チェンジ・オブ・コントロール(COC)条項の典型的事例
チェンジ・オブ・コントロール(Change of Control)とは、企業や事業主体において「誰が支配権(コントロール)を握っているか」が変化することを指す概念で、主に契約書や法務・ファイナンス分野で用いられます。具体的には、企業の株式や持分の大半を買収する、支配的な議決権を取得する、合併や吸収を行うなど、経営を実質的にコントロールしている主体が変わることを広く指します。チェンジ・オブ・コントロール条項は、M&Aや投資契約、金融取引(ローン契約、社債のデント・コベナントなど)において重要な規定の一つとなっています。
以下では、チェンジ・オブ・コントロールの「典型的な事例」を整理し、どのような条件・状況で発生する可能性があるかをなるべく多角的に示します。なお、実際の契約や法律上は、当事者間で定める定義や閾値(株式の何%以上、など)によって変わりますので、あくまで一般的なパターンとしてご参照ください。
1. 株式の過半数の取得・移転による支配権の変動
既存株主からの株式譲渡
ある株主が過半数(または契約で定められた一定比率)以上の株式を新たな第三者に譲渡することで、支配権が移るケース。
例:A社がB社の51%の株式をC社に売却し、C社がB社を支配するようになる。
第三者割当増資などによる発行株式総数の変化
新株発行(第三者割当増資、株式交換、株式譲渡契約に付随した増資等)により新たな投資家が過半数の議決権を取得するケース。
既存株主の持株比率が希薄化し、結果としてコントロールが別の主体に移る。
転換社債や新株予約権の行使
転換社債(CB)や新株予約権(ワラント)が大量に行使され、行使した投資家や債権者が過半数の議決権を持つようになるケース。
表面上は株式ではなく債権やオプションであったとしても、行使・転換後にコントロールが移転することがある。
2. 合併・会社分割・事業譲渡などの組織再編による支配構造の変化
合併(吸収合併・新設合併)
吸収合併により存続会社が被合併会社を取り込む場合、存続会社側の大株主に支配権が集まる、または合併比率によって過半数を取得する。
新設合併により新会社が設立され、出資比率によって支配権が変わる。
会社分割(吸収分割・新設分割)
会社分割によって一部事業を切り出し、新設会社や他社に承継させる場合、その新設会社や承継先の支配権がだれにあるかによってコントロールが変わることがある。
事業譲渡
会社の主要事業や実質的な収益源を第三者に譲渡する場合、企業グループ全体の支配権の実態が変化する。
特に“主要資産または事業の全部もしくは重要部分”を譲渡することをチェンジ・オブ・コントロールと定義する契約も存在。
3. 取締役会・経営陣の支配権の変化
取締役会の過半数以上が交代
株主構成が変わらなくとも、取締役会のメンバーが大幅に入れ替わり、事実上の意思決定者が異なる主体の意向に従うようになった場合。
特に上場会社などでは、プロキシーファイト(委任状争奪戦)などにより取締役をすべて送り込み、経営を掌握するケース。
CEOや代表取締役の交代による実質的支配権の移転
株主総会における議決権変動がなくても、実質的に経営トップが交代し、その背後にいるスポンサー企業や投資家が経営をコントロールするケース。
組織上、取締役会過半数は変わらなくても社長やCEOが交代し、ガバナンス構造が変化する事例もあり得る(ただし法的には「チェンジ・オブ・コントロール」として扱うかは契約定義次第)。
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