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売らないお店が増加中?今、アパレル業界を中心に「物々交換」が注目されるワケ
2023年9月、アパレルブランド「ビームス」が、原宿で「モノを売らないお店」を期間限定開催したことが話題になりました。
「モノを売らない」という名前の通り、店内に商品は置かれていません。その代わり、着なくなった服を持ち込むことで、経年在庫や店舗の装飾に使われていた商品など、販売予定のない品と交換することができる「物々交換」を軸にしたキャンペーンです。
参照:「モノを売らないお店」が原宿に期間限定でオープン!モノとモノとの交換を通して、モノの価値やライフサイクルを一緒に考えませんか?|BEAMS
そんなビームスのキャンペーンと並び、最近アパレル業界を中心に「物々交換」が注目されています。今回はそんなトレンドに着目し、「物々交換」が再評価されている理由や、人気サービスについて紐解いていきます。
年間51万トンの衣類が廃棄へ。国内アパレル産業の大量消費・大量生産の現実
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参照:環境省 令和2年度 ファッションと環境に関する調査業務
近年、アパレル業界を中心に、環境配慮やサステナビリティへの意識が高まっています。しかし、現状を見てみると課題解決にはまだ至っていないようです。
環境省の調査によると、国内で新しく供給される衣類 81.9万トンのうち、その6割を超える51.2万トンが廃棄されているといいます。
一方で、リサイクルされる量は12.3万トンと、ほとんどが再利用されていないことがわかります。
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さらに、廃棄された衣類は、95%が焼却か埋め立てによって処分され、1日に焼却・埋め立てされる衣類の総量は1,200トン。その量は、なんと大型トラック120台分に相当する量なんです。
そんな衣類の製造から廃棄に至るまでの工程で排出されるCO2量は、国内だけでも推計9500万トンにのぼり、世界のアパレル業界全体の4.5%を占めるという状況。
これらの数字を見るだけで、衣類の生産や廃棄による環境負荷の大きさは、私たちの想像を超えていることがわかるのではないでしょうか。
過剰な生産と不必要な消費を食い止めるヒントは「物々交換」
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アパレル産業が環境負荷に繋がるとはいえ、好きなファッションを探求したり、お気に入りの服に身を包んだりすることは、私たちの生活を明るく彩ってくれるもの。
そんな人生の楽しみを我慢してまで、環境配慮を行うのは難しいという気持ちも否定はできません。
では、ファッションを楽しみつつも、どうすればこの状況を少しでも改善できるのでしょうか? 個人ができるアプローチは3つ挙げられます。
・買ったモノを長く使い続ける
・必要以上にモノを買うのをやめる
・中古品やデッドストック品を活用する
そんな3つのアプローチをすべて達成できるのが、今アパレル業界を中心に注目されている「物々交換」です。
リユース品が人の手を渡ることで、1つのモノが長く使われつづけるきっかけとなり、新たな消費を抑えられる。さらに、モノとモノを交換することで資源の無駄を最小限に減らすことができる。そんな「物々交換」のあり方が再評価されています。
オンラインサービスから実店舗まで。国内で人気の物々交換サービス
冒頭に、ビームスの「モノを売らないお店」をご紹介しましたが、その他にもさまざまな企業が「物々交換」の導入に取り組んでいます。
オンライン物々交換サービス「Chain(チェーン)」
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「Chain」は、ネット上で無料で物々交換ができるプラットフォームです。Chainの特徴は、渡す人ともらう人のペアが、必ずしも一致しないこと。
複数人で「ほしい」という意思表示を繋いでいくことで、アイテム同士で「ほしいの輪」が繋がり、物々交換が成立する仕組みになっています。
従来の物々交換は、交換するために交渉が必要で、双方の意見を一致させることが難しい点が課題でした。
しかし、Chainのシステムを使えば、利用者同士の利害関係が発生しないため、それぞれが不満なく物々交換を成立させることができます。
