投資を始める前に読んでほしい金融の基礎知識
新NISA制度が始まり多くの日本人が投資と無縁ではいられなくなってきた。もはや普通に働いて暮らすだけでは老後を生きられない時代が来たらしい。
一昔前までは投資は怖いから勉強してから注意深く始めなければならないと言われてきた。
時代が変わったからと言ってその事実が変わるわけではない。
NISAの制度が整ったからと言って勉強せずに投資するというのはやはり危険であることに間違いはない。
投資を始めたい人がこれだけは知っておくべき、ということをまとめていきたい。
投資と聞くと株を思い浮かべる人が多いのではないかと思う。
昨今の投資ブームで各種メディアでも取り沙汰されているように、昔はデイトレードのような頻繁なトレードが投資と思われがちであったが、本来投資とはもっと長期的なものである。
著名化投資家であるウォーレン・バフェットも言っているように短期的に金持ちになるのは難しいが、長期的になら難しくはない。
バフェットといえば株式投資家として有名で、バリュー株投資の雄であるとされている。
バリュー株というのは激しく株価が上がる訳では無いが安定した配当を払い出しており、その割には株価が安くお得な株である。(どれくらいならお得なのかは投資家の哲学によるが。)
一方で激しく値上がりしてキャピタルゲイン(配当ではなく価格差による利益)を得られる株をグロース株と呼んでいる。
現在はバリュー株となったものもバフェットが若かった当時は新興企業であったわけで当時はグロース株と呼ばれていただろう。そういう意味ではバリュー株かグロース株かという分類にはあまり意味がないように思う。
バリューだ?グロースだ?そんなもんしらん!という方はコカコーラかディズニーでも買っておけ。(これは決して特定企業への投資を推奨したり勧誘するものではありません。投資は自己責任でお願いします。モーサテと同じです。)
その他に代表的な投資対象には債券というものもある。
満期まで利金が払われ続け最後に元本が返ってくるというものだ。
なにかに似ているだろう。
そう、借金だ。
債券とは国や企業に金を貸してその債権(音が同じでややこしいがこれは貸したものを返して貰う権利)を売買できるようにしたものと思っておけば良い。
そもそも金融商品というのは得てして何らかの権利を売買するものなのだ。株なら配当の支払いを、債券なら利金と元本を受け取る権利と言った具合だ。
とにかく債券というのは金を返してもらう権利を売買するものだ。当然国や企業が潰れなければ将来受け取れる金額は決まっている。当然誰もそれより高く買おうとはしないし安く売ろうともしない。
ではなぜ債券の価格が変動するのか。
その原因は大きく分けて2パターンある。
将来の金利や元本が受け取れなくなる可能性が出てきたときと、同じリスクでより良い条件の債券が現れたときである。
ここからは国の借金である国債について考えよう。
金利の問題を考えるときに国際は非常に良い。
なぜならばクレジットリスクがないからだ。
日本の円建て国債は通貨を発行すれば返せるので対外貨で下落のリスクはあれど貸し倒れのリスクはない。
国債で貸し倒れが発生するとすれば敢えて国家がそういった選択をした場合だ。
もちろん外貨建国債の場合この限りではない。
普通に破綻する。
最近はギリシャとアルゼンチンでデフォルト(債務不履行と和訳され踏み倒すイメージがあるが、厳密には利払いを実行はするが期日より遅れるというリストラクチャリングというのもデフォルト事由に該当することも多い)が発生したがどちらの国もデフォルト時はプライマリーバランスが黒字だったそうな。
日本も2025年を目処にプライマリーバランスが黒字化しそうとのことである。恐ろしや。
なぜこのような因果が成立するのかは(しれっと書いたが絶対的な因果がある)いつかマクロ経済の記事にでも書こうと思う。
閑話休題。
上記の通り基本的に国債には破綻のリスクがないので価格変動は2つ目の原因である、同じリスクで他の国債のほうが条件が良い場合ということになる。
どういうことか。
今市場では残存年限が10年で年率1%の利金が支払われる国債が額面(たいてい発行されたときの金額)と同じ100円で取引されているとする。
