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これからの部活動はどうなっていくんだろう?

前回から「〜の秋シリーズ」ということで、
食欲の秋に引き続き、今回は「スポーツの秋」を特集します。

来年東京オリンピックも開催されるということもあって注目も高まるスポーツ界隈。
子どもにとってのスポーツといえば、「部活動」が真っ先に思い浮かぶのではないでしょうか。


部活動に関する最近の主なニュースをいくつか取り上げてみると、例えば以下のようなものが見つかります。


■ 「ブラック部活」の解消を目指しH29年に新設された部活動指導員制度の進展を論じた記事

■ 教師の「働き方改革」をきっかけに、小学校の部活動が廃止される地域のあり様を描いた記事。

■ スポーツ庁が2018年に策定した運動部活動のガイドラインの効果が徐々に出てきたことをデータを基に紹介する記事。

■「勝利至上主義的」な運動部活動の問題点と改善案を提示した記事。


全体を概観すると、以下のような話題にまとめられると思います。

・教員の多忙化
・指導人材不足
・競争主義的、勝利至上主義的な雰囲気

他方、こういった問題があることを背景としつつも、新しい部活動の形に向かって模索していることにも気付きます

今回の『すたっふの、たぶんしゅーいち』では、このような運動部活動の背景やその今後について、ちょっとだけ深掘りしてみたいと思います!


部活動を俯瞰してみる


今でこそブラックだなんだ言われている日本のスポーツ系部活動ですが、いつから、なぜそういう風になってきたのでしょう?

そのことを探るために、2つ資料を用意してみました。


(1)河村明和(2017)『日本の学校教育の変遷から見た部活動の現状と今後のあり方についての検討』早稲田大学大学院教育学研究科紀要別冊24号-2.

(2)中澤篤史 部活の歴史研究 早稲田大准教授


これらを参考に運動部活動の変遷を箇条書きにすれば以下のようになります。

(明治期の東京大において、雇われ外国人がスポーツを教えるという形で部活動の前身が始まる。)
● 1947年 「児童が学年の区別を去って、同好のものが集まって、教師の指導とともに、上級生の指導もなされ、いっしょになって、その学習を進める組織」としてのクラブ活動のみがあった。
● 1951年 部活動が特別教育活動に位置付けられる。
● 1954年 東京オリンピック(1964)の影響を受けスポーツの競技性が重視されるようになる。
● 1969年 一部の生徒のみがスポーツを独占する動きを背景に、「必修クラブ活動」が設けられ、必修授業としてのクラブ活動と課外活動としての部活動とが並列して行われるようになる。
● 1979年 中学校は年1回の全国大会が、高校では年2回の全国大会が認められる。
● 1989年 部活動参加をもって必修クラブ活動の履修を認める「部活動代替措置」が設けられたことにより、部活動が全入となり、クラブ活動の時間を他教科の時間にあてる学校が増加し,教員は課外活動である部活動の指導を行う時間が増加した。
● 1996年 学校のスリム化の一環として、運動部活動を地域社会に移行させる方向性が提示される。
● 1998年 必修のクラブ活動が廃止される。
● 2001年 「学校が自らの判断で特色ある学校づくりに取り組む」ことが明記され、部活動も各学校の裁量で行えるようになる。
● 現在(2008〜) 「学校教育の一環として教育課程との関連が図られるよう留意する」という、あいまいな位置付け

このような経緯で、日本のスポーツ系部活動は、以下のようになっていきます。

・授業ではなく課外活動として放課後や休日に運動部活動が広く行われるようになる
・ほぼすべての学校が運動部活動を設置しており半分以上の教員が運動部活動の顧問に就いている


ちなみにこのような部活動の在り方は、他の国でも同じようなもの…というわけではないようです。

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これを見ると、日本では馴染み深い運動部活動が、国際的に見れば実は日本独特の文化であるということがわかります。

つまり「日本以外ではスポーツは学校教育と別に行われるのが一般的であるのに対して、日本ではスポーツ系部活動としてスポーツが学校教育に強く密接に結び付けられているということ」がよく分かるかと思います。

このような慣習によって成り立つ日本の運動部活動。その常識を崩すのは大変なことかもしれません。
しかしそれに果敢に向き合おうとしているのが今である、ということになりそうですね。


