2023年に紹介しきれなかった作品
2023年総括系記事のお知らせが二つあります。一つは12月25日(月)に発売されたカルチャー誌「Rolling Stone Japan」vol. 25です。2023年海外ジャズ総括記事を少しお手伝いしました。
音楽評論家の柳樂光隆さんによる徹底解説記事です。André 3000のアルバム「New Blue Sun」の話題もあるので、ヒップホップ好きの方も必読です。Web版でも読めます。
もう一つは、Mikikiの企画「マイベスト邦楽ソング2023」です。こちらは音楽ライター16人が2023年の邦楽の年間ベストソング10〜20曲のプレイリストを作るというもので、昨年に引き続き参加しました。
私のほかにはカルチャー誌「クイック・ジャパン」のBE:FIRST特集でも共に執筆した坂井彩花さんや、YouTubeチャンネル「てけしゅん音楽情報」が話題の照沼健太さん、今年新著「ポップミュージックはリバイバルをくりかえす」を刊行した柴崎祐二さんなどが参加しています。
私は「ダンス、メロウ&トラップ」と題し、GファンクやR&B、トラップなどの曲を選びました。先日ブログで出した年間ベストアルバム記事と地続きの選曲なので、あわせて是非。
今年も様々なリリースがあり、ブログでも119枚の作品を新譜レビューの枠で取り上げました。しかし、まだまだ紹介しきれなかった作品は沢山あります。そこで今回はブログで紹介しきれなかった作品72枚を紹介します。
海外ヒップホップ
Amin Payne「G-Funk the System」
Atmosphere「So Many Other Realities Exist Simultaneously」
DJ Drama「I'M REALLY LIKE THAT」
E-40「Rule of Thumb: Rule 1」
Lil Rob「All to the Bueno」
Nef The Pharaoah「4eva The Pharaoh」
Noname「Sudial」
Paradime「Period.」
Quavo「Rocket Power」
SCY Jimm「Highly Favored」
Trapland Pat「Professor Trap」
XL Middleton「The 2 Tight EP」
オーストラリアのプロデューサーのAmin Payne、西海岸のラッパーのXL MiddletonとLil RobはGファンク作品。どちらも日本人アーティストが参加しています。Lil Robのアルバムは全曲Fingazzプロデュース。ソウルフル&メロウでG好きの方にはたまらないと思います。XL Middletonには今年インタビューも行ったので、こちらも是非。
Atmosphereは穏やかなブーンバップやエレクトロ、ロック風味などが楽しめるカラフルなラップアルバム。メンバーのSlugへのインタビューでもこの作品の話を聞きました。
DJ DramaのアルバムもTyler, The CreatorやJeezyなど多彩なゲストを迎え、トラップ中心ながらブーンバップやミシガン系ビートもあるバラエティ豊かな作品です。
E-40とNef The Pharaohはベイ。E-40はハイフィ、ラチェット、Gファンクの王道スタイルです。Nef The Pharaohは2000年代リバイバル的な趣とユニークなビートが楽しい作品。どちらもベイらしいアルバムです。
Nonameはネオソウルとヒップホップが溶け合うような一枚。スポークンワードとラップの境界線を崩すような乗せ方も含め、J. Ivyの系譜です。Paradimeはブーンバップ。ハードな曲もありますが穏やかな曲に良曲が多いです。
SCY JimmとTrapland Patはフロリダ。現行ミシガンっぽいノリやリラックス路線、ソウルフル曲などが楽しめます。QuavoのアルバムはTakeoffソロ作を思わせるスペイシーな曲多め。後半のメロウな曲が特に良いです。
ヒップホップ以外の海外作品
The Commotions「Volume III」
Corey Ledet Zydeco「Médikamen」
Evian Christ「Revanchist」
Faith & Harmony「I Heard The Voice」
Jaszy Shavers「Voyage To Surrender」
June Freedom「7 SEAS」
Kiana Ledé「Grudges」
Maeta「When I Hear Your Name」
Marquis Hill「Rituals + Routines」
MJ Nebreda「Apera Mixtape」
Uninamise「FEAR FLEX」
The Commotionsはソウル、Faith & Harmonyはゴスペル。Corey Ledet Zydecoはザディコです。この三枚はジャンル横断型ではなくストレートな良さ。
