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[UFC279] 異例のシャッフル。ガラリと変わった279
カムザット・チマエフとケビン・ホランドの間で起こったいざこざが原因でUFCは公開記者会見を途中で中止するという異例の対応をとった。
そこから既にUFC279は揺れ始めていた。
そしてその後の公開計量でチマエフは故意と思われるような3.4kgオーバーという体重超過を犯し、メインイベントのカードを台無しにした。
その結果対戦カードが直前で変更され、チマエフはキャッチウエイトで因縁のホランドと対戦することになった。
[スター選手に振り回される興行]
やはり強者が集うUFCなだけにいつの時代でも曲者や我の強いファイターを多く抱えている。その中で時より大きな衝突が起こり、どこかのタイミングで暴れることがある。
しかし前から決まっていた試合が直前でここまでシャッフルされるというは異例である。しかもメイン中のメインの試合が揃って替えられている。
この運営の対応には賛否の意見が寄せられている。
優秀なファイターが多いUFCだからこそ急な変更を行なっても対戦カードのクオリティを大きく下げるようなことはなかった。
視聴者の中にはむしろ変更後のカードの方が良いと感じる人もいるかも知れない。
しかしこれは結果として一人のファイターのワガママによって事前にあったストーリーや大会の緊張感・今回の件に巻き込まれたファイター達の準備期間などを不意にしたことになる。
そして今回それがまかり通ってしまった。
そうなるとスター選手のチマエフを処罰出来ないから今回は誰もお咎めなしにして、強引なシャッフルで対応しましたという風に映ってしまう。
それは一人の存在に合わせて組織のルールが左右されたこととほぼ同義なのではないだろうか。
規律を守っているファイターはこれに対して特に疑問を感じるだろう。
多くの屈強なファイターと契約しているからこそ、そこには強力な縛りが必要で、それがないとあっという間に秩序は乱れていってしまう。
「戦い好きの戦士」というチマエフの気質はファイターとして恵まれた感性ではあると思うけれど、気持ちの面での幼さがある部分での社会性を損なわせてしまっているように見える。
それが故に今回の責任を度外視したような考え無しの行動をとってしまったのではないだろうか。
[団体に所属する上での責任感]
格闘技は命を削り合う過酷なものであるのと同時に、一つのビジネスであり、スポーツでもある。契約があってルールがある。特殊性はありながらも歴とした大人の世界なのだ。
対戦相手をシャッフルされた選手たちは最初の対戦カードが決まった時からその相手を研究し対策を講じながら練習を重ねてきたに違いない。
そして技を磨き自分を制限しながら体重を作ってきた。
しかし今回はその中の努力を無駄にされた部分がある。
戦いの場が提供され且つ対戦相手がいて初めて成り立つ競技に身を置くのならば、そういった戦いに懸ける選手やその想いに対してリスペクトを持つ必要がある。
団体の中で活動し、その恩恵を受ける以上はそこにあるルールには従う必要がるし、アウトローなファイターであっても責任ある行動が当然求められるはずだ。
[シャッフルされた試合]
また、個人的に今回の騒動で乱れたのは対戦相手とそれに伴うバランスだと思っている。
幻想が崩れたチマエフとタフな戦いで試合をひっくり返すディアスとの戦いから、目に見えて総合力に差のあるチマエフVSホランドの試合になってしまった。
組み技の対応力にチマエフとホランドでは大きな差があり、恐らくホランドはチマエフのタックルを切れないだろうと思う。仮に凌いだとしても体力の削れた後半では簡単にテイクダウンを許すのではないか思う。
そしてそうなったらあっという間に極められてしまう可能性が高い。打撃でも直近の試合を見る限り危険度が高いのはチマエフの方だろう。
そうなるとホランドは一発に期待する他ないように思えるので、ディアスVSチマエフに比べると何かが起こるワクワク感は薄まったように思う。
それでも尚新たに組まれたリー・ジンリャンとダニエル・ロドリゲス、ネイト・ディアスとトニー・ファーガソンのメインイベントは魅力的だ。
リー・ジンリャンVSダニエル・ロドリゲスはお互いに勝率が高く、技術のある実力者同士なので内容の濃い試合になるのではないかと思う。
また、ネイト・ディアスVSトニー・ファーガソンは永らくUFCを盛り上げてきたベテラン同士のぶつかり合いであり、年齢的にも釣り合いが取れている上にUFCとの契約が切れ、別団体での参戦を考えるディアスにとっては今回がUFCラストマッチになる可能性が高いので、ファン必見の試合となる。
元々の形とは違う異例のスタートとはなってしまったが、それでもその変更に応えるファイター達の勇姿は変わらず魅力的に映るだろう。
今回のカード変更が結果として凶とでるか吉とでるかそんな所にも注目しながら見られるのが今回のUFC279になるのではないだろうか。
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