今が人生最悪であれ 第2話
¥130,000 送金ボタンを押した。
11月12日 11:48
昨日の午後に返金されるはずだったものは入金されなかった。
私は心が狭いだろうか。
待った。待った方だと思う。
ちなみに、この友人Aには、1ヶ月ほど前にも7万の貸しがある。この借金も、歌舞伎町での掛けによるもの。
頭を抱える。あらゆる思考が頭の中を駆け巡る。
急かすか、急かすまいか、今後の友情関係にも関わる重要なコンタクト。
〈金の切れ目が縁の切れ目〉
嫌な言葉が頭に浮かぶ。
しかし、友人Aは私に20万を借りている。
学生の20万はでかい。
さすがに、私にも生活がある。
できるだけ慎重に、急かしてる感を出さないように、信頼関係を崩さないように、あくまでも確認。安否確認。もしかして熱を出して寝込んでいるかも。もしかしたら、勉強か仕事か、忙しくしているのか、もしかしたら、もしかしたら、
祈るように自分に言い聞かせた。
焦る思いをグッと抑え、LINEのトーク画面を開く。
「」私
『』友人A
「もし入れ違いとかだったらごめんね」>
「急かしてるわけじゃないんだけど、入金できそう?」> 11:48 既読
<『ごめんいま仕事でまだ呑んでて潰れてるから』
<『正気に戻ってから返す!』
<『カードの番号とか振込の情報だけ送っておいて!』
昼の12時手前。
友人Aはよく20時間、30時間ぶっ通しでお酒を飲むことがる。
私はこれほどの時間飲みに付き合ったことは無いが、友人Aがこの時間に飲み歩いていることには違和感を抱かない。
ただ、しかし、仕事だとしても…。
ふつふつと湧き上がる重たい感情を自分の中で処理するのに時間がかかった。
「大丈夫、落ち着いてからでいいよ」>
「(口座番号)でお願いね!」> 12:03 既読
<『まーだ帰れないwwwww』 16:25
「え、まだ飲んでるの?」>
<『そーう、ほんとにカオスwww』
「そのお客さんもさすがにやばいよ」>
「今日と明日の予定は大丈夫なの?」>
16:40 既読
<『それは大丈夫、仕事に穴はあけない』
「仕事より先にあなたの胃に穴あくわw」>
16:50
このメッセージを最後に、彼女からの既読が着くことはなかった。