Evian Christはヘヴィなトランス。Bladeeも参加しているのでヒップホップ好きな方も是非。FDMのUnimamiseもNYドリルとの共通点が感じられるので、ジャンルは異なりますがヒップホップリスナーも楽しめると思います。Marquis Hillはジャズ。こちらも曲によってはヒップホップ的に聴ける瞬間があります。
Jaszy Shavers、Kiana Ledé、MaetaはR&B。Jaszy ShaversはPolyester the SaintやSledgrenも参加しており、オヤGの方も悶絶必至です。しかし一押しはMaeta。R&Bファンの方は間違いなく気に入るであろう一枚です。
June Freedomはアフロビーツ。アマピアノやR&Bとも隣接するようなメロウなサウンドが心地良いです。MJ Nebradaはネオぺレオで、刺激的なビートとラテンフレイバーが楽しい一枚。Ms NinaやNick Leónも参加しています。
国内ヒップホップ
DSXTX & KAY DIEGO「SUMMA BREEZE」
FreekoyaBoiii「Dope Pack Vol.2」
FU-G「Passport For G」
grooveman Spot「Lie-Sense」
Huncho Fox「TEARS OF BLOOD」
LIL STANKY, ¥OUNG ARM¥, KaworuMF & DJ EZEL「F-TOWN FLOW」
MVTEN & MARBIE「REMIXIES」
Pitch Odd Mansion「The Mansion」
QUIZI A RHYME「ONE LOVE」
rkemishi「正夢」
t.kawada as PHOENIX「BIRDWATCHING」
YELLADIGOS「Y.F.F. EP」
YUNGSTAお仲間「ONAKAMATAPE:上」
Yvngboi P「Demon's Melody」
DSXTX & KAY DIEGO、FU-G、LIL STANKY, ¥OUNG ARM¥, KaworuMF & DJ EZELは国産G。grooveman Spotもメロウな曲が多く、トークボックスも飛び出すのでG好きの方も楽しめると思います。DSXTXにも今年話を聞いたので、こちらも是非。¥OUNG ARM¥もプレスリリースで関わりました。
FreekoyaBoiii、Huncho Fox、YUNGSTAお仲間、Yvngboi Pは現行のアメリカのヒップホップと同じ旨味がある作品。アトランタ系王道トラップやプラグ、ミシガン系などが堪能できます。rkemishiもブーンバップ色強めながらトラップの曲が良かったです。
MVTEN & MARBIE、Pitch Odd Mansion、QUIZI A RHYME、t.kawada as PHOENIXは大雑把に括るとブーンバップ。Pitch Odd MansionとQUIZI A RHYMEはちょっとGっぽく聴けるメロウ曲もあります。
YELLADIGOSはスムースなブーンバップやGファンク、トラップなどバラエティ豊かな作品。歌心、フリーキー、オーセンティックと異なる良さのあるラッパー陣の絡みも楽しく聴けます。なお、メンバーのPEAVISのソロ作のレビューも今年書きました。
国内オルタナティヴヒップホップ、フォンク、エレクトロニック・ミュージック
audiot909「JAPANESE AMAPIANO」
bringlife「BRINGLIFE THE MOVIE VOL.1 ~Return to Ofuna~」
Cold Rose & Arigato Mane「幻想流離」
Dyelo think「Sasakia charonda」
LIFELESS & ATSUKI「MIND SCREW」
soejima takuma「β」
Sonarr「Depth (Original Soundtrack)」
toulavi「peephole」
xiangyu & Gimgigam「OTO-SHIMONO」
xngb2 & karakusa beats「resort works」
6-SenS「2045 = LowAddictBeatSystem」
audiot909はタイトル通りアマピアノ。ラッパーやシンガーを迎えた曲もありますが、ヒップホップ/R&Bとしての良さとアマピアノの旨味を両立させる絶妙なバランス感覚は圧巻です。xiangyu & GimgigamのEPはエレクトロニックでダンサブルなラップ作品で、ここでもアマピアノ要素を取り入れた曲が聴けます。
bringlifeはクラウドラップをベースに、エレクトロニカ要素を強めたようなユニークな作品。soejima takumaもエレクトロニカですが、全曲でノスタルジックな声ネタが使われておりちょっとFriendzoneっぽくも聴けます。
Cold Rose & Arigato Maneはメンフィスラップやトラップの魅力と日本的な詫び寂び感が同居した一枚。絞り出すような冷たいラップも素晴らしいです。LIFELESS & ATSUKIはフォンクですが、ハードなギターをダイナミックに鳴らしたりとかなりカオス。発声のコントロールが巧みなラップも魅力的です。
