Soilwork全作品をオススメの曲と共に紹介🇸🇪
1. In Dreams We Fall Into the Eternal Lake (1997年、EP)
既に音楽性はメロディック・デス・メタル。後に1st『Steelbath Suicide』に収録される曲も収録されている。ギターのクリーントーンの使い方が、後年とは全く違っていて面白い。また、ビョーン・ストリッドのヴォーカル・スタイルも後年とかなり異なり、この時点ではAt the Gatesのトーマス・リンドバーグを彷彿とさせる。
2. Steelbath Suicide (1998年5月、1stアルバム)
Soilworkはキャリア全体を通してメロディックデスメタルを貫いているが、後年のようなクリーンヴォイスもなく、攻撃性に特化している点がこの頃のスタイルである。スラッシュビートで疾走しつつ、リフワークで所々変拍子を入れたり、ソロで泣きを入れたりと、尖ったイメージだ。
3. The Chainheart Machine (1999年10月、2ndアルバム)
収録曲の大半がスラッシュビートの疾走曲という、攻撃性では随一の作品。Soilworkのディスコグラフィー上で最もロックな作品だろう。ヴォーカルパートはまだクリーンヴォイスが導入されてはいないものの、サビとそれ以外のパートのコントラストが効いているので変化の兆候を感じられる。
オススメ曲:「The Chainheart Machine」「Millionflame」「Bulletbeast」
4. A Predator's Portrait (2001年2月、3rdアルバム)
ヴォーカルパートにクリーンヴォイスを導入した最初の作品。リズムにキレのあるデス声は歌心があってクールだ。透明感のあるキーボードの活躍もあり、楽曲のバリエーションも順当に豊富になってきた。サウンドプロダクションが分厚くなり、グルーヴ感と疾走感をバランスが素晴らしい。初めて聴いたSoilworkのアルバムなので思い入れが強い。
オススメ曲:「Needlefeast」「Grand Failure Anthem」「Bastard Chain」
5. Natural Born Chaos (2002年3月、4thアルバム)
高速のスラッシュビートがなくなり、よりモダンに、よりキャッチーな音楽を追求している。特にディストーションヴォイスとクリーンヴォイスの比率は半々くらいになって来ているし、その使い分け方も実に巧みだ。オーヴァーダブをふんだんに駆使した厚みのあるサウンドも特筆点。「Soilworkは4thまでが良かった」というファンは未だに多い。
オススメ曲:「Follow the Hollow」「As We Speak」「Black Star Deceiver」
6. Figure Number Five (2003年4月、5thアルバム)
メロディック・デス・メタルでありつつも、オルタナティヴ・メタル、グルーヴ・メタルの要素を内在させたマーケット志向&洗練志向を極めた作品。ドラムをはじめ音抜けの良いサウンドプロダクションも聴きやすさに一役買っている。持ち前の捻りの効いたリフワークが減退した点が少々寂しい。
オススメ曲:「Rejection Role」「Distortion Sleep」「Overload」
7. The First Chapters (2004年1月、EP)
録音自体は1998〜99年で、頭3曲は1stおよび2ndアルバムのボーナストラックとして収録されていた音源。ここで最も耳を引くのはDeep Purpleのカバー「Burn」。すごくハマっているとは思わないが、Soilworkの楽曲で頻出するコード進行と重なっていてルーツとして納得性のある選曲だ。
8. Stabbing the Drama (2005年2月、6thアルバム)
オルタナティヴ・メタル化が更に進み、メタルコアの要素も出て来た。本作のサウンドの核は、紛れもなく新ドラマーのダーク・ヴェルビューレンだろう。切れ味抜群のリズム感で、エッジの効いたアグレッションを体現している。それに劣らずヴォーカルはメロディアスだ。ギターソロやキーボードが一気に減退したのも特徴的、ウィッチャーズ脱退の兆しに見える。
オススメ曲:「Stabbing the Drama」「Weapon of Vanity」
9. Sworn to the Great Divide (2007年10月、7thアルバム)
グルーヴ・メタルの要素が減退し、メロディック・メタルコアへの接近が顕になってきた作品。ストリッドの歌唱力は進化を感じさせる反面で、サウンドの深みやギターリフのフックはあまり感じられない。曲のバリエーションを広げてもそれに見合ったソングライティングやプロダクションが追いついておらず、散漫な印象の強い作品。