部活動のこれからを考える


少しずつ変わりゆく運動部活動。
せっかく変わるのであれば、より良い方向へと変わっていってほしいですよね。

そんなことを考える上で、一つ面白い資料を見つけました。

日本学術会議健康・生活科学委員会健康・スポーツ科学分科会(2017)「ユネスコ『体育・身体活動・スポーツに関する国際憲章』の監訳及びシンポジウムの開催」

ユネスコはこれまで、1978年に「体育とスポーツに関する国際憲章」を、また1991年にその改訂版を提示してきました。

その最新のものとして、近年の世界情勢に即したものとして新たに作り直されもの、それがこの「体育・身体活動・スポーツに関する国際憲章」になります。

本資料は、子どもの体力や運動能力、スポーツ等について様々な提言を行なっている日本学術会議(興味のある方は、「子どもを元気にする運動・スポーツの適正実施のための基本指針」や、「子どもの動きの健全な育成を目指して〜基本的動作が危ない〜」などをご覧ください!)が、憲章を監訳したものです。
また、その憲章について開催したシンポジウムの概要が掲載されたものとなっています。

憲章の全体はこちらから確認できます。
(原文はこちら

また憲章が以前のものからどのように変わったのかに興味がある方は、ぜひこちらもご覧ください。

条文一つ一つが内容の濃いものとなっているので、以下抜粋にはなりますが全条文をご紹介します。

「体育・身体活動・スポーツに関する国際憲章」より(条文のみ抜粋)

Article 1 – The practice of physical education, physical activity and sport is a fundamental right for all
第 1 条 - 体育・身体活動・スポーツの実践は、すべての人の基本的権利である

Article 2 – Physical education, physical activity and sport can yield a wide range of benefits to individuals, communities and society at large
第 2 条 - 体育・身体活動・スポーツは、個人、コミュニティ、社会全体に幅広い恩恵をもたらすことができる

Article 3 – All stakeholders must participate in creating a strategic vision, identifying policy options and priorities
第 3 条 - すべての関係者が戦略的ビジョンの創造、方針の選択肢や優先順位の策定に参画しなければならない

Article 4 – Physical education, physical activity and sport programmes must inspire lifelong participation
第 4 条 - 体育・身体活動・スポーツのプログラムは、生涯にわたる参加の動機づけとならなければならない

Article 5 – All stakeholders must ensure that their activities are economically, socially and environmentally sustainable
第 5 条 - すべての関係者は、その活動が経済的、社会的、環境的に持続可能であることを保証しなければならない

Article 6 – Research, evidence and evaluation are indispensable components for the development of physical education, physical activity and sport
第 6 条 - 研究・科学的根拠・評価は、体育・身体活動・スポーツの発展に不可欠な要素である

Article 7 – Teaching, coaching and administration of physical education, physical activity and sport must be performed by qualified personnel
第 7 条 - 体育・身体活動・スポーツの教育、コーチング、管理は有資格者が行わなければならない

Article 8 – Adequate and safe spaces, facilities and equipment are essential to quality physical education, physical activity and sport
第 8 条 - 質の高い体育・身体活動・スポーツには、適切で安全な場所、施設、器具が不可欠である

Article 9 – Safety and the management of risk are necessary conditions of quality provision
第 9 条 - 安全性及びリスク管理は質保証の必須の条件である

Article 10 – Protection and promotion of the integrity and ethical values of physical education, physical activity and sport must be a constant concern for all
第 10 条 - 体育・身体活動・スポーツの高潔性と倫理的価値の保護及び促進は、すべての人にとって普遍的な関心事でなければならない

Article 11 – Physical education, physical activity and sport can play an important role in the realization of development, peace and post-conflict and post-disaster objectives
第 11 条 - 体育・身体活動・スポーツは、開発、平和、紛争後及び災害後の目標の実現において重要な役割を果たすことができる

Article 12 – International co-operation is a prerequisite for enhancing the scope and impact of physical education, physical activity and sport
第 12 条 - 国際協力は、体育・身体活動・スポーツの範囲と影響を拡大するための必須の条件である

どの条文を見ても、今の日本の運動部活動の状況と照らし合わせると何かしら思い当たる節があるかと思います。



決して大会のためだけにだけあるのではないスポーツ系部活動。

子どもの今や将来のことを考えたときに、どのようなものに変わっていってほしいでしょうか?

慣習にとらわれすぎることなく、このような基本原則を一つ一つの現場でどのように実現していくことができるかゆっくり考えてみても良いかもしれません。


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