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【Neo4j】トップ10ユースケース:アンチマネーロンダリング


本ブログは、「Neo4j」社の技術ブログで2021年2月8日に公開された「Top 10 Use Cases: Anti-Money Laundering」の日本語翻訳です。


  グラフテクノロジーは未来です。グラフデータベースは、データ間の関係を効果的に保存するだけでなく、新しい種類の関係を追加したり、新しいビジネス要件にデータモデルを適応させたりする柔軟性も備えています。 しかし、現在、企業はどのようにグラフデータベースを使用して、困難な問題を解決しているのでしょうか?このブログシリーズでは、グラフテクノロジーのトップ10のユースケースを取り上げ、それぞれについて実際の事例を紹介します。このブログシリーズは、ナレッジグラフを使ったグラフ技術の活用を紹介するものです。 今回は、複雑なデータの関係をリアルタイムで認識できるグラフデータベースが、アンチマネーロンダリングにどのように役立っているのか、グラフテクノロジーの活用事例を10回に分けて紹介します。

ユースケース:アンチマネーロンダリング

マネーロンダリングとは、犯罪によって取得した不正な資金を、あたかも正当的に稼いだ資金に見せかける行為を言います。汚れたお金をきれいなお金に変えるイメージから、日本では「資金洗浄」と訳されます。マネーロンダリングを放置すると、不正によって得られた資金が、世界中の反社会的勢力や、犯罪組織の活動に悪用され、さらなる犯罪を招いたり、健全な経済活動の妨げになります。 これらの犯罪を防ぐため、金融機関は、マネー・ローンダリングやテロ資金供与の防止対策を行うことが義務付けられています。

今日のアンチマネーロンダリング(AML)スキームは高度であり、疑わしい活動に従事する人々を惑わし、騙すために、しばしば間接的な手法が用いられます。しかし、従来のテクノロジーは、多くの中間ステップを越えて点と点を結ぶように設計されていません。 検査官は通常、膨大な量のデータに目を通すのに膨大な時間を費やし、数ヶ月かかることもあります。

アンチマネーロンダリングにグラフテクノロジーを活用する理由とは?


従来の技術の多くは点と点を結ぶように設計されていないため、マネーロンダリングのスキームを検出するには膨大な労力が必要です。そのため、マネーロンダリングを検知するためには、膨大な量のデータを手作業で調べなければなりません。

また、マネーロンダリングの手口は実に多様です:

  • ストラクチャリング(別名:スマーフィング)

  • 大量の現金の密輸

  • キャッシュ・インテンシブ・ビジネス※1

  • 貿易に基づくロンダリング

  • ダミー会社

  • ラウンドトリップ※2

  • バンクキャプチャー※3

  • カジノやギャンブル

  • 不動産

  • 現金給与

  • 生命保険事業

大量かつ増大するデータ資産には、データセットのサイズと多様な接続に対応するテクノロジーソリューションが必要です。 複雑なデータ関係をリアルタイムに把握できるグラフデータベースは、マネーロンダリングや横領といった不透明な世界に対する強力な武器になります。

※1 現金ベースの事業の経営や利用を行い、その事業が実際に生み出す現金と不正に得た資金を混同させること。
※2 資金を海外の企業やAML管理の弱い地域に移した後、海外からの投資として戻して納税を回避すること。
※3 マネーロンダリング業者が金融機関を支配すること。精査を受けずに資金を移動させ、他の銀行と取引して合法化することで、合法的な金融機関は重大な財務リスクを抱え、責任を問われる可能性がある。

活用例:送金サービス

ある送金サービス業者のコンプライアンス・マネージャーは、AML調査官が1日に数十万件に及ぶ送金パターンを確認できるソフトウェア・ツールが必要だと考えていました。

年間で6,000億ドルもの送金しているこの送金サービスでは、マネー・ロンダリングの手法の1つ「スマーフィング」を検知する方法が必要でした。スマーフィングとは、1度の取引額が多いと目立つため、1つ1つ預金や送金の取引を小額で行います。それを複数の人々(スマーフ・受取人)によって頻繁に取引を行うことで、全体では多額の不正資金を洗浄しようとします。一度に大きな金額を処理することなく、資金の流れを分散させることで、監視の目から逃れようとする手法です。

当然のことながら、国際送金業界は規制が厳しく、同社は事業を展開するすべての国(世界150カ国)でAML要件に準拠しています。

「私たちは、システムやプロセスの改善を継続的に検討しています。送金パターンとスマーフィングをマッピングする技術を欧州のFIU※と検討し、それが業務プロセスをとてつもなく改善することがすぐに分かりました。」 「Neo4jを見たとき、データをダイナミックに調べる方法を提供してくれるため、最高のツールだと理解しました。私たちの従来のツールはどれもSQLベースであったため、Neo4jのようなダイナミックなアプローチを持つことは不可能でした。」とコンプライアンス・マネージャーは言います。

Neo4jは、わずか数クリックで、この会社の膨大な量のデータをダイナミックかつリアルタイムに処理することで、コンプライアンスと調査業務の両方を効率化することを可能にしました。

数カ国、少なくとも2つの大陸にまたがるある大きな事件に関して、コンプライアンス・マネージャーは、「Neo4jのおかげで全体像を見ることができました。Neo4jを使用して犯罪行為や不正活動の進行や経過を分析することで、疑わしい活動の重要な要素が明確になりました。」と述べています。

Neo4jを完全に導入して以来、同社は従来のツールよりも20倍速く刑事事件を追及できるようになり、業界における捜査コンプライアンスの「ベンチマーク」となっています。

※FIU:Financial Intelligence Unit。資金洗浄やテロ資金供与に関する疑わしい取引の情報を一元的に受理・分析し、捜査機関等に提供する政府機関のこと。

結論

グラフデータベースでは、データモデルを書き換えることなく、新しいデータソースやデータタイプに対応し、マネーロンダリングの検出を継続的に改善することができます。高可用性機能が搭載されているため、ミッションクリティカルなAMLエンジンが常にユーザーデータにアクセスできるようになっています。 リレーショナルデータベースとは異なり、グラフは相互に関連したデータを保存するため、データの深さや形状に関係なく、不正行為を容易に検出することができます。


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