10. The Panic Broadcast (2010年7年、8thアルバム)
ウィッチャーズの復帰により、前作よりも前々作に近い路線に仕上がっている。この至って予測可能な作風の往還にマンネリズムを認めるリスナーは一定数いるだろう。メタルコアの輸入に拘泥し過ぎたこの状態では、かつて謳われた「メタルの未来」という響きは相応しくないように思える。
11. The Living Infinite (2013年2月、9thアルバム)
1作あたり50分以下が普通のメロディック・デス・メタル業界において、2枚組80分の長尺に挑戦したエピックな作品。前2作にあったメタルコアからの影響が減退し、クリーンヴォーカルとメロディの使い方の洗練が目立つ作風だ。20曲ある楽曲のバリエーションが豊かな上で高い水準を貫いた点でも本作は最高傑作に位置付けられる。
オススメ曲:「Spectrum of Eternity」「This Momentary Bliss」「Tongue」
12. Beyond the Infinite (2014年9月、EP)
『The Living Infinite』セッションの未発表トラック5曲。音楽スタイルは殆ど同じであり、クオリティも決して低くないため、目立った落差は感じない。強いて言うならコーラスが少し弱い、それくらい。
オススメ曲:「Resisting the Current」
13. Live in the Heart of Helsinki (2014年3月収録、ライヴ盤)
2014年3月21日ヘルシンキでの公演。オールタイムべストな選曲が素晴らしい。Nightwishのフロール・ヤンセンやSonic Syndicateのネイサン・J・ビッグスがゲスト参加した貴重なコラボも観れる。スタジオ音源に全く引けを取らない高品質プロダクションだが、ヴォーカルに対してギターの音が小綺麗に引っ込んだ印象なのが惜しい。
14. The Ride Majestic (2015年8月28日、10thアルバム)
リズムの変化やアレンジが多様で、それまでの中でもひと際プログレッシヴな作品である。ヴォーカルの表現幅も非常に多彩で、感情的なパートからメロディックなサビまで抑揚が効いている。革新的なエネルギーやヒットポテンシャルのあるキャッチネスも控えめで、全体に落ち着いたトーンを基調としている。
オススメ曲: 「The Ride Majestic」「Petrichor by Sulphur」「Father and Son, Watching the World Go Down」
15. Death Resonance (2016年8月、ベスト盤)
新曲2曲に加えて、EP『Beyond the Infinite』全曲、そして日本版ボーナストラックとして収録されていた楽曲群を並べたファン向けのレアトラック集。新曲の出来は高品質で、全体に野心的な曲こそないものの、ボーナストラックでもSoilworkは自らの持ち味を忘れることがないというスタンスを概観できる。
16. Verkligheten (2019年1月11日、11thアルバム)
ストリッドの多彩な表現は磨きがかかっているが、ポップやクリーンボーカルの要素が増えた分だけ好き嫌いが分かれる作品である。クリーンパートやギターハーモニーを多用し過ぎると安っぽくなりがちだからだ。また、ヘヴィネスと攻撃性がますます減退したのも評価が分かれるところだろう。『Natural Born Chaos』以前のエネルギーを求めるのは厳しそうだ。
オススメ曲: 「Stålfågel」
17. Underworld (2019年6月、EP)
元々は『Verkligheten』セッション中に録音されて初回限定版のボーナストラックとして収録されていた楽曲群。音楽性としては近年のプログレッシヴなリフを盛り込んだメロディックデスメタルの流れを踏襲しているが、『Verkligheten』よりも『The Living Infinite』に近い力強さがある。
18. A Whisp of the Atlantic (2020年12月、EP)
16分半というSoilworkにしては規格外の大曲に象徴されるように、本作はプログレッシヴメタルの要素をこれまでで最も前面に打ち出した作品。ピアノのフレーズを起点にブラストビートやジャズ要素まで入り込む野心的な曲構造はキャッチ―なコーラス中心の従来の楽曲と異なっていて大いに新鮮味がある。
19. Övergivenheten (2022年8月、12thアルバム)
