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ONENESS「Original ONES」全曲解説

東京のヒップホップコレクティヴのONENESSのアルバム「Original ONES」配信解禁のプレスリリース文章を担当しました。各種配信サイトで聴ける・ダウンロードできます。

東京・平和島発のヒップホップコレクティヴのONENESSは10月23日、1stアルバム「Original ONES」の配信を開始した。同作はCDで9月に先行リリースしていたもの。ラップやビート、アートワークなど全てをメンバーだけで完結させた作品だ。

ONENSSSはラッパーのMVTENstz7AWERAのほか、ビートメイカーのPhaze1992、DJのS2、アートワークほかを手掛けるクリエイターのSlit Eyedなど多彩な面々が揃ったコレクティヴ。異なる個性と実力を備えたラッパー陣のマイクリレーをトレードマークに、これまでにGREEN ASSASSIN DOLLARgrooveman Spotといったビートメイカーとのタッグ作や、コレクティヴだけで制作したEP「Slit EP」などをリリースしてきた。

これまでの作品では外部ビートメイカーのビートも使用していたが、今回リリースするアルバムでは全曲のビートをPhaze1992が制作。「自分たちだけで本物のヒップホップクラシックを作る」という気概が感じられるような、入魂の一枚となっている。これまでの作品はブーンバップを軸に語られることが多かったONENESSだが、今作ではそれだけに留まらず各曲でキャラクターが立ったビートを使用。先行シングル「コイントス」で聴かせたような南部ヒップホップ的なビートのほか、レゲエ要素を取り入れた「Monkeytime」、Gファンク的なシンセを使った「turbo」など様々なタイプの楽曲が並んでいる。「ヒップホップらしいヒップホップ」として定評のあるONENESSのメッセージをこれまで以上に個性豊かに聴かせる、一つのスタイルに限定しない広義の「トゥルー・ヒップホップ」を提示するような作品だ。

アートワークはSlit Eyedが制作。写真はメンバーのShota Kumagaiが担当した。なお、CDには16ページのブックレットも付属している。また、配信リリースと同日には収録曲「eazy tribe」Kento Moriが手掛けたMVも公開予定だ。

以下、ラッパー三人とビートメイカーのPhaze1992によるコメント。

最近ヒップホップを聴き始めたヤング達、週末家族で出かける車内、街でサバイブしている奴ら、最近日本語のラップはあんまり聴かなくなったOG'sまで。どんな人たちにもフィールできる瞬間があると思うから聴いてほしい。俺ら2024年にトゥルー・ヒップホップをボムするぜ。

MVTEN

「このアルバムを出した後、自分たちの景色がどう変わるか?」とワクワクしている。

全てがオリジナルのONENESSっていうコレクティヴを質感や温度感含めて色んな人に触れてもらいたいです。

stz

今回は本気モード。

同じ時代を生きるヒップホップが大好きなヘッズたち。この作品が誰かの人生の一部になることを心からOINORIしています。

これからもOriginal ONES!自分たちの音楽を探究し続けます。

7AWERA

ONENESSの代名詞となる、メンバーオンリーの完全オリジナルフルアルバムが完成した。

洋邦問わず、過去の本物のヒップホップと地続きの存在なのに、古臭くも説教臭くもなく、しっかり新しくて、どこか懐かしい。狭い肩書きに収まらない、純粋かつ本物の「ど真ん中のヒップホップ」。そこにいるのは俺たちであることを証明した作品。

人種や言語問わず、ヒップホップが好きな人にはぜひ聴いてみてほしい。ヒップホップやラップが好きでなくとも、音楽が好きな人ならどれか一曲ぐらいは好きな曲が見つかると思います。

あくまでこれは1stフルアルバムなので、ここからまだまだ続きます。これからも進化するONENESSをよろしくお願い致します。

Phaze1992

1. intro
2. Saturday Night Special 2
3. BOTTOU
4. College uniform
5. コイントス
6. skit
7. ONElap
8. eazy tribe
9. シュノーケル
10. 頭文字T
11. turbo
12. skit
13. Monkeytime
14. OINORI
15. sss


