえ始める。

SL人吉号は、非常にゆっくりとした速度で熊本駅を発車していった。
さて、ここからはSL人吉号の時刻表と、列車走行位置がわかる「どれどれ」というサービスを見てのチェイスが始まる。
いざ、出発!

玉名へ

上記の時刻表を見て分かる通り、SL人吉は熊本駅を10:58に出発し、玉名に11:39に到着して10分後の11:49に発つ。つまりは、11:49までに玉名を通過すれば追いつけるわけだ。
熊本駅で出発を見送ったため少し遅れを取っている状況なので、急いで車で追いかける。
ここから玉名までは、通常ならば車で40分ぐらいなので、ちょうど追いつくかどうかギリギリのところだ。
だが、熊本駅からしばらくは市街地になっており、交通量の多さに苦戦を強いられる。

熊本市は人口70万人以上を誇る一応の政令指定都市なのだが、圧倒的車社会故、日曜の昼でもそこそこ混んでいる。なので、上熊本駅付近までは市電の線路沿いをゆっくりゆっくり走っており、その間にもどんどん距離は開いていた。

SLは決して速いわけではないのだが、混雑でもたもたしている間に開いてしまっているという状況だ。
しかし、混んでいるのも上熊本駅付近までで、崇城大学前駅付近になるとだいぶ交通量も少なくなってくる。「どれどれ」でSLの走行位置を確認してみると、崇城大学前の次々駅である植木駅に達していないぐらいの位置だった。
交通量減に、思ったより遅いSLの速度。これは巻き返しのチャンスだ!私はアクセルを踏む力も自然強くなっていた(安全運転で運転しています)。

が、それもぬか喜びだった。
交通量が少なくなり、あたりに田んぼが目立つようになると、農業用の車が増えて来る。
すると...

そう、必殺激遅軽トラックの参戦である。

時速30kmぐらいでちんたらと走る軽トラが2台続くという絶望的状態である。

前を走る軽トラの荷台を見ながら頭を抱える私(どんな状態?)。
バックミラーを見ると、後ろに7~8台の行列ができており、軽い渋滞が発生していた。あおり運転をしたくなるのを必死に抑えながらノロノロと走ること数キロ、ようやく2台とも側道へ捌けてくれた。
こっから巻き返しチャンス!と思いきや、SLとの距離はかなり開いてしまっていた。

植木をやっと通り過ぎた!と思っていると、SLは西南戦争の舞台田原坂を抜け、もう玉名市に入ろうとしている。距離にして5キロぐらいも差が開いてしまった。
文字通り軽トラに必殺されてしまった我々車チーム。とりあえずは玉名発車の49分までには玉名駅に着くことを目標に車を走らせる。
そうして、線路沿いの道を走るうち、あることに気づいた。
線路沿いの道、交通量が多くて全然巻き返せねぇ・・・
駅に近いからなのかはわからないが、線路沿いに伸びている県道はなかなかに店や住宅が多く、車も多い。頑張って追いつこうにも、SLにではなく前の車に追いついてしまい、なかなか距離が縮められない。
そんなノロノロの運転で、この先長洲、荒尾、大牟田、久留米と、そこそこ人口の多い街を抜けなければならず、距離が開く一方なのは目に見えてきた。
もしかして、このまま線路沿いに行ったら完敗なのでは・・・・?
50分も過ぎたころになってようやく新玉名駅周辺に差し掛かった我々は、やむなくGoogleMapさんにルートの変更を申請した。

経路変更

経路変更を入力すると、まもなくGoogleMapが新たな道の案内を開始する。
「およそ400m先右方向です。」
直線道路でそう案内された私は400m先を見やる。が、信号どころか曲がれそうな道すら見当たらない。
少し速度を落としつつ進んでいると、スマホから「右方向です」との案内が。そこにあったのは・・・

曲がった場所

???

曲がった先にあった道

??????