ストリッドとアンダーソン&クードレの作曲タッグは、The Night Flight OrchestraでのAOR路線の経験も生かして益々表現幅を拡大してきた。単にクリーンヴォーカルが増えたというよりも、曲に合わせて自然とそうなったようだ。Soilworkは『Figure Number Five』以来メロディックデスメタルにプログレッシヴメタルやオルタナティヴメタルを織り交ぜてきたが、今回のバランスが落としどころな気がする。本作がアンダーソンの遺作となってしまったのは残念だ。
オススメ曲:「Övergivenheten」「Electric Again」「Is It in Your Darkness」
総括
Soilworkのディスコグラフィーを総括すると、メロディック・デス・メタルという枠組みを超え、多様な音楽的実験を積極的に行いながら、20年以上にわたってシーンを牽引してきたバンドの軌跡が見えてくる。デビュー当初の『Steelbath Suicide』から『The Chainheart Machine』にかけては、猛烈なスラッシュビートと鋭いリフを中心に、攻撃的で硬質なメロデスを展開していたが、早くも3rdアルバム『A Predator’s Portrait』でクリーンヴォーカルを導入し、バンドの方向性に大きな転換点を作った。
この転機により、Soilworkは従来のデスメタルファンのみならず、モダン・メタルの新たな支持層を獲得することに成功する。『Natural Born Chaos』や『Figure Number Five』は、そのポピュラリティとメロディの両立を高次元で実現した作品であり、クリーンヴォイスとディストーションヴォイスのバランスが絶妙なサウンドスケープを生んだ。この時期から徐々に、スラッシュ的な攻撃性は後退し、代わってオルタナティヴ・メタルやグルーヴ・メタル、さらにはメタルコアの影響が色濃く反映されるようになる。
しかし、Soilworkのキャリアの中で最大の挑戦であり、同時にピークを迎えたのは間違いなく『The Living Infinite』だろう。メロディック・デス・メタルというジャンルにおいて、2枚組アルバムでこれだけの質と多様性を持たせた作品は他に類を見ない。ここでのSoilworkは、過去の作品で見せた技術的な鋭さと、後期のメロディアスな側面を統合することに成功しており、彼らの創造力が最高潮に達していた。
この流れを受けてリリースされた『The Ride Majestic』や『Verkligheten』では、よりプログレッシヴなリフとアレンジが加わり、過去の攻撃的な要素からはさらに距離を置いた音楽的成熟が見られる。特に『Verkligheten』におけるクリーンヴォーカルとポップなメロディの多用は、バンドのさらなる進化を示唆する一方で、初期のファンにとっては賛否が分かれる要素であることは否めない。
そして、バンドの象徴的存在であり作曲の要でもあったギタリスト、ダヴィッド・アンダーソンの死が『Övergivenheten』リリース後に訪れる。『Övergivenheten』はこれまでのSoilworkの音楽性を総合的に集約しつつも、さらに表現の幅を広げた野心的な作品だった。ピーター・ウィッチャーズ脱退以降、作曲面で大いに貢献してきたアンダーソンの喪失は必ずや今後の作品において大きな課題を生むだろう。
その結果、バンドがどのような道を進むのか、そしてその創造力にどのような影響を及ぼすのかは、今後の動向を見るうえで非常に重要なポイントとなるだろう。
最後に
Soilworkはキャリアを通じて、常に実験精神を持ちながらもクールな音楽を生み出し続けてきた。その一方で、Dark Tranquillityと同様に、Children of BodomやArch Enemyと比べて、こと日本において過小評価されてきたことは否めない。だが、今回改めてディスコグラフィーを振り返る中で感じたのは、彼らが常に進化し、独自の音楽性を確立してきた点にこそ、真の魅力があるということだ。
思い返せば、Soilworkの3rdアルバムを初めて聴いたのは、大学のサークル旅行の直前だった。帰りのバスでは、皆が眠っている中、ひたすら耳に流し続けていた。その攻撃的なサウンドと疾走感は、当時の自分にとって特別な体験だった。時が経ち、彼らのライヴを観る機会があり、『The Ride Majestic』の時期に彼らのパフォーマンスを目の当たりにした。そのステージは、まさにアルバムのクオリティに引けを取らないものだった。
Soilworkは、メロディック・デス・メタルの枠を超え、自らのスタイルを探求し続けたバンドだ。アンダーソンの不在による未来の挑戦もあるだろうが、彼らの過去を振り返ると、今後も新たな展開を期待せずにはいられない。それこそがSoilworkというバンドが持つ、唯一無二のクールさである。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました😊