今が人生最悪であれ 第1話
11月11日
早朝5時、友人Aから突然の電話。
サシで飲みに行ったり、かなり込み入った話もしたりする、普通に仲のいい友人。
私の働く居酒屋に飲みに来てくれたり、友人Aが働くバイト先に遊びに行ったり、偶然に近かった互いの家に遊びに行ったり、かなり気の許せる友人。
のはずだった。
少なくとも私は、そのつもりだった。
友人A『』
私「」
『ごめんね、こんな時間に、起きてた?』
「うん、ちょうど今起きた。どうした?」
『掛け(※)を今日返さなきゃいけなくてさ、ちょっといま手持ちの現金が足りないから貸してほしいんだよね。』
※〈掛け〉歌舞伎町などのホストやバーで、高額会計になった時に当日会計ができず、後日支払いの約束をしたお金のこと。〈売掛金〉
ああ、この子ついに掛けをそんな高額に抱えたのか。
友人Aが歌舞伎町によく行っていることは知っていた。少額だが何度か掛けをつくっては後日支払いに行っていることも聞いていた。
お気に入りの店があるらしく、私もそこに同行したことがある。
今回の高額の掛けは、私も行ったことのある、その店らしい。
『お金を貸す』、、、。金の切れ目が縁の切れ目とはよく聞くものだ。
直感的に、悪い予感がしたのは、後の話である。
友人Aとは家も近いし、共通の友人(友人B)もいる。その店に同行した時に連絡先を交換したキャスト(店舗内幹部)も知っている。
疑っている訳では無い。疑いたくは無いが、最悪の場合、友人Bを通して実家を割り出すこともできる。
なにより、これまでに築いた信頼関係がある。
はず。
『5万か、できたら8万貸してほしい。』
「わかった。8万送金するけど、いつ返せる?」
『今日の午後に収入があるから、すぐに返せる!』
『…ごめん、もうちょっと借りてもいい?』
「今、いくら足りないの?」
『13。』
「わかったよ。13送るから、、、
今日に収入あるんだよね?」
『うん、15日には別のバイト代も入るから、その時には絶対に返す!』
¥130,000
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