参照:みんなで連鎖!複数人で行う楽しい物々交換でリサイクル Chain
リサイクルショップ「ベクトル」の物々交換サービス
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リサイクルショップ「ベクトル」では、“ゴミバコのないセカイ“を目指して、世田谷上野毛店で、物々交換サービスに取り組んでいます。
家庭にある不要なファッションアイテムを持ち込み、店内から交換したい商品を選ぶと、その場でスタッフがトレード査定を実施。
トレード相場に達していれば、交換が成立し、希望した商品を持ち帰ることができるというサービスです。
トレード相場に達していない場合も、不足金を払えば交換を成立させることができるため、持ち込みも無駄にならず、ニーズにあった交換ができます。
参照:リサイクルショップ「ベクトル」が世田谷で物々交換サービスを開始!「0円お洋服交換コーナー」も新設し、“ゴミバコのないセカイ“を目指す
服を売らないポップアップショップ「CLOSETtoCLOSET(クロクロ)」
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服を売らないアパレルブランド「energy closet」では、不要な洋服を3着持っていくと、店内にある好きな洋服3着を持って帰ることができるポップアップショップ「CLOSETtoCLOSET(クロクロ)」を開催しています。
CLOSETtoCLOSETは、服が捨てられずに循環する社会を作るために、「クローゼット作り」をすることがコンセプト。
着なくなった服が手放されるタイミングと、新たに取り入れるタイミングが同時に訪れるため、クローゼットがどんどんアップデートされていきます。
心がときめくおしゃれな店舗デザインにもこだわりが感じられ、ただ洋服を交換するのではなく、「新たな洋服との出会い」を見つけられるという魅力から、Z世代を中心とした若者の人気を集めています。
家族や友達と一緒に楽しめる物々交換イベント「ぐるり」
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誰でも参加できる物々交換のオフラインの場として人気なのが、株式会社ワンピースが運営する物々交換イベント「ぐるり」です。
こちらのイベントは、指定された会場に集まった参加者同士が物々交換するというシンプルな内容で、子どもから大人まで誰でも楽しめるイベントとしてファミリー層を中心とした世代から支持を受けています。
「お金のない世界を、お金のある世界に混ぜ込み、愛の含まれた交換を実現する」というコンセプトは、物々交換を中心としたコミュニティを広げるきっかけになっています。
参照:https://onepeace-net.com/gururi.html
受け継がれたモノへの想いやストーリーが「愛着」になる
「お金を払えば、なんでも買える」という貨幣経済を中心に回る現代社会で、わざわざ物々交換に取り組むのは、時間も手間もかかります。
物々交換には、無駄な消費を減らし、資源を有効活用するうえで、大きなメリットがありますが、個人単位ではそんなメリットを感じづらいと思われる方もいるかもしれません。
しかし、物々交換によって得られるのは、モノだけではありません。
環境破壊に繋がる大量生産・大量消費の原因の1つとして、モノへの思い入れのなさが挙げられます。
インターネットやショップで簡単に安く手に入れられるモノは、すぐに流行を取り入れることはできても、「一生大事にしたい」と思えるような愛着は湧きにくい。新しいモノを買っても買っても満たされず、消費が加速するばかりです。
そんな渇望感に歯止めをかけるのが、物々交換で得られるモノに込められたストーリーや想いです。誰かが大事にしてきた想いはモノに託され、そのモノを「簡単には捨てられない存在」に変えてくれます。
貨幣経済から抜け出すことは難しいですが、生活に物々交換を取り入れることは誰でもできます。
不要になったものを手放し、自分の本当に大切にしたいものと交換する暮らしの習慣は、地球環境だけでなく、私たちの心や生活もサステナブルな状態にしてくれるはず。
まだ物々交換に挑戦したことがないという方は、ぜひこの機会に親しい相手や気になるサービスを通じて、物々交換を楽しんでみてはいかがでしょうか。
(取材・執筆=目次ほたる(@kosyo0821)/編集=いしかわゆき(@milkprincess17)
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