「少年ジャンプ」とは何か、なぜヒットを連発できるのか 少年ジャンプ+編集部が語る現在地
こんにちは、クリエイターのためのお金やキャリア、テクノロジーの事例について紹介する媒体「クリエイターエコノミーラボ」編集部です。
今回は、少年ジャンプ+編集部にご協力いただいての記事となります。
Web・アプリの漫画雑誌サービスとして、「ジャンプを超える」ことを掲げ、創刊から約8年の間、運営されてきた「少年ジャンプ+」。
編集部ではよりクリエイターの活躍の場を広げるため、積極的に新しいWebサービスを開発しており、そのための企画「ジャンプアプリ開発コンテスト」(編注:応募期限は9月16日。詳細は記事の最下部)が行われています。
その関連イベントとしてオンライン開催された「ジャンプのミライ2022」では、第一回として6月29日に、少年ジャンプ+編集長・細野修平さんと、同じく副編集長・籾山悠太さんによるアプリ開発者向けの講演が行われていたのですが……。
これが、クリエイターの人も読まないともったいないような、本当に面白くて濃い内容でした。そこで、クリエイターエコノミーラボで書き起こしのレポートを掲載いたします。
前後編の2記事構成でお届けする本レポート、前編では、「週刊少年ジャンプ」と「少年ジャンプ+」を合わせたこれまでの「ジャンプ」について、語っていただきました。
▼後編も公開しました。あわせてご覧ください。
「少年ジャンプ」とは何か
籾山: まず私からは、「少年ジャンプ」とは何かというテーマでお話をいたします。
この「ジャンプのミライ」というイベントは3回に分けまして、先ほどもご紹介しましたが、ジャンプの現在位置、そして挑戦 、未来についていろいろ話したりしていくイベントです。
ジャンプっていうのは、もともと何なのかということをこのパートではお話をしたいと思います。一般的に読者にとっては、面白い漫画がたくさん連載しているマンガ雑誌だと思います。
しかし僕たちにとってジャンプは「ヒット作創出の装置・エコシステム」であるというふうに考えています。
ヒット作は、才能のある漫画家さんや優秀な編集者がいれば作れるんじゃないかというふうに考える人もたくさんいらっしゃると思います。
それはもちろん嘘ではなく、本当のことですが、とはいえなぜジャンプが50年以上、これだけ世界的に人気な作品を、毎年のように創出し続けてこれたのか。
才能ある漫画家さんや編集者が、たくさんある漫画雑誌のなかで、偶然ジャンプに集まって、偶然どんどん成長して、それが偶然にも50年以上続いたというのは、考えにくいかなと思っています。
つまりジャンプだけにヒット作が特に集中しているのには、何かしらの理由があるというふうに考えています。その仕組みこそが、ジャンプが、ヒット作をうむエコシステムになっていると思っています。
この、ジャンプのミライの私の最初のパートでは、ジャンプ+以前の「週刊少年ジャンプ」で、元々どんな考えで、どんな仕組みでヒット作を生み続けてきたのか。その装置を機能させてきたのかについて、簡単にご紹介したいと思います。
今回、このジャンプのミライの後半では、新しくインターネットやスマートフォンの時代に合わせて、ここ数年、新しいジャンプの仕組みを再発明しようというふうにチャレンジしていまして。
その核となる「少年ジャンプ+」や「ジャンプルーキー!」、そして「MANGA Plus by SHUEISHA」の3つについて、現状報告をしていきたいと思います。
そして最後のほうには、新しい発表もございますので、ぜひ最後までお聞きいただければ幸いです。
「ジャンプ」の仕組みとは
籾山:早速ジャンプの仕組みついて、お話をしていきたいと思います。
1つ目は、漫画家さんの発掘。2つ目は漫画家さんの成長。そして3つ目に、その作家さんが生んだ漫画作品のチューニング。そして、4つ目が、その生まれた面白い漫画の人気を拡大していくこと。
他にも色々あるんですけれども、特にポイントとなる機能が、この4つだというふうに考えています。
籾山:ジャンプでは作家さんと編集者のタッグ同士が、激しく厳しい競争をしながら 、この4つの機能を使っていくことで 、周りと比べて圧倒的な数の人気作を生んできたというふうに思っています。
それぞれ、少し詳しく紹介しますが、1つ目は作家さんの発掘について。これはいろんな編集部でもかつてはそうだったと思うんですけども 、漫画雑誌には漫画賞ですとか、持ち込みという仕組みを持っているところがほとんどです。
