29歳杜氏の探究心が生んだ「精米」がわかる飲み比べセット「飛鸞」平戸の酒蔵を訪ねて
長崎県は平戸の「森酒造場」から「飛鸞(ひらん)しぼりたて日本酒飲み比べセット」がMakuakeにて限定発売されました。
精米歩合だけを変えた3種類で、実際にどう味が変わるのかが解るよう、29歳にして5代目杜氏の探究心が挑むお酒づくり。その裏側をお伝えします。
29歳の杜氏が挑む、好奇心と探究心のお酒づくり
皆さんはじめまして。森酒造場の5代目杜氏、森雄太郎です。
かつての交易の拠点として、またキリスト教伝来の地として知られている歴史的なまち、長崎県平戸市。この地に私たち森酒造場はあります。
森酒造場はおよそ130年の歴史があり、かつて「豊年」、今は「飛鸞(ひらん)」という日本酒を作っている酒造です。昨年2018年には挑戦作、白ワインのようにフルーティな日本酒「フィランド夢名酒」でMakuakeプロジェクトをさせていただき、おかげさまで多くの皆様にご支援をいただきました。
そんな私たちの今年の挑戦は「精米の違いがわかる、お酒がもっと面白くなる」飲み比べセット。
良い日本酒といえば、お米をよく磨いてつくられた大吟醸、というイメージがあるんじゃないでしょうか?しかしお酒の質を決めるのは精米歩合だけではなく、使っている原料や工程の些細な違いでも大きく変わってくるもの。
そのためそれぞれの要素が味にどんな影響を及ぼしているのか、市販のおさけでは純粋な比較ができるとは言えないのです。
そこで今回は「精米歩合」という要素に着目してみました。精米歩合だけを変えた3種類で、実際にどう味が変わるのかが解ることで、いつものお酒選びがもっと面白くなる、今までにない今回限定の究極の飲み比べをお届けします。
若手の杜氏として
少し私自身と、私たち森酒造場のことについてご紹介させてください。
平戸という地名は飛鸞島(ひらんど)から転じたという説がありますが、その名を冠した日本酒「飛鸞(ひらん)」をつくっているのが、私たち森酒造場。
森酒造場の長男として生まれた私は、幼い頃から自然とこの蔵を継ぐ気持ちでいました。とくに強いられたわけではないけど、小学生の頃は「社長になるのが夢」と言っていたくらい。高校を卒業してからは広島大学で6年間「醸造学」を学び、研究室が酒類総合研究所と連携していたこともあって、最新の研究に触れさせてもらいました。
とはいえ研究はあくまで研究。酒蔵を経営していく、そして杜氏としてお酒を造っていくからにはもっと現場のことを知らないと。そう思い大学院を卒業後、日本酒「浦霞」の醸造元として有名な、宮城県の株式会社 佐浦さんの方で3年間修行をさせていただきました。
しかし、私が幼い頃に前任の杜氏さんが急逝されてしまい、その頃森酒造場には技術者がいない状態でした。早く帰ってきてほしいという声もあり、地元に帰って本格的に蔵を継ぐことになったのです。
掃除とペンキ塗りから。
帰って改めて目の当たりにしてみると、森酒造場の状況は些か衝撃的でした。というのも、それまでいた修行先は大きな蔵。一日に何度も清掃作業があり、常に設備が清潔に保たれるなど徹底した生産体制がありました。
しかし当時、地元で消費するお酒造りの規模だった私たちは、蔵の清掃があまり行き届かず、建物も設備も老朽化が進んでいて暗い雰囲気。正直「これから本当にやっていけるのか」という絶望を感じたことを覚えています。
だから帰ってきてまず取り掛かったのは「掃除とペンキ塗り」。ゼロからのスタートというより、マイナスからのスタートという状況だったのです。
それからというもの少しずつ改装していき、今ではショップやイベントスペースを設けることができました。おかげさまで観光客の方々にも訪れていただいています。
平戸の酒造として
自分たちのお酒造りに本腰を入れられるようになって3年が経ちますが、ずっと考えていることがあります。それは、私たちの存在意義。
私たちは長らく、地元で楽しまれるお酒を造っていました。日本酒「飛鸞」も、まだまだほとんど地元の皆さんしか知らない銘柄だと思います。
しかしこうして130年にも渡りこの地で酒造を続けてこられたのも、平戸の風土や農業、そして助けてくださる人々がいたからに他なりません。だからこそ平戸の酒造として高めていきたい、もっと発信していきたい。
他の地域からお米や水を持ってきてお酒をつくることもできます。でも、せっかく地元のものを活かせる仕事をしているんだから、まだまだ地元のために出来ることはあるなと思ったんです。そこから人もお米も水も、100%平戸産にこだわった唯一のお酒づくりをはじめました。
その昔は農家さんでも、春から秋にかけてはお米づくりを、秋から春にかけてはお酒造りをしていたといいます。私の好奇心もあって、最近は自分たちでお米づくりからはじめました。
森酒造場は酒造にしては珍しく、水が湧く場所から離れた海沿いの街中にあります。そこで、1kmほど離れた山から専用の管をひくことで綺麗な水を使っているんです。
