N.マキアヴェッリ『君主論』

◎ ポイント

 マキアヴェッリが生きた当時のフィレンツェ共和国は、大兵力を有する専制君主国家であるフランスやスペイン、オスマン=トルコなどの大国に囲まれた状況下、独立を維持するために、他の都市国家との同盟や勢力均衡政策を駆使しながら、生き延びることを余儀なくされていました。
 ひとつの外交失策が国の滅亡につながりかねない緊張感の下、フィレンツェ共和国の中級官僚としての視点から、国際政治の実態を悉に観察し、強かに生き残るために必要なリーダーのあり方を追求したのが本書です。
 反道徳的なフレーズが多分に用いられているため、刊行当時から評判が悪く、晩年の不遇も本書の執筆が影響したこと大ですが、人間の本性をあるがままに捉える「リアリズム」を理解する上では不可欠な書物と言えます。

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2,675字

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