ここにジャンプは非常に大きなリソースをかけています。漫画賞というのは、作品を郵便やネット上で募集するコンテスト企画ですね。新人作家さんにとっては、登竜門のような役割を果たしています。
今もですね、集英社があるビルの1階には、たくさんの新人さんの持ち込みを受けるブースがありまして、今も常に、たくさんの新人作家さんが持ち込めるということで賑わっています。
例えば、『ONE PIECE』の尾田栄一郎先生は漫画賞の出身で、『暗殺教室』『逃げ上手の若君』の松井優征先生は持ち込み出身だったと聞いたことがあります。
ちなみにジャンプは1968年が創刊なんですけれど、その創刊当初から、漫画賞を実施しておりました。創刊編集者の言葉として、創刊号に長いメッセージを載せていまして、最初から新人発掘を重要視してきました。
その一部を紹介しますと、こちらですね。
「漫画雑誌が、はんらんしています。そこへまた、わたしたちは、新雑誌『少年ジャンプ』を創刊しました。『少年ジャンプ』を創刊するにあたって、まず考えたのは、いかにして新しい雑誌にするかということです。読者はどんどんかわり、進歩していきます。作者も、編集部も、読者より先に進んで、新鮮な話題を提供しなければなりません。超特急のようにつっぱしる“漫画新幹線”、これが新雑誌『少年ジャンプ』のイメージです。さて、みなさん、新しい、生まれたばかりの新雑誌にいちばんふさわしいものはなんでしょうか!?こたえはひとつです。新しい漫画家の、そうですきみの漫画作品なのです。」
籾山:新人に期待するという初代の長野規(ながのただす)編集長のメッセージなんですけど、このようにメッセージが続くんですけども、こういう文章が創刊号に載っています。
50年前のメッセージなんですが、私は、「漫画雑誌がはんらんしています」という言葉は、最近Web媒体など発表の場所が増えたことで、今の漫画業界のことを言っているみたいだなと思ったりします。
ジャンプの創刊当時と、もしかして状況が近いのかなと。私自身、ジャンプの創刊当時の方針をいろんな先輩に聞きながら、今のジャンプ+のことを考えていたりします。
ちょっと話がそれましたが、その持ち込みや漫画賞に集まる、つまりジャンプを目指してくれるとなると、作家さんが「ジャンプで描きたい」と思える場所作りも重要となります。
例えばですね、少年ジャンプでは必ず新連載があると等しく表紙になります。昔、私はジャンプの表紙担当をしていたことがありました。
そのとき、基本的に人気漫画が表紙だと実売というか、たくさん雑誌が売れるのですが、読者の知らない新しい漫画が表紙になると、売り上げが下がりがちなんですね。
ただ、少年ジャンプでは、どれだけ人気があっても、例えば完結済みの作品を大きく特集したり、表紙にすることは絶対なくて、やっぱり新しい作品を押し出すと。
ジャンプ+に関しても、同じ気持ちで運営しております。例えば、いろんなマンガアプリで過去のめちゃくちゃ面白い漫画の名作にすごく宣伝費をかけて、バナーを出して、ユーザーの読者を集めて、それでマネタイズして、サービスを大きくしていくということは、一般的なことだと思いますが、ジャンプ+ではそういうことはしません。
それも作家さん、新人作家さんがジャンプで描きたいと思える居場所作りという理由で、そういう運営をしています。
籾山:次に2つ目のジャンプの仕組みの、作家さんの成長についてです。ジャンプでは漫画賞や持ち込みなどで出会った作家さんが、数年かけて連載を獲得していくと。
その過程の中で作家さんが成長していくという機能が、ジャンプ編集部にはあると思っています。
先ほど触れた漫画賞もそのひとつですが、多くのステップを用意しています。例えば、増刊誌に掲載されるためには、コンペがあり、そこで落ちた場合は編集部からのフィードバックがある。
掲載された場合は、読者からフィードバックがもらえます。そして、本誌の「週刊少年ジャンプ」に読み切りを載せるためにもコンペがあり、そこで選ばれて掲載されると、今度はアンケートでもっと多くの読者の反応が分かります。
そして本誌の連載コンペに到達する。このようにたくさんのステップがあり、多くの作家さんが「週刊少年ジャンプ」連載を目指していますので、簡単には前に進めないという機能があります。
