【ガジェット】Realforceとお友達になって半月

 もうね、抱いて寝たい。
 大好きなものを布団に引きずり込みたくなる感情は割とオタクに普遍的なもののような気もするが、ともあれわたしは「抱いて寝たいくらい好き」の枠にRealforceを追加した。

 新し物好きと一風変わったいわゆる変態ガジェットに手を出したがる性質が悪魔合体を起こした結果、「新しいガジェットを使い慣れるまで」に感情の高まりのピークを得る人間になった。
 ここが終わると普段使いのものになる。おおよそ半月ほど。そうなると買った直後から続いた過大評価の傾向は落ち着き、感情的な評価フェイズから分析的な評価フェイズに移行する。

 まあ、つまり、半月経ったのでRealforceへの感情も落ち着いたはずなのだ。落ち着いた結果布団に引きずり込んで一緒に寝たいくらい好きになった。もうダメかも。

 ちょちょっとプロットを立て、さあ思い付いたところだけでもメモがてら書いておくか、とキーボードを打ち始めたが最後、500字は気づけば1000字になり、1000字は気づけば2000字になる。
 あと500字くらい書けそうだし書いておくか、と思い、書いてみたら3000字になっていて依頼達成。こんなのを繰り返している。
 あり得ない速度で仕事が進む。最近はもう思う存分タイピングしたいから早く長文の仕事が入らないかと考えているし、このキーボードで文章を書きたいがゆえにネタを出そうと必死になっている。なんなら「今の時間からRealforce触っちゃったら寝られないからやめとこう」と自制さえしている。
 目的と手段が入れ替わり、わたしの生活は脳が産み出すオリジナルストーリーではなくRealforceに支配されようとしている。怖い。何だこのキーボード。

 仕事の後など何も思い付かないからキーボードに触れない日さえあったのが、今はむしろよく触る。職場の絶妙に打ちづらくてストレスが溜まるメンブレンから解放されてRealforceを打つと大変幸せな気分になるからである。
 Realforceを手にしなければ存在しなかったストレスをRealforceを用いて解消している。何だこのキーボード。煙草?

 面白いのが、無我夢中で書き上げた原稿を友人に褒められたことである。曰く「文章の密度が増した」そうで、面白いものが書けるようになったらしい。キーボード変えただけで。
 実際に「お! この文章はいいかも!」と思えるようなお気に入りフレーズが出てきやすくなっているというか、会心のフレーズがつるつる出てくるようにはなった気がする。キーボード変えただけで。
 文章を司るのはわたしの言語野などではなく、本当はキーボードだったのかもしれない。どういうこと?

 ともあれわたしの生活の可処分時間は大幅に増えた。パンタグラフに二度と戻れない危惧を抱きながら、わたしは今日もRealforceに愛を囁いている。
 どうしてこんなことに。でも幸せ。

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