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ソリューションアーキテクチャーデザイン連載(6/13):クライアントサーバーアーキテクチャーとは何ですか?

本記事は2023.05.18に投稿したクリエーションライン Tech blogからの転載です。


クライアントサーバーアーキテクチャーは、ソフトウェアやアプリケーションを分散させるために使用されるアーキテクチャースタイルです。このアーキテクチャーでは、アプリケーションは2つの異なる役割を持つコンピューター間で実行されます。一つは「クライアント」と呼ばれ、もう一つは「サーバー」と呼ばれます。

クライアントは、ユーザーインターフェースを提供し、ユーザーの要求を受け付けます。クライアントは、サーバーに対して情報を要求するために、サーバーへの接続を確立します。

サーバーは、クライアントからの要求を受け取り、それに応答します。サーバーは、データベースやファイルシステムなどのリソースにアクセスし、クライアントが要求した情報を取得して返します。


クライアントとサーバの図

クライアントサーバーアーキテクチャーは、多くの場面で使用されています。

  • Webアプリケーション

  • 銀行システム

  • 電子メール

  • オンラインゲーム

  • オンラインストレージ

クライアントサーバーアーキテクチャーは、古くから存在しているアーキテクチャーの一つであり、クライアントサーバーアーキテクチャーの基本的な概念は、1960年代にIBMが開発したIMS(Information Management System)において初めて導入されたと言われています。その後、1990年代に入ると、ネットワーク技術の進化とともに、クライアントサーバーアーキテクチャーは一般的なアーキテクチャーとなり、現在でも広く使用されています。

たとえば、マイクロサービスアーキテクチャーは、クライアントサーバーアーキテクチャーの発展形とも言われています。マイクロサービスアーキテクチャーでは、アプリケーション全体を複数の小さなサービスに分割し、それらのサービスがクライアントとして相互作用することで、柔軟性とスケーラビリティを向上させることができます。

また、RESTful APIアーキテクチャーも、クライアントサーバーアーキテクチャーの影響を受けています。RESTful APIでは、クライアントとサーバの間でHTTPプロトコルを使用して通信することで、アプリケーションの柔軟性と相互運用性を向上させています。

現代のクライアントサーバーアーキテクチャーは、古くからのクライアントサーバーアーキテクチャーと比べて、セキュリティ、スケーラビリティ、柔軟性などの面で改良が加えられており、現代の技術やニーズに合わせたアーキテクチャーとして進化しています。 クライアントサーバーアーキテクチャーのメリットは、次の通りです。

  • 可用性の向上 サーバーは、リソースの集中管理を可能にするため、一度の変更で複数のクライアントに対して同じ情報を提供することができます。このため、システム全体の可用性が向上します。

  • セキュリティの向上 クライアントからの要求に対して、サーバー側で厳密な認証と認可を行うことができます。また、データのセキュリティを確保するために、サーバー側でデータの暗号化を行うことができます。

  • 拡張性 サーバーは、ハードウェアやソフトウェアのアップグレードによって簡単に拡張できます。また、クライアントの数が増えた場合でも、サーバーは処理能力を向上させることができます。

  • メンテナンス性 サーバーは、複数のクライアントからの要求に応じてリソースを管理するため、単一のシステム管理者によるメンテナンスが容易になります。

クライアントサーバーアーキテクチャーのデメリットは、次の通りです。

  • ネットワークの帯域幅の制限 クライアントとサーバー間の通信には、ネットワーク帯域幅が必要です。大量のデータを送信する場合、ネットワークの帯域幅が制限されることがあります。

  • 単一障害点 サーバーがシステム全体のリソースを管理しているため、サーバーに問題が発生した場合、システム全体が停止する可能性があります。単一障害点が発生しないように工夫が必要です。

  • コスト クライアントとサーバーの両方に高度なハードウェアとソフトウェアが必要であり、システム全体の構築にかかるコストが高くなる場合があります。

  • プロトコルの問題 クライアントとサーバーが異なるプラットフォームやプログラミング言語で実装されている場合、プロトコルの整合性を確保する必要があります。これにより、システムの複雑さが増す可能性があります

クライアントサーバーアーキテクチャーの対局にあるアーキテクチャースタイルとして、ピア・ツー・ピア(P2P)アーキテクチャーがあります。P2Pアーキテクチャーでは、システム内のすべてのコンピューターが同じ役割を持ち、彼らは互いに協力して、分散されたタスクを実行します。つまり、クライアントとサーバの区別がなく、すべてのコンピューターが対等な地位を持ちます。

P2Pアーキテクチャーは、ファイル共有や分散コンピューティングなどのアプリケーションに適しており、単一障害点の問題を回避することができます。  

AUTHOR

Lee

モダンアーキテクチャー基盤のソリューションアーキテクトとして活動しています。

[著書]
・Amazon Cloudテクニカルガイド―EC2/S3からVPCまで徹底解析
・Amazon Elastic MapReduceテクニカルガイド ―クラウド型Hadoopで実現する大規模分散処理
・Cypherクエリー言語の事例で学ぶグラフデータベースNeo4j
・Neo4jを使うグラフ型データベース入門(共著)
・RDB技術者のためのNoSQLガイド(共著)

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