このステップを、担当編集者と漫画家さんが、先ほども触れた競争をして、その中で力をつけて、ただ作家さんの力が成長するだけでなく、ヒットする人気作品の企画や人気のキャラクターを見つけていくという役割も果たしています。
正直に言えば、増刊や漫画賞というのは、それだけで利益になるということはまったくなく、原稿料をお支払いして、赤字もたくさん出して、しかしそれでも編集者は、ものすごく時間をかけてこのステップに力を入れているということです。
籾山:続きまして、3つ目の仕組みですね。じゃあそうやって成長したヒット企画、人気キャラクターを見つけた作家さんが連載を始めたと、そこで作品自体の内容に関してもですね、チューニングをしていく機能がジャンプにはあります。
これは、みなさんご存じの方も多いかもしれませんが、アンケートがジャンプの一番の特徴かなと思います。
ジャンプに連載している漫画の各話の内容は、漫画家さんももちろん考えるのですが、読者からのフィードバックで内容がどんどん決まっていきます。
今もアンケートハガキには一定の精度があるというふうに考えています。
ここでも作家さんと編集者のタッグ同士が「週刊少年ジャンプ」の約20の連載枠を争って、ということになるので、チューニングの機能が発揮されています。
アンケートが悪いと、10週程度で連載が終わってしまうので、できれば1年後くらいに展開したいなという話も考えつつなのですが、かなりお尻に火がついた状態で、毎週の展開を考えなければいけない。
なので、悠長に先のことを考えるよりかは、とにかく毎週読者の支持を得続けられるよう、1票でも多く、アンケートの結果が出るように、必死で作家さんと編集者が知恵を絞る。
そのなかで、作品や内容のクオリティが上がっていくというのがジャンプの仕組みです。この辺りもWebやアプリの漫画雑誌ではどうしているのかということを話していますので、その続きの話は後で、細野編集長の話を聞いていただければと思います。
籾山:最後に4つ目ですね。作品の人気拡大についてです。
ジャンプは、ありがたいことに読者数が今も圧倒的なため、連載の内容、漫画の内容が面白ければ必ず話題になり、必ず映像化、舞台化し、ゲーム化をするなどの展開でヒットが拡大していきます。
よく編集者同士で話すと、「面白いんだけど、世の中になかなか知られていない」という話や悩みがあるんですが、ジャンプにはほとんどその悩みはありません。
じゃあなんで多くの人が今もジャンプの漫画を追ってくれているのかというと、その理由の1つは、先ほどもお話しをした、毎週のアンケートで漫画を作っているということがあると思います。
ジャンプでは、コミックスで読んだら面白いけど、漫画雑誌ではそうでもないみたいな漫画は、そもそも激しいアンケート競争の中で生き残れません。
毎週毎話見せ場があって面白い漫画ばかり載っていると、連載を雑誌でリアルタイムで追ってもらえるようになります。読者と一緒にライブ感を持って、連載を生み出す。
読者が楽しんで、一緒に連載を作ってくれている。読者と一緒に作品が育って、人気が拡大していく場所。それが、ジャンプだと思っています。
これからの時代の「ジャンプ」
籾山:このように4つのメインの機能を活用しながら、ジャンプでは、「競争をしながら、作品を生み、読者と共に作品を育て、広げる」という流れで、50年以上、大ヒット作を生み続けてきたということです。
籾山:そして最後に、これからの時代のジャンプについてお話しをしたいと思います。
これだけスマートフォンが普及し、めちゃくちゃ速いスピードで変化し続けている時代に、ジャンプの仕組みが変わらず機能していけるのかという不安や、漫画雑誌の読者も減っている不安もあります。
逆にもっと、今のいろんな技術を使った新しい仕組みを作ることで、さらに面白い漫画を生む装置として、エコシステムを作ることができるんじゃないかというふうにも考えています。
才能がまだ開花していない新人クリエイター、そしてもっと新しくて面白い漫画を読みたいと思っている読者に、ジャンプは貢献できるんじゃないかというふうに思っています。
ジャンプ+やジャンプルーキー!などで、現状では、こういうことをしていますという話を今日はしていきますが、先に結論を言うようですけど、私たちはまだ道半ばだというふうに思っています。
籾山:今日のイベントは、ジャンプアプリ開発コンテストの関連イベントとして開催させていただいておりまして、これからの「ジャンプ」を一緒に作ってくれる方を募集していますので、ぜひ応募していただければと思います。