ONENESS関連作はこれまでにも何回か紹介していますが、今作が最高傑作だと思います。全曲解説します。


1. intro

リラックスしたインスト。

穏やかなギターやブリブリのベースを使ったビートで、1990年代Gというか、マイアミベースのアルバムに一曲だけ入っているメロウ路線みたいな味があります。Phaze1992のビートテープとも近いノリ。


2. Saturday Night Special 2

シングルリリース時にもプレスリリースを書きました。

勇壮なホーンがや軽めのドラムが印象的なビートに、三人の異なる個性のラップが乗る曲です。ラストにはスクラッチも。


3. BOTTOU

南部ヒップホップ的なドラムパターンの曲。

ラップ面でも三連フロウを多用しており、現行マナーで通しています。しかし、ビートの質感はサンプリングによるビートメイクが浸透し始めた頃のヒップホップみたいな趣があり、そのバランスが絶妙。


4. College Uniform

タメの効いたドラム、フルートやギターをチョップして隙間を活かして組み立てた曲。

MVTENのリリックに出てくる「ネオブーンバップ」なノリです。フックでのラップの被せに声質のキャラクターの立ち具合が改めて感じられます。


5. コイントス

こちらもシングルリリース時にプレスリリースを書きました。

カントリーラップ的なスタイルのエモーショナルな曲です。全員が素晴らしいラップを披露していますが、特に1stヴァースを担当する7AWERAが強力。


6. skit1

華やかなホーンをループしたインスト。

軽めのクラップをスネアに使ったビートは、少し2000年代のLudacrisあたりが出てきそうな匂いがします。喋り声のサンプリングも印象的。


7. ONElap

穏やかなメロウ路線。

ストリングスや甘酸っぱいシンセをループしたビートに、リラックスしたラップを乗せた曲です。フックで入るスクラッチの声ネタ選びにはニヤリとさせられます。


8. eazy tribe

ドリーミーなメロウ曲。

クールな歌声やシンセのループとタイトなドラムを使ったビートで、3MCのラップとスクラッチが楽しめるONENESSらしい曲です。フックは連呼系。


9. シュノーケル

太いベースが目立つファンキーな曲。

小気味良いギターやメロウなエレピも心地良いビートに、それぞれのアプローチでラップを乗せていく曲です。現行シーンでは珍しく4分50秒ある長めの曲ですが、それを感じさせない濃い味。


10. 頭文字T

1990年代前半くらいのNYヒップホップを思わせる曲。

生々しいドラムとメロウなエレピを使ったビートで、スキルフルなラップが堪能できる曲です。フックではMVTENによるProject Pat風のフロウも聴けます。


11. turbo

例の高音シンセを使ったGな曲。

柔らかでメロウな哀愁系の曲で、三人のラップにも哀愁が漂っています。フックではMVTENがオートチューンを使った歌を披露。


12. skit2

ファンキーなインスト。

コリコリとしたギターや弾力のあるシンセを使ったビートは、どこか懐かしさが感じられます。アルバムの流れでちょうどいい箸休め。


13. Monkeytime

ブーンバップの文脈でレゲエをやったみたいな曲。

裏打ちのギターと太くうねるベースが印象的なビートで、特にレゲエに寄せずヒップホップマナーを貫いたラップを聴かせる曲です。フックにアンセム感があります。


14. OINORI

ゴスペル的なピースフルなムードの曲。

美しいピアノと太いドラムを使ったビートに、ストレートなラップを乗せた曲です。歌声サンプリングのフックが優しく入ってきます。


15. sss

ゴリゴリのベースを使ったファンキーな曲。

甘いギターをループしたビートは、ブーンバップというよりも1990年代Gファンク作品に入っている硬派な曲のような趣があります。フックはスクラッチ。

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