Hiatus Kaiyote「Love Heart Cheat Code」全曲解説
オーストラリアのソウルバンドのHiatus Kaiyoteのアルバム、「Love Heart Cheat Code」の解説を書きました。国内盤CDと日本語帯付きのLPに封入されています。
今回のアルバムは、複雑で要素の多い音楽性で知られるHiatus Kaiyoteがシンプルな方向性に舵を切った作品です。また、これまで数多くのヒップホップ作品でサンプリングされてきましたが、今回は逆にHiatus Kaiyote側が名曲の引用やカヴァーなどを行っています。解説ではこういった点の面白さについて書いたので、是非購入してみてください。日本語帯付きLPは新潟のレコードショップ「shabby sic ポエトリー」でも購入できます。
解説では曲単位では触れていないので、全曲解説します。
1 . Dreamboat
なかなか形が定まらないようなイントロ的な曲。
ハープにMelina van Leeuwen、ホーンにJimmy Bowmanとゲストミュージシャンを迎えています。Nai Palmの歌声の突破力は健在。
2. Telescope
クールなネオソウル系の曲。
The Temptationsの名曲「My Girl」の引用が自然に飛び出して驚かされます。ここでもMelina van Leeuwenが参加。
3. Make Friends
ループ感のあるベースで引っ張っていく曲。
ヴァースでの急下降するようなメロディの歌、ゲストを多く迎えたコーラスなども印象的です。ストリングスも美味。
4. BMO is Beautiful (feat. Niki Yang)
エンジニアでDJ Khalilの名前もクレジットされた曲。
モコモコとしたベースが効いた、シンプルでループ感のある曲です。短めで次の曲と繋がるようなインタールード的な品。
Melina van Leeuwenのハープに加え、Nikodimosのフルートもフィーチャー。
メンバーたちの演奏は比較的リラックスしていますが、Nai Palmの焦がすような歌声とフルートの絡みはかなり熱いです。一瞬「Ain't No Sunshine」風のフレーズも登場します。
6. Dimitri
骨太ドラムを少しタメて繰り出すブーンバップ的な曲。
キックの連打などサンプラー的なグルーヴも随所であり、かなりヒップホップっぽく聴けます。Nai Palmもちょっとラップのような歌い方を取り入れています。
7. Longcat
インタールード的な趣もある短い曲。
スペイシーなシンセや猫が喉を鳴らす音を使ったユーモラスな曲です。歌声の重ね方も印象的。
Taylor Crawfordが自作楽器「フレロ」を弾く曲。
繊細で優しいジャズやソウルの色が濃い曲です。チェロ的な使い方のフレロの美しさも絶妙。
ヴォーカルもリフもループ感の強い曲。
ギターの隙間にスネアが入っていくような作りは、ヒップホップっぽくも聴けます。後半でパワフル&ノイジーな展開もあり。
10. Cinnamon Temple
「Love Heart Cheat Code」の後半の展開を広げたような曲。
歌もサウンドもロック文脈に接近するようなエネルギッシュなもので、それまでのどこか穏やかな流れとは異なる魅力があります。細かく区切る歌い方やSEっぽいシンセが効いた後半が強烈。
11. White Rabbit
二つの曲を繋ぎ合わせたみたいな奇怪な曲。
シンプルでメロディアスな部分とノイジーでパワフルな部分が接続され、融合していくと思ったらまた離れていくような構成です。歌声の加工も見事。
12. Subete wa utsukushii
国内盤CD収録のボーナストラック。
タイトルからも伺えるように、収録曲の一つから発展させたセルフカヴァー的な曲です。ジャジーなインストでヴォーカル入りの曲とはまた違った良さですが、紛れもなくHiatus Kaiyote印。
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