ジャンプアプリ開発コンテスト2022ということで、漫画の創出に繋がる斬新なアイデアやサービスの企画を募集しています。入賞企画には、開発資金として5000万円を編集部が提供し、実現を目指すコンテストです。
先ほどいろいろジャンプの機能についてお話ししました。
例えば作家さんの発掘につながる新しいアイデアや企画がないか、作家さんの成長や、人気キャラクターの発見につながる新しい企画やアイデアがないか、連載作品をチューニングできるような企画がないか。
そして、できた漫画をどんどん読者に広げていくような、連載をライブで追う面白さを大きくしていくアイデアや企画がないか。
また、それと全然関係ない部分でもまったく問題ありません。とにかく、ヒット作を生むことにつながるアイデアや技術があれば、どんな内容でも大丈夫です。
ぜひ、新しい時代のジャンプを一緒に作ってくれる方を募集していますので、チェックしていただければと思います。
それでは、「ジャンプとは何かというパート」は以上となります。ありがとうございました。
次のテーマ、「少年ジャンプ+」の最新状況に移りたいと思います。では細野さん、よろしくお願いいたします。
細野:はい、改めまして、少年ジャンプ+編集長の細野です。よろしくお願いします。
「少年ジャンプ+」の最新状況
細野:本日は、「少年ジャンプ+」の最新状況ということで、お話をできればと思っています。
まず「ジャンプを超える」っていうちょっと勇ましい言葉なんですけども、こちらをキーワードとして覚えておいていただけるといいかなと思います。
少年ジャンプ+は、ジャンプを超えるというコンセプトで2014年にスタートしました。まず、ジャンプを超えるというのはそもそも何なのか、どういう意味なのかなんですけど、2つあります。
1つ目が、新しいヒットを作ること。『ONE PIECE』や『鬼滅の刃』を超えるような大ヒット作を作ること。
もう一つは、さっき籾山がジャンプの仕組みという話をしたかと思うんですけど、ヒットを作るための仕組みを作ることだと思っています。つまり、「週刊少年ジャンプ」のアンケートのシステムに変わるようなヒットにつながる仕組みを作ること。
この2つを達成することで、ジャンプを超えられるんじゃないかというふうに考えています。
細野:そして現在、創刊8年弱経っているんですけども、ジャンプを超えることはできたのかというところなんですけど、そこを軸にしながらジャンプ+の話をしていければと思います。
ちょっとその前に、ジャンプ+のおさらいをさせていただこうかと思います。基本の部分で、まずアプリとブラウザで展開している漫画雑誌サービスです。
オリジナル漫画が中心となっていて、そのオリジナル漫画に関しては、アプリダウンロード後に一読目は初回全話無料で読むことができます。
例えば、『SPY×FAMILY』が気になったので読みたいなと思って、ダウンロードすれば、最新話まで無料で追いつくことができます。
他に「週刊少年ジャンプ」の電子版、こちらは一冊ずつ買うことができますし、定期購読でも販売しています。その他は、1話単位で販売したり、コミックスで販売するっていうこともやっています。
そのジャンプ+なんですけども、今、デイリーアクティブユーザー(DAU)がですね、185万人、WEBを足すと220万人くらいになっています。
始まって以来、右肩上がりで進んできていて、ウィークリーアクティブユーザー(WAU)も同様に増えてきています。
あまり、ウィークリーアクティブユーザーって、指標としてないかもしれないんですけど、ジャンプ+はジャンプを超えたいと思って、ジャンプを意識しているので、結構、ウィークリーの指標も大事にしています。
そしてマンスリーアクティブユーザー(MAU)数が、アプリは550万人、WEBを足すと1,050万人、そしてダウンロード数が2,100万回となっています(イベント開催の6月29日時点)。
こちらも右肩上がりに増えているんですけど、ちょっと2020年辺りから一気に増えているのは、一応コロナの影響もあったりするんですけども、どちらかというと『鬼滅の刃』の最終回あたりのフィーバーが影響していまして、2019年に始まった『SPY×FAMILY』や2020年の『怪獣8号』も影響して増えてきているのかなと思います。