平戸は世界遺産の教会群や豊かな棚田などなど、とにかく景色の美しい場所。帰ってきたとき、改めてとてもいい土地だと思いました。でも年々人口は減少し、観光地としてもそこまで多くの方が来てくれているわけでもありません。
だからこそ、お酒を通してもっと平戸を知ってもらい、盛り上げることができるんじゃないか、そう思っているんです。
お酒づくりも、楽しくなければ。
私がこうしてお酒づくりをしているのは「好奇心」と「探究心」が源なんです。
お酒づくりは伝統的ということもあり、大きなチャレンジがしづらい業界だと思います。でも森酒造場でお酒造りに携るのは、基本的に2人だけ。この規模だからできることもあるし、自分がお酒づくりをするなら、楽しくありたいと思っています。自身のモチベーションのためにも「やりたいことをやってみるお酒づくり」を心がけているんです。
たとえば今度チャレンジしてみたいことは、古くから蔵に住み着いている「蔵つき酵母」からお酒を作ること。お酒の出来は酵母によってガラリと変わります。私たちの古い蔵の柱や梁にいる酵母からお酒を作ったらどうなるか、すごくワクワクしています。
やりたいようにやらせてもらっているものの、お陰様でいろんな方との出会いがあったり、助けていただくことも多々あったり、なんとかなってこうして続けていくことができています。だから次の代にも、お酒を楽しむ皆さんにもお酒づくりは本当に面白い、という思いは継いでいきたい。
これからも自分の気持ちに素直に、好奇心が尽きるまで毎年面白いものをつくっていきます。だから皆さんも単純な好奇心から生まれたお酒を、単純に楽しんでいただきたい。言い換えれば、みなさんと一緒にチャレンジを楽しみたい。それがちょっとでもお酒づくりや、平戸を盛り上げることにもつながると信じています。
「精米の違い」でお酒を楽しもう。
「飛鸞(ひらん)しぼりたて日本酒飲み比べセット」では、精米歩合だけを変えた3種類で、実際にどう味が変わるのかが解るよう、究極の飲み比べセットを限定発売いたします。
お酒好きなら、精米歩合と聞いて「知識として知っている」という方は多いと思います。精米歩合とは、いわば「どれだけお米の表面を削って磨くか」で、例えば普段食べる白飯は精米歩合90%、大吟醸はかなり削った40%ほど。一般的に精米するほど雑味を抑えたお酒ができるとされています。しかし逆に言えば、お米の個性がなくなっていくとも言えると考えます。
日本酒造りは、世界の醸造酒の中でも一番工程が多く、工程の些細な違いによって酒質はまったく違ってくるもの。使用される水、米、風土の違いでも酒質は大きく変わるため、市販のもので純粋に精米の違いを比較するのは難しいという実情があります。
そこで今回は「精米歩合」だけを90%、60%、30%と変え、その他の条件や環境はすべて一緒という3本を造ってみることにしました。純粋に精米歩合による味のうつり変わりがわかるという、究極の飲み比べセットです。今回使用するお米は、平戸産の食用米「にこまる」。お酒にはほとんど使用されない品種を使用しています。
■精米歩合 90%
ふだん皆さんが食べている白飯と同じ精米歩合です。通常この割合でのお酒は市場にないため、飲んだことのある方はそういないと思います。あくまで予想ですが、お米の旨みがふんだんに活きた、熱燗に合うものになるんじゃないかと考えています。
■精米歩合 60%
60%はベーシックな日本酒の精米歩合。いろんな方におすすめできる味となります。これを基準として違いを飲み比べていただきたいです。
■精米歩合 30%
大吟醸を名乗るためには、精米歩合は50%以下でないといけません。30%はかなり磨いたお酒になり、こちらも初めてのチャレンジ。とてもスッキリとしていて飲みやすく、日本酒を飲み始めた方、普段飲まない方、女性にもおすすめです。
「生酒」と「火入れ」の違いも
精米歩合の違いに加えて、熱を加えない「生酒」と、熱による殺菌処理「火入れ」を施した一般的なもの、2種類をご用意しました。
「生酒」はその名の通りフレッシュで甘みと酸味が際立ちます。開封後はお早めにお召し上がりください。
「火入れ」されたものは一般的に飲まれる日本酒で、落ち着いたまろやかなものになります。
飛鸞の搾り方は「槽しぼり」。圧力をかけすぎず、やさしく少しずつ絞っていく方法でつくっています。
お酒選びを、もっと面白く。
日本酒のボトルの裏に書いてある「精米歩合」。なんとなく「磨いたほうが美味しい」ではなく、この機会に市場に出回らない飲み比べセットで改めて知ってみてはいかがでしょうか。もしかしたらあなたの好みの精米歩合が見つかるかもしれません。いつものお酒選びがきっと、もっと面白くなりますよ。
ぜひご自身の晩酌にはもちろん、お酒の席での話題に、お酒好きへのプレゼントにどうぞ。
このセットでより日本酒を知って、お酒の世界をより深く楽しんでいただけたら幸いです!