あとは一旦政策金利(日銀当座預金に付与される金融機関が日銀から受け取る利金)も1%としておこう。
こうしておけば国債市場は十分に平衡状態と言える。
ここに新しく2%の利金が支払われる国債が発行されたとする。
そしたらどうだろうか。
みんなこっちがほしいだろう。
何が起こるかというとみんなが今持っている国債を売って新しい国債を買いたがる。
結果的に古い国債は50円になるまで売られて新しい国債が100円で取引される。
結果的に古い国債は50円で買えて額面の100円に対して1%の利金が支払われる債券が出来上がる。なんと利回りは2%である。
こうして市場金利というものが形成される。
金利の議論で重要なのは厳密な言葉の理解だ。
利金、金利、クーポン、利回り等々似たような言葉が多いが大体、
利金=クーポン→額面に対するパーセント
(市場)金利=利回り→取引価格に対するパーセント
といった感じだ。
クーポンのことを金利という不届き者も多いので初心者は混乱しがちだ。
とりあえずニュースで金利が〜と言っていたら利回りのことであってクーポンのことではない。
日銀はこの市場価格の形成プロセスを用いて市場金利を操作するのである。
公開市場操作というカッコイイ名前のやつである。
例えば日銀が割高に国債を買ってくれるならみんな売ってしまうだろう。
結果、市場価格が高騰し金利が下がる。
この結果は銀行から民間への貸出金利にも影響を与える。
借り手は利息の安いところから借りようとする。
銀行はあまりに利子が安ければ国債で運用したほうが良いので貸出をしない。
こうして結果的に国際の市場金利プラスαくらいに落ち着くのである。
その昔は公開市場操作ではなく公定歩合(日銀から金融機関に対して支払われる日銀当座預金に対する利息)を操作して銀行の貸出金利や国債利回りをコントロールしていたが、マイナス金利の導入によりなくなってしまった。
他には準備預金のコントロールによる金利操作もあったが国債市場や短期金融市場の発達とともになくなってしまった。
現在日銀当座預金はプラスの金利がつく基礎残高、金利がつかないマクロ加算残高、マイナス金利が課される政策金利残高の三層モデルで認識されておりこれによっては特に金利のコントロールは行われていない。
アメリカでは準備預金(銀行が最低限FRB(中央銀行)に預けておかなくてはいけない無利息預金)の最低額が設定されており準備預金がこれに満たない銀行は他行から借りてくる。このときの金利をFFレートといい、準備預金をコントロールすることでFFレートを誘導する。これがアメリカの政策金利である。
ちなみに日本はアメリカと異なり銀行が預金を運用する間接金融が中心となっているため、銀行の動向に市場が左右される。
銀行は貸出金利や国際などの運用利回りと資金調達コストとの差を利益としている。
結果的に日本の市場というのは金利市場が中心となっている。
実際の取引額も株と国債では圧倒的に国債が多い。
株だと東証プライム市場で一日に2−4兆円ぐらいだが国債となると数十兆円にものぼる。
実際に株式市場も金利の影響を大きく受けることになる。
景気の良し悪しや企業の業績で株式が上下すると思っている人も多いが、残念ながらというべきか、金利のようなマクロ指標の影響のほうが大きい。
株式市場なんかは金持ちが回しているので貧乏人の景気が良かろうが悪かろうが知ったこっちゃない。
これが資本主義だ。
とりあえず今の状況は金利が上がれば株が下がり金利が下がれば株が上がるお思っておけば良い。
政府のバランスシートや、中央銀行の金融政策によって変わってくるので将来的には金利と株の関係は変わるかもしれないが。
そのあたりはマクロ経済の知識がないと理解できないので今後やっていこう。
代表的なアセットクラスである株と債券について書いてきたが金融市場には投資信託やETF, ETN、デリバティブなどが存在する。
個人がデリバティブ取引に参加できるのは上場ものの日経先物、TOPIX先物くらいなだ。
一方で投資信託なんかはiDecoなんかでお世話になる人が多いので個人投資家にとって大変重要になってくる。
次回は投信にしよう!
長々とお疲れ様でした。
では、さよなら、さよなら、さよなら、
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