Dyelo think、xngb2 & karakusa beats、6-SenSはインストヒップホップ。次の枠でも良かったのですが、エッジーなエレクトロニック・サウンドを求める方にもおすすめしたいのでこちらの枠で扱います。Dyelo thinkのビートテープは今年の邦楽ベストアルバムの一つ。緊張感と美しさが同居したビートは圧巻です。
Sonarrとtoulaviはエレクトロニカ~トリップホップ系の作品。この二人(とCold Rose)は新潟出身のアーティストで、方向性は異なりますがどこか通じるものがあります。Sonarrはラッパーとしての顔もありますが今回はインスト。逆にtoulaviは一曲ラップを披露しており驚かされます。
国内ビートテープ、ローファイヒップホップ、リミックス集
Blooky Jeeky「Starburst」
B.T.Reo 440「The Cosmic Fang」
Clickqnot「At Night」
CRAM「Angel Energy」
DJ KENTAROU「Back Mirror Ⅲ」
EVISBEATS「That's Life」
Forever Lucky「Recollection Of Drum」
GREEN ASSASSIN DOLLAR「NEVER BROKE」
JUNES K「JUN-21K」
KOHEI YOSHII & AHNAMUSICA「Inori」
mtkn「OCEAN」
ninomiya tatsuki「A journey to recovery」
OVERFALL「GOLDRUSH」
Tsunami Sounds & Japanolofi Records「Tokyo Chill Girl Vol.1」
Watasino「You are not alone」
9ues「Ihard」
Blooky Jeekyはメロウネスよりもハードボイルドな香りが際立つ一枚。美メロブーンバップにトラップ要素やシリアスなムードを注入したような、DJ KENTAROUの作品も印象的でした。CRAMの作品もブーンバップの妖しい魅力が強く出ています。インストだけではなくリミックスも収録。mtknはリミックス集的な側面の強い作品で、メロウなトラップやハウスなどを横断するSoulectionあたりに通じるサウンドが楽しめます。
B.T.Reo 440はスペイシーで空気で統一されたコンセプチュアルな作品です。ClickqnotとGREEN ASSASSIN DOLLARは、西海岸GやR&Bが好きな方も楽しめそうなメロウな仕上がり。OVERFALLと9uesもメロウですが、こちらはよりブーンバップ文脈の芯が感じられる作品です。
EVISBEATSは和なネタ使いの曲や田我流がラップする曲など変化球もありますが、基本は鍵盤が沁みる美メロインスト。KOHEI YOSHII & AHNAMUSICAは繊細で優しいローファイヒップホップです。KOHEI YOSHIIも所属するJapanolofi RecordsとTsunami Soundsのコンピレーションもローファイヒップホップですが、そのジャンルにも様々なタイプの曲があることがわかる充実作に仕上がっています。ninomiya tatasukiとWatasinoも同様です。
Forever Luckyはビートテープのマナーでスティールパンの演奏を聴かせるミュージシャンならではの旨味が出た作品。JUNES Kのフリーキーなサンプリングも強烈なインパクトで、ヒップホップらしい作品ですがあまり熱心にヒップホップを聴かない方も気に入ると思います。
国内R&B、ジャズほか
JASMINE & DJ Deequite「FAITH」
Potomelli「Hyper Lullaby」
reina「You Were Wrong」
SIRUP「BLUE BLUR」
ZIN「CURVE」
オリーブがある「Teatro」
挾間美帆「m_unit: Beyond Orbits」
3House「SWING A SOUL」
JASMINE & DJ Deequite、reina、SIRUP、ZIN、3HouseはR&B。と言ってもネオソウルやトラップソウル、Gファンク、アフロビーツ……などなど、様々なサウンドが展開されており、このジャンルの懐の広さが感じられます。
オリーブがあるも1990年代のR&B的な要素が強いですが、後半ではセルフサンプリングによるフューチャーファンクも楽しめます。Potomelliは歌モノのポップな作品。曲によってはヒップホップ要素もあります。ジャズの挾間美帆は13人編成バンドのm_unitでの作品で、ミュージシャンの演奏を活かしつつも曲としての良さが光る豊かな一枚です。
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