案内の喋るままハンドルを切ると、謎の場所を曲がらされ、謎の道に入った。
謎道を案内してくるGoogleMap。安定のクオリティーである。
が、さすがは世界的企業といったところか。案内された道は線路からは離れるものの、笑いが出るほど空いている田舎道だった。

ここで一気に巻き返しを図るべく、安全運転で走り抜ける。
とりあえずの目標は、SLが大牟田駅に到着する12:22までに大牟田の近くに到達することだ。ナビの案内に従ってしばらく快調に進んでいると、南関という場所に到達した。福岡県まで目と鼻の先と言った場所である。

地図を見ればわかる通り、南関を西にほぼ直線に行くと大牟田である。
時刻は12:13。到着まで10分弱もある。
おや?これは巻き返せたか・・・?
その後、目立った渋滞や激遅車に遭遇することもなく福岡県に入り、ひたすら北上を続けていった。

接戦

南関から車を走らせることおよそ40分。
我々は、福岡県の荒木という場所に来ていた。
久留米まで目と鼻の先という場所までひたすら車を走らせていたのだが、SLとの距離はどんどん開いていき、SLは私達の20分近く後ろを走っていた。
玉名近辺での劣勢はどこへやら、一転して大優勢に変わっていた。
ここまで来ると、自然我々も弛緩した空気になってくる。そういえば、SLが玉名駅や大牟田駅で5分も10分も止まって休んでいた一方、我々車チームは熊本を出てから一度も休憩らしい休憩をしていない。
ここまで差が開いているのだから、少しぐらい休憩しても追いつかれないんじゃないか。ちょうどトイレも行きたいし飲み物も空になったので、荒木駅で休憩することにした。

駅のトイレでのんびりと用を足し、自販機で飲み物を買う。
久々に飲むスコールの味に、緊張が解けたこともあり思わず頬も緩む。秋晴れの空が広がる日曜昼下がりの荒木駅は、のんびりとした時間が流れていた。
やがて、無料で駐車できる時間が迫っていたので10分ほどで荒木駅を後にした。
荒木駅からナビに従い車を走らせていると、やがて久留米市内に入った。
久留米市は福岡県の中でも比較的大きく、福岡市、北九州市に次いでデカい(多分)。そんな街だから、自然車の量も増えてきた。

SLとの差は10分は開いているし大丈夫だろうとタカをくくっていたが、意外にも車の進みは遅い。気づけば、SLが久留米駅に到着する13:16が目前に迫ってきていた。
さすがの我々も、少し焦りの色が見え始める。だが、SLの方は久留米で10分位止まるため、まだ優位であるはずだ。
車は久留米市役所の横を抜け、少しずつ市街地を抜けようとしていたが、思ったほどスムーズにはいかない。その間にもどんどん追い上げてくるSL。
図らずも、久留米周辺で再度巻き返されようとしていた。
焦る気持ちをなんとか抑え、鳥栖駅を目指す。が、漠然と鳥栖駅を目指していた我々は、具体的にどこに車を止めるのか、何も考えていなかった。
そこでまた、改札側に止めるのか、駅の裏に止めるのか決めるのでしばし道路脇に停車する。その間にもどんどん時間は過ぎていった。
果たして、SLには勝てるのか・・・?

終点到着へ

なんとか鳥栖駅近くの駐車場に止めた我々は、急いで鳥栖駅に架かるこ線橋を上る。すでに家族連れがSLの到着を待っていた。
数分後、大きな汽笛が聞こえたかと思うと、数時間前に見たあの姿が再び面前に姿を現した。

13:37、SL人吉号は定刻に鳥栖駅に到着した。
我々はその5分ほど前、割とギリギリのところで先に鳥栖駅に到着していたのだった。
100年近い時代の差を超えた戦い。勝ったのは令和代表 ekクロスと相成った。

レースを終えて

図らずも白熱した戦いとなった本レース。結局線路沿いに沿わずに行けば、下道でも余裕で車が勝てることはわかった。
だが、やるならもう少しギリギリを攻めたい。次回やるならば、発車なんて見送らず、発車時刻になったら熊本駅前を車で発進し、線路沿いの道で文字通り並走しながらのバトルもやってみたくなった。今回の反省を生かし、もし暇があれば再度挑戦してみたいと思う。
では、最後にレース終了後に食べた鳥栖のラーメンの写真で飯テロしてから終了したいと思う。

夢を語れ鳥栖本店 ラーメン大豚2枚(ヤサイニンニクマシ)

以上。
対戦ありがとうございました。

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