見出し画像

不動産の仲介手数料は高いのか?

定期的にネットでは不動産の仲介手数料が高いと話題になりますね。
1億円の物件を売ったり買ったりしたら300万円フィーが発生します。そんな仕事してねえだろとエンドの方が憤る気持ちはわからなくはないです。
不動産の取引を生業としているプロは仲介手数料については必要経費として割り切っていますが、それでも隙あらば減額しようとします(「プロ」の属性にもよりますが)。そんな上限3%の不動産仲介手数料についての私見です。まあ業界の中のひとなので業界よりですが。値切り方(という程のものでもないですが)も一応書きます。

値段は需給で決まる。

仲介業者にも色々コストがかかってる!とか需要者側のベネフィットがそんなにない!とかはみんなポジショントークです。
まず物事の値段は需要と供給で決まるということを思い出しましょう。キンキンに冷えたかき氷は砂漠では高値で売れますが、北極では売れないのです。
需要と供給を考えるのに仲介が絡むとややこしくなるのでまず「不動産そのもの」について考えてみましょう。イキってファイブフォースに分解してみます。

①売り手の脅威:すでに所有している不動産を売る場合、「売り手=サプライヤー」は存在しないので、脅威はありません。しいて言えばレンダーになるかもしれませんが、もう借りている状態なので細かいことを抜きにすれば借りてる分返せるだけ高く売れれれば何もいってきません。

②買い手の脅威:これは売ろうとしている不動産の魅力次第です。誰でも欲しがるような素敵な不動産であれば「買い主は他にいる」状態なので、別に買い手は怖くないです。特に事業用不動産の場合、自分が欲しいものはだいたい他の買い手もほしいので、買い手間の競争が激しく不動産所有者が優位になります。

③代替品の脅威:ここも不動産の大きな特徴となります。一つとして同じ不動産はありません。個人の居住用不動産の場合は似たような物件の値段に引っ張られることにはなります。事業用不動産の場合は買うまでに色々調べたりするし基本プロは買い続けることになるので、代替品は正直ないという感じになるかと思います。

④競合他社の脅威:不動産の場合は「代替品の脅威」に吸収されます。

⑤新規参入の脅威:不動産の場合はこれはあまり論点になりません。将来的に供給が増えるとかはあるかもしれませんが、「代替品の脅威」の範疇です。

ざっと記載しましたが、まとめると「一つの不動産に対して複数の買い手が殺到する。よって一般的に不動産所有者の立場が強い」というのが不動産取引業界の構造です。
こと不動産取引においては別にお金持っていることは偉くないのです。買うためのお金を引っ張れることは取引するための必要条件でしかありません。不動産持っている人が最強なのです。地主になりたい
※もちろんいろんな要素で立場逆転するケースもありますが。

仲介業者のパワーの源泉はなんなのか?

あなたが気に入った物件があったとします。でも3%の手数料は払いたくない。そしたら手数料を減らすように交渉してみましょう。どうせ3%は上限です。話し合いで折り合いつけばどうとでもなります。さてどうなるでしょう?
思い出してほしいのは「不動産の買い手はいっぱいいる」です。仲介業者には媒介契約を通じて不動産のパワーが乗り移っています。特に専任の場合その特徴は顕著になります。ガタガタ言ってくる買い手以外にもほしい人はいっぱいいるのです。金払いのいい人に売るだけなのです。

供給者のコスト 需要者のメリット

不動産のパワーに頼ってるだけでなんもやってないじゃないか!!と憤りたくなる気持ちはわかります。
レインズ開放しろ!と叫びたくなる気持ちもわかりますが、不動産はスーパーに並んでいる食品とは違うので、所有者が「売るぞ!」となって商品化されるまでにもいろいろ過程があります。事前に整理が必要なことも多いです。レインズに乗っているのはその前処理が業者によって終わったものだけです。
また、レインズもお金かかってるんですよね。一生に一回の不動産取引のために国民全員でシステム維持費用負担したいですか?
そもそもレインズに乗っている物件が不動産のすべてという幻想はあまりに稚拙です
物件そのもののリスクはわかりますか?不動産の売買契約書作れますか?民法/都市計画法/建築基準法/税制そのたもろもろ把握できてますか?仲介入れればミスがあってもそいつに補償してもらえます。
売りたい・買いたいといってきた人がヤ○ザだったらどうしますか?うまく離脱できる自信はありますか?
より自分に有利な条件をひっぱるための駆け引きのやり方わかりますか?

とまあ、需給のパワーバランス以外のところでも、見えないところで仲介業者はいろいろ苦労しているし、需要者側もいろいろ恩恵は受けてたりするわけです。

仲介手数料を値切るには?

とはいえ、高えと思う気持ちはよくわかるので、自分が手数料削りに行く場合はこんな感じかなというのをざくっと。

売主サイドの場合、物件にもよりますが正直別に満額払う必要はないと思います。専任を人参としてぶら下げて複数仲介競わせればある程度は下げられると思います。仲介業者を選定する前は不動産のパワーはまだ売主にあります。
ただ居住用住宅だと正直取引サイズが大きくないのでそれこそ仲介業者のコストの問題もあるのでゼロまで下がるかは怪しいですが。

買主サイドの場合は諦めるしかないかなと思います。気にいった物件を手数料でガタガタ言っているうちに他の人に取られるリスクを背負ってやる分にはいいと思います。あまり人気ない物件だったり一般媒介で業者側もなんとか自分の客で決めたいと思っている場合はチャンスはあるかもしれません。

あとは概ね経済条件が合意できた後に仲介業者の調査不足などで出てきた物件の瑕疵があればそれは手数料交渉申し入れてよいと思います。(やりすぎて話壊れても責任はもちませんが)

何回も不動産取引をしないエンドの場合、相手方or仲介業者が「引っ込みがつかなくなった」タイミングで手数料交渉仕掛ければ値切れる可能性はありますが、まあ個人的にはおすすめはしません。自分の良心を売ったお金だと思ったらよいかと思います。また、状況によっては訴えられます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?