Webディレクター視点で考える Webサイト・アプリ制作でのジェンダー対応と背景
デザイン×エンジニアリング×ディレクションをベースに「新しい価値観」を創造するクリエイティブカンパニー、crage(くらげ)株式会社のディレクションチームです。
今回は町田が担当します。
9月も終わりが近づき、残暑を感じながら秋を待つ季節になりましたね。
皆さん、今年の夏の思い出はできましたか?
私はずっと行きたかった北海道のフェスに行く夢を叶えることができました!
crageでは社歴に関係なく7〜9月の間で3日間の夏季休暇を取得できるので、帰省や夏のイベントに使うメンバーも多いです。
ディレクションチームでは日頃から気になったニュース、記事、SNSの投稿等の情報を共有してチームとメンバーの成長に繋げるようにしています。
ジャンルは「ディレクション」に関わるものから、「デザイン」「マーケティング」「Webサービス」「トレンド」等を幅広くピックアップしてますので、ぜひご覧ください!
昨今、さまざまな分野で話題になっているジェンダー問題は、不特定多数の人が閲覧するWebサイトやアプリなどでも配慮を求められています。
しかし、何に対して・なぜ配慮を行うのか?を知る機会はあまりないかと思います。今回はWebサイトやアプリの制作にも関わりがある具体例を3つピックアップしてご紹介します!
また、今回の記事ではジェンダーに関する用語を多用しますが、それを覚えると言うよりは、こんな言葉があるんだな〜と思って読んでいただけたら幸いです。
Webサイトやアプリの制作において、何に配慮するのか?
SDGsの目標にもジェンダー平等が掲げられていることから、特にここ数年でジェンダーに関する社会の価値観や認識が変わってきたように思います。
その中で不特定多数の人が見るWebサイトやアプリなどの制作物も、時代の価値観に伴った対応や表現が求められており、主に2つの視点からの配慮が必要なのではないかと個人的に考えています。
1つ目は、性的少数派(セクシャルマイノリティ)への配慮です。
性的少数派は「LGBTQ+」と言う言葉で語られることが多く、ご存知の方も多いと思います。
「少数派」と表現されることが多いですが、左利きの人と同じくらい存在すると言われていて、さらに男女やLGBT以外の性のあり方も存在するため、実態はグラデーションのように境目なく広がっています。
▼ 誰もが持つ、性のグラデーションについて
パレットークさんのサイトやSNSはわかりやすくて勉強になるのでおすすめです!
2つ目は、従来の男性らしさ / 女性らしさに縛られない価値観・表現が求められてきていることです。
女性の社会的地位向上が未だに低いことに加え、最近では日本のジェンダーギャップ指数が対象146カ国のうち125位(2023年)となったことや、男性の生きづらさが社会問題に挙がってきたことで、社会における性役割(男性/女性はこうあるべきという考え、ジェンダーロールとも)に対して徐々に問題視する声が増えてきています。
▼ 男性の生きづらさと日本のジェンダーギャップ指数
他にも様々な視点があるかと思いますが、今回はこの2つを踏まえて説明していきます。
身近なところにも増えている「ジェンダーレスデザイン」
「ジェンダーレス」という言葉は世間に広まってきましたが、初めはファッションの分野で耳にすることが多いのではないでしょうか?
