健康デジタルサービスの取り組み
デンマークではデジタル化が進んでいると前にも書きましたが、健康分野では、どのような政策に後押しされているのか、またどのような具体的例があるのか、を紹介します。
政府、地方自治体連合、地域連合共有のデジタルヘルス戦略 2018-2024年
医療、福祉、健康の業務を行っている地方自治体や地域の指針として、政府と連合団体の策定したデジタルヘルス戦略があります。これによると、2024年までに、全国で安全でつながりのある医療、健康ネットワークを整備することを目指しています。この戦略では、デジタル技術を活用して、市民中心の医療サービス、市民の自主的な健康管理をサポートする事に重点が置かれています。また、地域ごとの取り組みも柔軟に対応し、医療の質を向上させることを目指しています。この戦略に後押しされ、デジタルヘルス領域では2018年から様々な取り組みが増えました。
Strategi for digital sundhed - Sundhedsdatastyrelsen
個人番号からデジタルIDへと進化
このような背景にはさらに、デンマークでは、もともと税金で医療費がまかなわれていおり、国民皆保険、そしてその管理には個人番号で一括管理されているということがあります。また、その個人番号に紐づく、デジタル署名も普及しており、銀行、病院、図書館、学校、職場など、正式な場面での署名はそのデジタル署名を通じてできるようになっています。署名はアプリを開いて、個人番号、暗証番号、さらに送信されてくる2ファクタ認証の番号をいれれば、完了です。
以下にいくつかデジタル化されている統合医療サービスの事例をあげます。
健康ドットデンマークでの記録閲覧
公的な医療ポータル「sundhed.dk」では、自分がかかった医療機関の記録や、担当医の診断などが一括して閲覧できるようになっています。ポータルは2003年に設立されており、現在では国民の間で96%の認知度を誇っているともいわれています。また、この運営組織は市民や医療専門家のために新機能を継続的に開発している機構ともなっています。
ポータルサイトの誕生時の目的は、既存および将来の医療関連情報とコミュニケーションを一元化し、市民と医療従事者のために単一の入口を設けること。公開以降、約年に4回、新機能やサービスが追加されており、サイトは時代とニーズに応じた改良が施されています。2019年にはアプリ版も登場し、ポータルと同様の機能を提供しています。sundhed.dkの技術基盤は強化され、コロナ禍では2020年3月から2021年3月の間に訪問数が379%増加。アプリのダウンロード数が600万回を超える中でも安定した運用を続けています。
Historien om sundhed.dk - sundhed.dk
患者さん手帳で検索
患者さん手帳、Patienthåndbogenは、わからない病気や自分の病気の症状が簡単に調べられるように工夫されたデジタル疾病百科事典です。上記の医療ポータルとともに、アプリ版も提供されています。
このサイトでは、病気やその治療に関する信頼性のある最新の情報を簡単に見つけることができます。医療イラスト、レントゲン写真、写真、アニメーション、ビデオなど2,000点以上のビジュアルコンテンツが提供されています。多くの記事には、関連する情報へのリンクも含まれています。コンテンツの製作は、広告による資金提供は受けておらず、商業的な利益から独立しています。120人以上のデンマークの専門医や一般医が担当しており、定期的に更新されています。各トピックは、その分野の専門知識を持つ医師や専門家と一般医が協力して執筆しています。また、編集者一覧では、各編集者の専門分野や職業、業界や患者団体との協力関係などを確認できます。
Om Patienthåndbogen - Patienthåndbogen på sundhed.dk
マイドクターで予約から相談まで
マイドクターアプリ、Min Lægeでは、緊急以外のホームドクターへの相談、予約作業ができます。また、処方箋の更新作業、自分のカルテ、子供のカルテ、予防接種や専門医への紹介状の閲覧、ビデオ通話での診察など、市民にとって便利な様々な機能もそなえています。アプリの一部の技術的なソリューションは、健康データ局が提供しています。マイドクターアプリは2019年にリリースされています。コロナ勃発の前でもあり、先見の明があったともいえると思います。
Min Læge-appen - Sundhedsdatastyrelsen
おくすり手帳で処方箋チエック
おくすり手帳、 Medicinkortetでは自分の処方されたおくすりの概要がみられるようになっています。処方箋を確認し、残りの受け取り回数も見ることができ、処方箋の更新を医師に依頼することも可能です。2016年にリリースされ、70万人以上の市民にダウンロードされているといわれています。
Ny app giver alle danskere let adgang til egen læge | Indenrigs- og Sundhedsministeriet (ism.dk)
Medicinkortet - sundhed.dk
それでも課題は
デジタル化のとても素晴らしい環境がととのっているデンマーク。それでも大量にあるヘルスデータの管理、公的機関内での情報の交換システムの改良、公共サービス開発上の商業ベースのアプリとの差別化などなど、様々な課題もあるといわれています。今後また別の記事で紹介しようと思います。