細野:そういった『SPY×FAMILY』や『怪獣8号』など、オリジナル作品の連載数なんですけども、今、連載中の作品が70作品になります。
累計連載作数は、2014年の創刊から今まで341作品が開始されたということになります。大体、年平均で50本くらいの連載をスタートできているというところです。
配信量・閲覧数の増加のグラフなんですけど、ジャンプ+のボリューム感、規模感というのを理解してもらうには良い数字なのかなと思いまして、2021年に配信したページ数が約4万7千ページあります。
細野:どのくらいの量かというふうに考えると、週刊少年ジャンプが一冊大体500ページくらいなんです。けれども、これが年50冊弱出るので、25,000ページくらいということで、その2倍くらいジャンプ+では配信しています。
これもじわじわと増えてきて、若干2018年から2020年くらいは横ばいだったんですが、昨年はかなり増えて、4万7,000ページとなっていて、今年もその数字を超えていくんじゃないかというふうに思っています。
読み切りというのは短編作品のことなんですけども、増えた要因の一つとして、こちらの掲載数も増えていまして、昨年は、過去最高の368作品になっています。
平均すると、1日に1本以上のショート作品を読むことができるといった形になっています。
そして年間最大閲覧数というのは何かというと、その年に一番読まれたものの閲覧数はどうなっているのかということなんですが、こちらが2014年に生まれた作品の32倍になっています。
最大閲覧数の作品『タコピーの原罪』、これが一話分で360万閲覧とされています。
もう少し詳しくジャンプ+の最近のヒット作『SPY×FAMILY』と『怪獣8号』についてご紹介します。
『SPY×FAMILY』は、先週までテレビアニメも放送しておりまして、大好評をいただいてます。今、累計の発行部数は電子と紙媒体を合わせて、2,100万部を突破(イベント開催の6月29日時点、現在は2,500万部以上)しています。
あとは、2020年に「このマンガがすごい!オトコ編」で1位をいただいたり、いろんな漫画賞を受賞させていただきまして、非常に好評をいただいています。
そして『怪獣8号』は、累計発行部数700万部を突破(イベント開催の6月29日時点、現在は780万部以上)しまして、こちらも漫画賞をいろいろともらっていまして、2作品ともジャンプ+で非常に多くの読者を獲得しています。
こちらは、『ダンダダン』と『タコピーの原罪』なんですが、『ダンダダン』は昨年の4月にスタートしまして、累計150万部以上売れていまして、全国書店員が選んだおすすめコミック2022でも第1位をいただいており、最近ではフランスでも出版が決まったり非常に勢いがある作品です。
『タコピーの原罪』は、2021年12月から今年の3月まで連載されていた作品で コミックス累計発行部数が130万部を超えておりまして、 非常に大きく話題になっています。
この後、『タコピーの原罪』に関しては、籾山のほうから別途、話があるんですけども、これらの作品が最近のヒット作になっています。
そして、昨年、藤本タツキ先生に『ルックバック』という読み切りを発表していただきまして、こちら も非常に多くの読者を獲得して話題になりました。
そして7月13日からですね、週刊少年ジャンプで連載していた作品『チェンソーマン』の第二部がジャンプ+のほうで始まります。この藤本先生の作品も、非常に注目されています。
というわけでですね、これらの作品のおかげでコミックスの売り上げも増えています。
細野:さっき、コミックスはあまり考えないようなことを言いましたし、そもそも未だにコミックスなのかってとこもあるんですが、一つの指標になりますので、こちらで紹介させていただくんですけれども。
かつ、集英社の期ごとでの比較なので、2021年の年間など分かりやすい形ではないんですけれど、一番右の81期というのは、2021年6月から2022年5月までの数字になっています。
その前の期より倍以上に増えている形で、最近コミックスに関しても、非常に大きな勢いとなっています。
おかげさまで、TwitterなどのSNSでトレンド入りすることも増えています。『SPY×FAMILY』はアニメ効果もありまして 、最近も非常に話題になっていますし、『タコピーの原罪』も最終回付近ですと毎週最新話が更新されるたびにトレンド入りするといったことがありました。