昨今ではユニクロなどの大手アパレルで男女兼用(ユニセックス)の商品が販売されたり、性的少数派かどうかに関わらず、ジェンダーレスなファッションを楽しむ人を目にするようになりました。
そもそも「ジェンダーレス」という言葉は、社会的・文化的な男女差がない状態や男女差をなくそうとする考え方のことです。
そのため、ジェンダーレスデザインは前述の性的少数派のためのものだけでなく、男 / 女どちらかに寄ったデザインではないため、多くの人が好むデザインにもなり得ます。
Webサイトやアプリなどの制作物でも、性別を限定しない商材や訴求で「ジェンダーレスデザイン」が採用される事例も出てきています。
▼ジェンダーレスなWebデザインに取り組んだ事例
▼ジェンダーニュートラルなフリーイラストの事例
性別を限定しないデザインを取り入れることで、より幅広いユーザーの獲得やジェンダーレス化の促進・理解増進に繋がる可能性もあります。
性別欄の「その他」「無回答」
Webサイト上の会員登録やアンケートフォームなどの性別欄で「男」「女」の他に「その他」「無回答」の項目を目にすることが増えてきました。
このようなエントリーフォームを制作したことがある方は、性別欄の方針をどのようにするか、考えたことがあるのではないでしょうか。
これを「LGBTに対する配慮」と捉える方が多いと思いますが、「LGBT」という言葉は性的少数派全てを包括する言葉ではありません。
それぞれの頭文字を紐解いていくと、
L(レズビアン)=女性の同性愛者
G(ゲイ)=男性の同性愛者
B(バイセクシャル)=両性愛者
この3つはどの性別の人を好きになるのかを示す「性的指向」のことで、
T(トランスジェンダー)=出生時に割り当てられた性別もしくは心と身体の性別が異なる人
のことで、自分がどの性別かを示す「性自認」に関する言葉になっています。
ここで配慮の対象となるのは、さらに2文字加えた「LGBTQ+」の「Q+」に該当する人です。
トランスジェンダーの場合は性自認が男女どちらかの場合が多いですが、男女どちらでもない性を指す「ノンバイナリー」や、中性・両性・不定性などの「Xジェンダー」といった第三の性が存在します。
性的少数派は世間的にまだカミングアウトしづらい環境があることから、多数派から「いないもの」と存在を否定されてしまっている事実もあります。
同時に、性自認に関わらず性別を開示したくない人もいるため、多様な性のあり方や価値観への配慮を行っていく必要があるのではないかと思います。
また、性別欄の選択肢を増やすだけではなく、欄をなくしたり任意記載にする例も出てきており、履歴書やエントリーシートの改変も話題になりました。
他にも、情報として性別を記載しないこともあります。
実際に私が携わっていた業務でも、あるサービスのLPから利用ユーザーの性別表記を除却する対応を行ったことがありました。
居住地や年齢、職業と共に性別が記載されていたのですが、これらの情報から利用ユーザーの属性はわかるものの、サービスの内容を踏まえても、申し込む際の判断材料にはならない情報でした。
性別を記載することでターゲットに訴求をリーチできる場合もありますが、本当に表記する必要がある情報なのか、改めて考えてみるのも良さそうです。
秘密の質問「母親の旧姓は?」
Webサイトやアプリの制作に携わっていると、偶然アクセスしたサイトの文章を読んで自分だったらどんな表現をするかを考えることがあります。
冒頭で書いたジェンダーギャップは徐々に見直されつつあるものの過渡期にあり、まだ社会全体には浸透しておらず、実際に業務や生活の中でもステレオタイプに寄った表現を目にすることがあります。
会員サイトの登録を行う際、パスワードを忘れた時に備えて秘密の質問を設定できるサイトがありますが、設問の1つにあった「母親の旧姓は?」を見て疑問を持ったことがありました。
姓を変更するのは女性が95%(2022年時点)というデータが出ているのは事実ですが、この設問だと「結婚して姓を変えるのは女性側」と限定してしまっています。
▼夫婦の姓(名字・氏)に関するデータ
実際には昔から男性側が姓を変更することもあり、現在も可能でもあるにも関わらず少数派のままなのは、日本の社会に家父長制の考えが根強く残っているためとも言われています。
▼家父長制と苗字について
ここで例に挙げた秘密の質問は、複数の設問からユーザーが任意で選択することが多いため問題になりにくそうですが、ジェンダーギャップの視点で疑問を持ってみると他にも見直しが必要な表現は色々なところに潜んでいるかもしれません。
最後に
今回はジェンダーをテーマにしましたが、社会で起きているさまざまな問題は、業界を問わず業務に直結していることも多いと思います。
誰もが納得するものを作るのは難しいことですが、起きている問題の根源を知ることで理解を深め、より良いアプローチを生み出していくことができればと思います。
今回もお読みいただきありがとうございました。
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