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2024年おすすめ新譜アルバムVol. 52: Chief Keef「Almighty So 2」

新譜アルバム紹介Vol. 52です。

今回紹介するのは、シカゴのラッパー兼プロデューサーのChief Keefがリリースした「Almighty So 2」です。

Chief Keefはシカゴ出身のラッパー兼プロデューサーです。

2000年代後半に登場。2009年にはミックステープ「UF Overload」を発表します。その後も2011年の「Bang」などのミックステープを精力的に発表し、2012年にはシングル「I Don't Like」がヒット。同年のミックステープ「Back from the Dead」とアルバム「Finally Rich」も話題を集め、一躍ブレイクを掴みます。以降は2013年の「Bang, Pt. 2」や2014年の「Back from the Dead 2」といったミックステープ、2014年のGucci Maneとのタッグ作「Big Gucci Sosa」や2015年のソロ作「Bang 3」など膨大な作品を発表。近年は2021年にアルバム「4NEM」をリリースしているほか、今年に入ってからも今作のほかにMike WiLL Made-Itとのタッグ作「DIRTY NACHOS」をリリースしています。また、客演やプロデュースでも活躍しており、これまでにTravis ScottやSkrillexなどの作品に参加。tobi louやLyrical Lemonadeなどシカゴ勢の作品にも多く客演しています。

時期によってスタイルは異なりますが、南部的なイナタさは一貫して持っています。エイ・フロウやルーズな歌フロウといった近年のラッパーの基本スタイルにかなり早い段階で取り組んでおり、後進に大きな影響を与えた重要人物として語られることも多いラッパーです。サウンド的には攻撃的なシカゴドリルやトラップなど。初期はラップのみでしたが2010年代半ば頃からプロデューサーとしても活動を始め、ラフな魅力を備えた強力なドリル~トラップ系のビートを作っています。

今作はエモーショナルな路線も織り交ぜつつ、攻撃的な曲を多めに聴かせるハードな傑作です。全曲に自身の名前がプロデューサーとしてクレジットされており、どこを切ってもChief Keefらしいラフで凶悪な味が出てくる濃厚な作品に仕上がっています。


1. Almighty (Intro)

DP BeatsとThe Legendary Traxsterとの共同プロデュース。

壮大なコーラスのサンプリングに機関銃のようなスネアを合わせた、ひたすらハードな曲です。主役の気合に満ちたラップも強烈。


2. Neph Nem (feat. Ballout & G Herbo)

プロデュースはChief Keef単独。

ストリングスやピアノの音にちょっとマーチングっぽい匂いのするドラムを合わせた、正統派シカゴドリルです。G Herboのパワフルなラップとも抜群の相性。Balloutのヴァースはやたら短いです。


3. Treat Myself

クラウドラップっぽいネタ使いの曲。

悲しげなピアノや美しい歌声のサンプリングが印象的なビートに、チンピラ感たっぷりなラップがエモーショナルに響く好曲です。ヴォコーダーも良い味を出しています。


5. Jesus (feat. Lil Gnar)

Mike WiLL Made-Itの名前もクレジットされた曲。

始まり方はエモーショナルですが、その後ボコボコとした低音や鋭い808、重厚なホーンが入ってきて一気に凶悪になります。二人のラップもパワフル。


8. Banded Up (feat. Tierra Whack)

今作のハイライトの一つ。

チープなストリングスやピアノを使った、緊張感漂うハードな曲です。シャウト気味の発声も交えたChief Keefのヴァースも強烈ですが、Tierra Whackのキレキレの高速ラップが凄まじい格好良さ。今年の暫定ベストヴァースです。


11. Drifting Away

Johnny JulianoとChief Keefの共作。

ドラムパターンもループもちょっとラチェットっぽさがあります。女声シンガーの歌も取り入れたややポップな仕上がりですが、しっかりとChief Keefらしいハードな佳曲。


12. Never Fly Here (feat. Quavo)

ギスギスしたシンセを鳴らすハードなシカゴドリル。

Quavoのコーラスと切れ味鋭いラップが、Chief Keefマナー全開のサウンドにも見事に馴染んでいます。時折入る不気味なピアノも印象的。


13. Prince Charming

ビヨビヨとしたベースを使った若干ミシガン風味のある曲。

哀愁漂う女声シンガーの歌やチップマンク・ソウルを取り入れていますが、全体的にはあまり哀愁系ではない不思議なバランスに仕上がっています。Chief Keefのぶっきらぼうなラップも見事。


16. I'm Tryna Sleep

歌声をサンプリングしたエモーショナルな曲。

美しいピアノやストリングスはそれだけ取り出せばベタですが、動物が喉を鳴らす音みたいな謎の音が中和しています。Chief Keefの力強いラップが刺さる良曲。

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