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今年も命日にhideを聴く④zilch『3・2・1』

hideソロ作品と併せて、本作を聴くファンも多いかと思います。
では、「張り切って」直感を書き殴ります。

音源について

アーティスト: zilch
タイトル: 3・2・1
リリース: 1998年7月23日
フォーマット: アルバム
ジャンル: Industrial Metal, Alternative Metal

楽曲レビュー

① ELECTRIC CUCUMBER

張り切ってどヘヴィなリフ。
それでいて気だるい、Grungeの延長線上としてのAlternative Metalな路線です。
入りのMCも去ることながら、扇情的な女性のヴォイスが曲とマッチしていて、エンジニアのスキルが発揮されています。

② INSIDE THE PERVERT MOUND


サイバー色の強い「LEATHEAR FACE」と比べると、こちらの方がロックバンドの感触が強い。
好みとしては甲乙つけ難いです。

③ SOLD SOME ATTITUDE


ボトムを支えるベースが骨太。
「ATTITUDE」を連呼するサビのキャッチーさや、終盤のhideによるラップ調の歌い回しを聴いているとRed Hot Chili PeppersやRage Against the Machineを思いっきりヘヴィにしたような感覚にも近いです。

④ SPACE MONKEY PANKS FROM JAPAN


玩具箱をひっくり返したようなポップ感がhideソロ、特に『PSYENCE』期(例えば「BEAUTY & STUPID」「Fish Scratch Fever」あたり)を想起させます。
hideにしか作れないデジタルパンク。

⑤ SWAMPSNAKE


The Sensational Alex Harvey Bandのカバー。
原曲は1973年の2ndアルバム『Next...』に収録。
原曲のブルージーなグラムロックテイストは、ネットリしたインダストリアルサウンドに置き換わり、フィーリングはかなり刷新されています。
元が歌モノならこちらは演奏モノに近いです。

⑥ WHAT'S UP MR. JONES?


X JAPANの「DRAIN」と比べると、ヴォーカルの適合度が高いです。
天性の技巧よりも、声質や相性が一際モノをいうのもロックの醍醐味ですね。
I.N.Aの技巧の見せ所です。

⑦ HEY MAN SO LONG


hideならではの非凡なヴォーカルアプローチが堪能できるグルーヴ感溢れる曲。
この辺りから一層ヴォーカルが加熱するように思います。

⑧ PSYCHE


音楽性の無機的な部分を、見事に絶望や哀愁へ持っていった曲。
こちらもヴォーカルの熱量はかなりのもので、悲壮感も他の活動にはないレベルのものです。

⑨ FUCTRACK #6


「Frozen Bug」と比べると酩酊度が上がっている点で、原曲の本質を突いているとも言えます。
聴き手まで酔わせるようなこのサイケな音像の毒性は半端ではありません。

⑩ DOUBT


原曲と比べると、インダストリアル度を少し抑えてその分バンドサウンドをより生々しくすることでエネルギッシュな仕上がりになった。
「タモリ倶楽部の空耳アワー」の逆発想は、日本人の耳には曲以上に強烈に感じるかも。聖飢魔II「不思議な第三惑星」が日本人向けでも、この曲はそうは聴こえないのは確かです。
どちらも容易にできる芸当ではありませんが。

⑪ POSE


ソロに比べてやはりヘヴィになっている。
アウトロのラップ部分はいまだに浮いたイメージが払拭できません。次の曲も同様。

⑫ EASY JESUS


回り回って気だるいオルタナ・サウンドに回帰。
サウンドの開放的なスケール感は、終曲に相応しい。
本作の根幹に流れるポジティヴなエネルギーを最も感じられる曲だと思います。

総括


自分自身が完全なる後追いだったのもあり、zilchの存在はhideソロを聴き始めて数年してから知りました。
当初は海外を見据えた大胆なヘヴィネスにゾクっとしたものです。
しかし、zilchのアレンジは過剰に盛り過ぎて、多くの曲でメロディーの旨味を最大限には活かせていないと感じます。
しかし、あらゆる過剰な試みの中に、当時の流行にとどまらない非凡なエッセンスが注ぎ込まれています。
出色だと思ったのは「ELECTRIC CUCUMBER」「WHAT'S UP MR. JONES?」「PSYCHE」。
hideの他の活動では抑え気味な情念が激しく渦巻いていて、それだけ彼がロック音楽の可能性に見ていたロマンが伝わってくるように思います。
ジャンルの壁、洋楽と邦楽の壁、言葉の壁、やってきたこととやりたいことの壁、様々な壁を壊す先駆者としてのhideが最も堪能できる作品。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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