トレンド入りした作品でですね、他に『ハイパーインフレーション』という作品があります。
ちょっと濃い、独特な作品なんですけども、こちらも非常に熱狂的なファンがいまして、更新されるとだいたい毎回トレンド入りするといったことが起きています。
そして、あとは映像化作品ですね。先ほども言いました『SPY×FAMILY』、今年の4月からアニメ化しているんですけれども、他にも『サマータイムレンダ』『阿波連さんははかれない』という作品が4月からアニメ化されました 。
過去には、『彼方のアストラ』『終末のハーレム』といった作品がアニメ化されまして、今後決まっているのが『地獄楽』。また、『カラダ探し』という作品の実写映画が公開されることも決まっています。
さらに10作品以上がメディア化が決定済みということで 、自慢話みたいになっているんですけども、非常に勢いが強いということをお伝えできればと思っています。
ジャンプを超える
細野:ジャンプを超えることはできたのかという問いに戻ってくるんですけれども、残念ながらまだ超えていないというふうに考えています。
それはなぜなのかというところに、ジャンプ+の課題が見えてきています。 ヒットを作るための仕組みを作ること、こちらがジャンプ+の課題だと考えています 。
ジャンプ+の課題をさらに細分化して、課題は3つあると考えていて、 課題1が「ヒットのグロース・サイクルを加速するには」、課題2が「アンケート・システムを超えたい!」、課題3が「最新をもっと盛り上げたい!」、この3つがあると思っています。
これを今回紹介するのは、アプリ開発コンテストのトークイベントということで、今回これらの課題を解決するアイデアをぜひ募集したいなと思っていますので、しっかり聞いていただければいいなと思っております。
細野:課題1つ目の「ヒットのグロース・サイクルを加速するには」ということなんですけれども 、ヒットを作る仕組みがジャンプにはあると考えています。
僕はヒットのグロース・サイクル と勝手に呼んでいるんですけれども、ジャンプ+でも作りたいなというふうに思っています。
そのサイクルの流れとしては、新人作家が集まってきてそこから尖った才能が出る、その才能で新連載を作ると、その新連載を読みたくて読者が集まってくる。
そうするとジャンプ+の注目度がアップして、さらにジャンプ+に載りたいという新人作家さんが集まってくるといった形で、ぐるぐるサイクルが回っていくと、ヒットが出てくると思います。
さらにそのサイクルの輪が大きくなっていくことによって、大ヒット作品が出てくるんじゃないかというふうに思っています。
細野:ただですね、このサイクルをもっと加速したいなと思ってますし、一つひとつの輪のところをもっと大きくしたい 。
例えば新人作家をもっと集めるにはどうしたらいいんだろうか、その読者が集まってきたときにジャンプ+への注目度をアップさせるにはどうするのか。
そういったところへの課題が、まだあるかなというふうに考えています。
細野:課題2つ目の「アンケート・システムを超えたい!」というのは、先ほどからずっと言っている通りですね。
週刊少年ジャンプのアンケート・システムは、非常に優れていると考えています。他作品と切磋琢磨することができますし、誰もが納得するフェアな基準ということで。ヒットを生み出す仕組みになっているか なと思っています。
ジャンプ+も、このようなアンケート・システムが欲しいと思っていて、今もたくさんの数字を取っています。
閲覧数やいいジャン数は、公開されている数字なんですけど、例えば、完読率(最後までその作品を読み切ってくれたのか)という数値を取っていたり、面白かった率(読んだ後にランダムで表示される3択のアンケートで測っている)など、いろんな数値が取れています。
この他にもたくさん数値を取っているのですが、じゃあジャンプのアンケートのシステムに変わるようなものとして、どれを指標にするのかというところのアイデアを模索中で 、まだもう一歩足りてないかなと思っています。
なので、ここに関しても何か面白いアイデアをいただけるといいのかなと思っています。
細野:課題3つ目の「最新話をもっと盛り上げたい!」のキーワードは、同時代性、共有、コミュニティというふうに思っていまして。
先ほどからお伝えしている『タコピーの原罪』なんですけれども、この作品でより一層、鮮明になったなと思うのが、漫画の一番の良さ、楽しさっていうのは、最新話を読んで、みんなで盛り上がることなんじゃないかと思いました。
