パルスオキシメーターの数値が正確でない場合


コロナ禍でよく知られるようになったパルスオキシメーターという機器。脈拍と合わせて「酸素飽和度(記号でSpO2)」を簡易に測定することができるため、重宝されているようで、多くの家電量販店で品切れ状態だとか。近所の量販店で探してみたところ、店頭になかった。パルスオキシメーターは、赤色・赤外の2種類の光を利用して、血液中のヘモグロビンのうち酸素と結合したヘモグロビンの割合をパーセント(%)表示する。これが「酸素飽和度」だ。この数値が90~93%を下回ってくると入院の必要性が検討されることになる。

ただ、パルスオキシメーターが正しい数値を示さない場合もあるようだ。そのことを指摘した記事を紹介する。



◆まずは以下記事から、「『酸素飽和度』が正しく表示されない4つの理由」


(以下引用)

①手が冷たい
手が冷え切っていると、指先の血管に脈拍が到達しないため、まったく酸素飽和度が表示されないことがよくあります。冬の高齢者ではよく起こる現象で、「測定できないから酸素を吸わせています」と救急車内ですでに酸素投与を開始されている患者さんも結構います。

②爪の病気
爪に水虫がある場合(爪白癬)、軽度ならいいのですが、爪が真っ白になっている人ではなかなかパルスオキシメーターで酸素飽和度が表示されません。

③ネイル・マニュキュア
いつだったか、30歳代の女性の主治医になったときのこと。病棟から「〇〇さんの酸素飽和度が88%しかありません。酸素投与を開始した方がいいですか?」という電話がありました。気になって病棟に行ってみると、確かに酸素飽和度は88%を指していました。手が冷たくて測定できていないワケでもなさそうです。実はこの患者さん、ネイルをしていたのです。ネイルやマニュキアは、先ほどの爪の病気と同じく、爪から光を当てることができませんので、酸素飽和度の計算値が狂うことがあります。

④粗悪品
医療機器認証すらない廉価な粗悪品も出回るようになりました。私も外来患者さんが持っているパルスオキシメーターを一度つけてみたのですが、酸素飽和度が87%でした。呼吸内科外来をしている主治医が呼吸不全ってどういうことでしょうか(笑)。
パルスオキシメーターは、本来、精度などが担保された認証が必要な医療機器であり、製品には認証番号が付与されます。また販売にも資格が必要で、都道府県の許可を得た医療機器販売業者しか取り扱うことができません。残念ながら、この認証番号が無断で使い回されている状況があります。
値段が全てではないですが、安価なパルスオキシメーターは、精度が低いです。息切れがまったくないのに低い数値が出ている場合、まずはその製品の性能を疑いましょう。

                                                                                               (ここまで引用)



◆以下記事によれば、米食品医薬品局(FDA)も、肌の色が濃い場合など特定の条件下では不正確として、パルスオキシメーターの測定精度に注意喚起している。



◆また、以下の医師ブログは、狭心症発作で使われるニトロや、一部の不整脈の薬を内服すると酸素飽和度(SpO2)が低くでることがあると指摘している。

                                                                                               

◆さらに、パルスオキシメーターを製造しているコニカミノルタの資料も、「誤差要因」をいくつか挙げている。ここまでで登場していないケースを引用する。


(以下引用)

●異常ヘモグロビンの影響
血液中には一酸化炭素ヘモグロビンやメトヘモグロビンなどの酸素運搬には貢献しない異常ヘモグロビンが含まれることがあります。2波長式のパルスオキシメータはこれらの異常ヘモグロビンの影響を受けます。

●色素の影響
血液中にカルディオグリーン、イントラバスキュラーダイズ、インドシアニングリーンなどの色素を注入している場合にはこれらの色素が赤色、赤外の透過光量に影響を与えます。
         
●激しい体動があるとき
測定値にノイズが入るため計算値に影響を与えます。体動に限らず、ノイズにより測定値の信頼性が低くなった場合には、パルスオキシメータは警告マークを表示します。

●周囲の光(照明灯、蛍光灯、赤外線加熱ランプ、直射日光)が強すぎる場合
パルスオキシメータは周囲光の影響をキャンセルする処理を行っていますが、光が強すぎる場合にはキャンセルしきれず誤差となることがあります。

●周辺の電磁波の影響
テレビなどの電化製品や電磁放射の多い医療機器を近くで使用しているとき、測定中に携帯電話を使用しているときなど、他の電子機器からの電磁波の影響により正確な測定ができないことがあります。

●プローブが正しく装着されていないとき
プローブが正しく装着されていない場合は、様々なノイズを拾うため正確な測定ができなくなります。
                
                          (ここまで引用)




◆ところで、以下記事にあるように、パルスオキシメーターの発明者、青柳卓雄博士は、昨年4月に亡くなっている。博士は生前、パルスオキシメーターがその簡便さのため広く一般社会に浸透したことを喜ぶ一方、正しい理解がないまま急速に広がっていることに強い懸念を持ち、最後まで研究を続けていたとのこと。



博士はどんなことに懸念を持たれていたのだろう。同記事には、パルスオキシメーターが「致死的な隠れた低酸素症発見の切り札となりうる」と書かれている。患者が元気そうでも酸素飽和度の「数値」が低い場合、早めに捕捉すべきだと示唆しているように見えるが、「数値」が低くても健康でいられる人を不必要に病人扱いしてしまう可能性は考えられないだろうか。




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