現代に抗う術-『アキバちゃん』レビュー
ノスタルジーからくるエモさというものがある。純喫茶でクリームソーダ、フィルムカメラで街を撮る、薄暗い夜明け、自堕落な生活、アルコール、古着屋、名画座、ミニシアター、硬いプリン。これらは全てノスタルジーからくるエモ、過剰に近代化され、行動しなければ生き残れない現代への無意識の反抗。
でも正直飽きてませんか?それ
『アキバちゃん』はまだ名前のないノスタルジー
『アキバちゃん』を知っていますか?面白くないし古いし作画も良くないから誰も知らないと思います。
可動フィギュアとCGを組み合わせた「フィギュメーション」とかいうやつらしい。キャラクターを動かす人形劇が基本で、まばたきや背景にはCGが使われるというシステム。
静止画で見る分にはイケるんだけど、動くとまあ不自然で。
そんなアニメをおすすめするのは、この作品がまだ名前のないノスタルジーだから。
突然ですけど、小さい頃ってテレビとか見てました?見てた人ならわかると思うんですけど、あの頃のテレビってクオリティ低いのに無理してCG使ってましたよね。
あれ。
あれと同じ種類の臭いがする。
チープ。
なんか無駄にキャラデザぽよよんろっくだし
なんなんすかね
ビジュアルが不気味
ぽよよんろっくがキャラデザしてるのに。
ぽよよんろっくのキャラデザはかわいいんですけど。
ぽよよんろっくのキャラデザを活かせるほど可動フィギュアをうまく動かせてない。
人形劇を見ている気分になって、本当に、虚無になってくる。や、人形劇ならまだいい。そこに実在しているから。問題は、人形劇がモニターの向こうで展開されていて臨場感に欠けること、そして背景のCGと相まって極限まで下らなく見えること。小道具がしっかりしているおかげで何をしているのかはわかり、そこもまた逆に不気味。そしてその不気味さが、幼少期の世界への理解の浅さとリンクして、いい。逆に。
浅い脚本
オチがオチとして機能しておらず、何が言いたいのかわからないところはこの作品の最も評価すべきポイントでしょう。
あの頃見ていた作品も、生まれながらにして穿ってしまっている人間には下らなく感じるところも少なくなかった。あの感覚。
あの感覚のまま、全く新しい映像体験ができる。画期的。
従来のアニメーションなら、顔のかわいさでごまかすことだってできたはず。それを捨ててまで「フィギュメーション」で頑張る、そういった努力はなく、脚本が、素晴らしいことになってしまっている。
ありがとうね、ホンマ
まとめ
『アキバちゃん』はタイトルに釣られて観てもヤケドする。
我々は覚悟を持ってこの作品に臨むべきだ。