以前、いわゆるZ世代の大学生にインタビューするっていう機会がありまして、そのときに言われて結構衝撃だったのが、「漫画はタイパが悪いですよね」「楽しさを共有するのに時間とお金がかかっちゃうんです」って言われたのが衝撃でした。
つまり例えば、ある作品が面白いよって言ったときに、10巻コミックスが出ていると、その10巻を読んでもらうためにお金が必要であったりとか、また当然、時間が必要になってくると。
そうすると、YouTubeの動画を共有するときよりも非常に時間がかかってしまう。すぐにパッと一緒に楽しめないということを言われて、確かに漫画はそういった問題があるのかなと思いました。
これは、ジャンプ+で初回全話無料を導入した理由の一つでもあったりします。
ただですね、この『タコピーの原罪』で気づいたのは、漫画の最新話を共有するっていうことであれば、そのタイパに関して、動画を上回ることができるんじゃないかと思っています。
漫画の最新話っていうのは、本当に早ければほんの数分で読み終えることもできるんですけど、その後すぐにみんなで一緒に楽しむことができるという意味で言うと、最新話をもっと一緒に盛り上がるというところに、漫画をさらに強くするヒントがあるんじゃないかなと思っています。
さらにですね、そのヒットをより深めたり、広めたりというところで、コミュニティというものが重要になってくるかなと思うんですが、結構ここに関しては、我々ジャンプ+では手付かずになっているかなと思っていますので、ここにもアイデアをいただけると、大変良いのかなというふうに思っています。
細野:そこで、これらの課題を解決するアイデアをぜひ今回、「ジャンプ+アプリ開発コンテスト」でいただければいいなと思っています。
もちろんそれだけじゃなく、ジャンプ+はこういうところが足りないみたいなことを言ってもらえると非常にありがたいので、そういったこともぜひお伝えいただければと思います。
さて、今日のテーマはジャンプのミライということなので。ジャンプ+のミライのお話をしたいと思います。
ジャンプ+のミライ
細野:ジャンプ+は、スタートした当初、毎週の各曜日、月曜日から日曜日まで、毎日100万人に読まれる作品を揃えたいということを言っていました。
おかげさまで、そろそろこれが達成できそうかなという感じになってきました。各曜日に100万閲覧を超える作品が出てきそうという段階になってきています。
もうちょっと上というところで、ウィークリーアクティブユーザー1,000万っていうところが次の目標かなと思っていたんですが、これも今、ウィークリーが大体500万ちょっとぐらいまで伸びていますので、目標はもっと高いところに設定できるかなと思っております。
そこで、今の目標は、1話で1,000万人に読まれる作品を作ることです。というのも、週刊少年ジャンプの600万部時代っていうのは、まあ回し読みなども含めれば、おそらく毎週1,000万人に読まれていたんじゃないかなと思いますので、この人数を達成すると、当時の週刊少年ジャンプに勝つことができるんではないかと。
それを達成することによって、ジャンプを超える最強のマンガ雑誌アプリになったと言えるんじゃないかと。そんなふうに考えております。ご静聴ありがとうございました。
◆
「ジャンプアプリ開発コンテスト」2022が開催中!
大賞は賞金100万円の他、複数の賞を用意。応募受付期間は、9月16日(金)23:59までです。
ご応募についての詳細は下記のページをご覧ください。
https://jumpplusappcompe.com/
登壇者
細野修平
少年ジャンプ+編集長。「月刊少年ジャンプ」、「ジャンプSQ.」、「週刊少年ジャンプ」を経て、「少年ジャンプ+」の立ち上げに関わり、2017年から同誌の編集長を務める。主な立ち上げ担当作品は『テガミバチ』『終わりのセラフ』『DRAGON BALL外伝 転生したらヤムチャだった件』など。
籾山悠太
少年ジャンプ+副編集長。週刊少年ジャンプ編集部、デジタル事業部などを経て、2014年に「少年ジャンプ+」の立ち上げに関わり、2019年から同誌の副編集長を務める。主な立ち上げ作品は『カラダ探し』『花のち晴れ』など。
◆
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