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#小説
渋谷 on my mind(未完)
「店長〜、あれ、何て言うんすか?」
アルバイトのテツヤくんは、到着そうそう能天気な声を出す。
「何がよ?」
「なんか、クロップトTシャツにミニスカとかショーパンはいて、めちゃ分厚いソールのサンダルとかブーツとかの…」
アムラー? うっかり口に出しそうになった言葉を飲み込んだ。
まさか、そんな。いやでも、確かにあれからもう20年経っている。流行は繰り返すって言うけど、ここは池袋だ。しかも令和の。
1/3の激情な憐情(未完)
画面には、まだ垢抜けない女の子がギターを抱えて歌っている。
見るも耐えない、聴くも絶えない。
でも、その瞳は今では眩しいくらいにまっすぐだ。
「なんで、まだこんなものとってんのよぉ……!」
嬉し涙か悔し涙かわからない。
タカシは、彼氏としては最低だけど、ファンとしては最高
奥様は乙ゲーライター(未完)
小さな肩が、腕の中で震えた。
「んっ……」
「ご、ごめん、強かった?」
「大丈夫、今の反応もネタになるから」
「ええっ?」
スルリと抜け出すと、妻はキーボードに向かった。
ごく普通の俺達はごく普通の恋をし、ごく普通の結婚をしました。 でもただ一つ、違っていたのは、うちの奥様は乙女ゲームのライターだったのです。
ようこそ妖怪ホスピタル(未完)
鏡の中、緊張を隠せない両頬を小さくはたいて、ナースセンターへ向かう。いざ、初出勤だ!
「これがあなたの担当する患者様ね」
師長は早速カルテを渡してくる。
「垢舐めさんは腹痛を訴えてCT撮影、腹水が認められたため一昨日から入院、こちらの塗り壁さんは……
森林戦隊ショーナンロケッティアズ(未完)
勝敗は、今まさに決しようとしていた。
醜く顔を歪めて、敵を睨みつける。
「こんなところで、お前なんかに……」
これじゃまるで、これから倒される悪役のセリフだ。
いや、待てよ。俺にはまだ、これが残されていたんじゃなかったのか。
ポケットには、昨夜宇宙人からもらったスマートウォッチが入っていた。
メタバース・デイ(未完)
Ctri+A、Ctrl+X、Ctrl+V、Ctrl+……。
機械的なキーボードの音だけが響く。
(押しの強い人は苦手だ……)
なんでこの作業を引き受けてしまったのか、それは自分の押しが弱いからだ。
と、雑念が、正確性を期すはずの指を滑らせる。ディスプレイが青く染まる。
(しまっ……え?
四季のない国(未完)
ああ、またこの闇だ。目が覚めてもまだ暗い。頭の中ではこれは夢だとわかっている。じっとりと、湿気と体温を含んだかのような闇。
どこか遠くからバミーヘンの匂いが漂ってくる。娘の好物だ。俺の帰りを待っててくれるのだろうか。あんなに小さかった娘も、もう料理ができるようになった。
現実を諦めたら、少女に愛されてしまいました(未完)
トンッ。
エンターキーを押して、長く一息をついた。
「終わった…できたぁぁぁぁぁあ!」
納期ギリギリの2万字のデータ。ゲームのシナリオだ。
(あ、なんかほっとしたら急に眠気が……。〆切終わったら冷蔵庫の整理がてらボルシチでも作るつもりだったんだけどな……)
カーペットに正座したまま、視点が天井を仰ぎ背面の壁まで流れてゆく。そのまま私は意識を手放してしまった。
GMの憂鬱(未完)
「あっ、まだ集まってない……間に合うかな?」
マーダーミステリーにはまって数年、ゲームマスターもちょこちょこやるようになってもう半年。俺はちょっとした問題を抱えていた。
開催ギリギリにならないと募集定員にならないのだ。
「やっぱり都内まで出ないとなのかな~? それか…
その声に(未完)
その声に導かれて、ここまで来た。
その声に導かれて、遠い谷を越えた。空だって飛べた。
心も体もぼくの自由だ。
その声は、いつも、直接ぼくの心に届いてくる。
けれど、その声にはまだ名前を呼ばれたことがない。
まだ名前を呼んでくれない、その声に向かって、ぼくは旅を続けていく
Le verset bleu(未完)
世界には青が溢れている。この世に光が生まれた時、それは青い光だったのではないかと思うほどに。
でも僕は、まだ本当の青を知らない気がする。
青、蒼、碧、あお…
それは空の果なのだろうか、海の底なのだろうか。
本当の青を、そんな句を探し出してみたいのだ。
ドワーフさんチは大家族(未完)
私の家は大家族。お父さんにお母さん、妹に犬、それにダンナと、牧場にいる馬たち。
馬の放牧の合間には、作曲したりゴーレムを踊らせてみたり。
「おねえちゃん、大変! シルバーシップが柵をぶち破って逃げちゃった!!」
「なんですって、あの破壊王! 追い込みかけてやるわ」
かわいいあの子(未完)
「はじめまして、こんにちは」
目の前の女の子は、少しはにかみながら微笑んでいる。
こんな子がいたなんて。もっと早くに気づいてあげればよかった。
これからも大切に、もっと可愛くしてあげるね。
「もう少し、リップつけてみようか」
鏡の中の女の子に、そっと微笑み返す
ぼくらと猿と春のうた(未完)
時折、夢を見る。ぼくたちが、まだ猿だった頃の夢。
普通なら、道具を手に入れて猿は進化した。前足を、手を使うことを覚えて、立ち上がった。
でも、夢の中のぼくには、最初から違うものがあった。音楽だ。自然の立てる音は、いつも歌となってぼくの頭の中に流れていた。