【雑記】父親との禍根、そして呪縛

 タイトルの通り楽しい話ではない。が、多分思っているような悲しみに満ちた話でもない。

 わたしの父は大層子供に興味がない。
 そしてとてつもない男尊女卑の男である。弟にはしこたま目をかけていたが、わたしはしこたま無視され続けた。これが教師だというのだから世も末だ。
 父に虐げられた記憶しかないので教師がかなり嫌いである。世の先生方、ごめんなさい。

 まあ、ともあれ父はわたしに多くの呪縛を植え付けた張本人である。母は母でそれなりにわたしを呪縛しているが、そも親に一切の呪いを刻まれず生きている人間なぞこの世にいないだろうし、母の方については「それはそれなりにやっていくしかない」といった範疇だ。

 で、その呪縛の幾らかに「買い物」がある。

 父はわたしに一銭たりとも遊興費を与えたことがない。100円のお菓子ですら買ってくれたことはなく、「後で返せ」と迫ってくる。
 クリスマスプレゼントも父からもらったことは一度もない。サンタになってくれたこともない。曰く「サンタをやっても俺は感謝されないから」だという。

 だというのに、わたしの買い物に死ぬほど口を出す。
 スマートウォッチを買えば「女の腕にはでかいな」と言うし、新しい服を買えば「幾らしたんだ?」「そんなにすんのか」と笑う。
 最初のうちはキレていたのだが、暖簾に腕押しするのも徒労なので、最近は無視している。

 ただ、幾ら無視しているといっても憂鬱である。
 新しいキーボードを買い、新しいパソコンを買い、モニターも買った。作業スペースを整えるために机を買ってマウスを買ってゲーミングチェアを買う。
 全てまあまあお得に本当に欲しいものを手に入れている。楽しいことだ。その後のモンハンも含めて心底楽しみにしている。それは事実だ。
 ただ、必ず「また何か言われるだろうな」という重い気持ちが頭をよぎる。別居状態の今もそうだし、何より一人暮らし中でさえそうだったので、この呪縛からは逃れ得ないのだろう。腹が立つ。
 パソコンもキーボードも「そんなに良いのが必要か?」と鼻で笑われるのだろうな。傷付くほどの興味関心はないが、興味も関心もない相手に茶々を入れられると煩わしくてかなわない。必要かどうかはわたしが決めるんだよ。

 「一括で買えないものは家以外買わない」という信条を掲げているが、これも分割にすると父が一日たりとも待たずに(それどころか期日前に)今月分を請求してくるから、分割に嫌な思い出が染み付いているせいだ。
 なお父は自分が分割で支払わなければいけないものは幾ら催促しても渡して来ない。それどころか「しつこい」と怒り始める。お前だお前。
 実際にはクレジットカードで勝手に決済されるだけで、特段こちらがアクションをしなくてはいけないこともないだろうに、その面倒さを思い出して尻込みしがちだ。

 父は人の気持ちを折ることしか言わないので、断捨離も笑っている。母とわたしが「片付いたね!」「すっきりしたね!」と喜んでいるところに「全然片付かねえな」と割って入る。
 生憎とその程度で折れてやるような可愛げのあるタイプではないので、全て無視して片付けている。

 楽しい買い物がしたいと思うときと、「まあこれはこれで節約にはなるか」と思うときがある。
 三歳の頃には既に父に見切りをつけていたので、今も特別苦しんでいるわけではない(沸き上がるのは純然たる面倒さと怒りのみである)が、このところ大きい買い物が続いて憂鬱が増してしまった、という話だった。

いいなと思ったら応援しよう!