天地初発(アメツチのハジメ)
この宇宙は、どのように生成し発展してきたのでしょうか。世界と神と人間は、一体どのように誕生したのでしょうか? 大宇宙の活動に「根源」があるとすれば、それは一体何でしょうか。
『古事記』冒頭には、アマノミナカヌシの神という宇宙の「本源的中心」を司る働きがあり、それが陽の働きと陰の働きとなって「活動力(ムスヒ)」を生み、見事に発展していって大宇宙が成立したと記されています。
『古事記』冒頭を一言超訳すると、
人間誕生の原点を知って、
地球をさらに立派な星に高め、
宇宙進化(修理固成)を担う。
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ここを紐解くと「日本の心」が
よく表わされているので丹念に触れておく。
アマという大宇宙を捉える心、
ミナカという天地のはじめ
陰陽の根源を中心として尊ぶ心、
ムスヒという生成・創造の心、
陽陰ムスヒの神という調和バランスの心
ウマシアシカビヒコヂという成長発展の心
「修理固成」
アマツ神から天命を授けられたという
宇宙と人間の一体心、
人間には尊い役割があるという
人間肯定の心、
オホゴトヲシオという
大事業を推進する前に
決意(目的の明確化)する心だ。
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この日本神話の記述によれば、宇宙を生成発展させる力は、宇宙の中にあるということになります。宇宙の外から力が加わって宇宙がはじまったのではなく、宇宙自体に宇宙を成立・成長させる働きや作用が具わっていたと。
我々の祖先は、この森羅万象を生み成す目に見えない働きを「カミ(神)」と感得したのです。これが仏教や一神教が流入して来る以前の、我が国元来固有の世界観であり、古代人の感性です。
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つまり宇宙自身が自己を材料として自存しているのであり、宇宙の働きがそうであり、創造者がそのまま被創造物として現われているのです。
しかし、自己を離れて、またこの宇宙を離れて、他に外から何か「神(God)」と称するものがあるように誤って考えることが少なくありません。この第一ボタンの掛け違いがこそ、現代人の迷信であり、誤謬の根本原因なのです。
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この「宇宙自身が自己を材料として自存している」というのは、宇宙に必要な物は、最初から宇宙に具わっているという意味です。目に見えない「宇宙の働き」はもとより、宇宙を構成する上で必要となる一切の質量に至るまで、はじめから具わっていたのです。
そうして、宇宙の創造主はそのまま宇宙の被創造者となっています。宇宙を生成させる力と、生成される宇宙という存在は、不二ではなく(二つではなく)同一であるということになります。
ですから、宇宙の創造主は宇宙を創るだけ、創られる側の被創造者はただ創られるだけ、というのではなく、そもそも両者は融合一体なのです。東洋思想が「天人合一・梵我一如」を基本とし、我が国が「”神我和道”の神国」たる所以はここにあるのです。
『古事記』の封印を大和言葉で紐解くと、こういった真実が明らかとなります。日本文化に一貫した何かしらの伏流を感じており、それが日本の再生と世界の建て直しの指針になり得るのなら、今その水源を浮かび上がらせることが肝心なのです。