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有彩色の人生
今日は一段と寒い。
冬かと見まごうような気温に、パラパラと雨が降り、さながらロンドンの冬景色といったところか。
私は昨日発電機(オルタネータ)の修理を終えたばかりの愛車アスカで、いつもの道を職場に向かっていた。
プス…プス…と"ぐずる"調子の悪い燃料ポンプをアクセル半開きで起こしながら、青梅街道から荻窪病院を抜ける。
そうして有賀園ゴルフの前を左に折れると、そこはもう環八井荻トンネルである。
井荻トンネルと、そこに接続する練馬トンネルといえば、一般車のドラッグ・レース会場として有名だ。その開催頻度はあまりにも高く、上下線共にネズミ取り、移動式オービス、覆面パトカーと、警視庁交通課のフルコースが頻繁に待ち構えているほど。
私も過去、覆面に追われかけた経験から、この道ではあまり飛ばさないようにしている。
とはいえ、このトンネルは生活道路としての一側面も備えていて、制限速度からかけ離れた低速で走る車も少なくない。
今日も、時速40キロの低速で走る現行のマツダ フレアがいた。私は捕まりたくないし、時間にも追われていなかったのでそのマツダにのんびりとついていく。
だが、井荻トンネルから練馬トンネルへの接続部、ちょうど二車線区間へと切り替わったとき、突如背後から凄まじい殺気を感じた。
バッチリ見開いたハロゲンランプが二灯、見慣れない三角形のつり目、すごい勢いでウインカーを焚きながら、こちら目がけて突っ込んでくる…!
「なんだ?!」
そう思った刹那、前を時速40キロで走っていたマツダ フレアが右車線へとレーン・チェンジする。
それはいけない…!
心の中でそう叫んだが、殺気を帯びたつり目のハロゲンはもうそこまで来ていた。
私の右手を、一瞬、有彩色の影が、通り過ぎた。
あまりにも一瞬過ぎてよくわからなかったが、前のマツダ フレアに追突する勢いで猛烈に煽るその姿を、しかと見た。
ホンダ ライフ JB1。
トルマリンブルーメタリック。
透き通るような水色の妖精は、3速オートマチックのギアをいっぱいに引っ張って、轟音と共に暗いトンネルのかなたへと消えていった____
〜今日の一台〜
ホンダ ライフ(JB1)
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ホンダ ライフ(JB1)は、1999年から2003年まで生産されたホンダの軽自動車である。美しいトルマリンブルー・メタリックはその中でも2002年以降のモデルに設定されていた。
短く見積もっても20年落ちの軽自動車であり、塗装の朽ち果てた個体が多い中、今回見た1台は非常に状態の良いボディであった。
その素晴らしい保存状態を見れば、わずか50PS余りの3気筒SOHCとひ弱な3速ATでも、"アツい走り"への期待が高まっていくに違いない。