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メロデスへ回帰!?The Crown『Crown of Thorns』を全曲レビュー🇸🇪

マグナス脱退と、マーカス復帰という大きな転機を経てかつてのバンド名を冠したアルバムをリリースしたスウェーデンのデスメタルバンドThe Crown。新メンバーのリズム隊二人も新たなエネルギーをもたらしている。この記事では全ての曲をレビューし、アルバムの作風を考察する。

音源の基礎情報

・アーティスト: The Crown
・タイトル: Crown of Thorns
・リリース日: 2024年10月11日
・ジャンル: Melodic Death Metal, Thrash Metal
・レーベル: Metal Blade Records
・トラック数: 13曲

トラックリスト
1. I Hunt with the Devil
2. Churchburner
3. Martyrian
4. Gone to Hell
5. Howling at the Warfield
6. The Night Is Now
7. God-King
8. The Agitator
9. Where Nightmares Belong
10. The Storm That Comes
11. Eternally Infernal (ボーナストラック)
12. No Fuel For God (ボーナストラック)
13. Mind Collapse (ボーナストラック)

メンバー
• Marko Tervonen(ギター)
• Marcus Sunesson(ギター)
• Mikael Norén(ドラム)
• Mattias Rasmussen(ベース)
• Johan Lindström(ボーカル)

『Crown of Thorns』各曲レビュー

1. I Hunt with the Devil

オープニングナンバーにして、ここ数作を踏襲したThe Crown印のデススラッシュ疾走曲。終盤のギターソロは、近年あまり見られなかったくらいにメロディを意識している。作中最もデスメタルしている曲。

2. Churchburner

Slayer「Postmortem」をオマージュした曲とのことで、2曲目としては珍しく三連符系のミドルテンポを採用し、サビでのみブラストビートを使用している。ここからメロデス度が飛躍的に上がる。

3. Martyrian

本作のハイライト。湿り気と哀愁を帯びたメロディを疾走曲で際立てるソングライティングは、マルコ・テルヴォネンの真骨頂である。

4. Gone to Hell

ミドルテンポの曲。しっとりとしたプロダクションにベテランの貫禄を感じさせる。特に終盤のヴォーカルエフェクトが印象的だ。

5. Howling at the Fields

ブラストビートで開始する疾走曲。サビの下降音形はかなりキャッチーだと思うが、もう一捻り欲しかった気もする。

6. The Night Is Now

本作の中では地味な部類に入るミドルナンバー。イントロのトライバルなドラムビートや、終盤の休符を取り入れた展開が特徴的。

7. God-King

一転してかなり高速の疾走曲。攻撃性以上に、ドラマティックなメロディを重視するスタンスはここでも感じられる。

8. The Agitator

2分に満たないコンパクトな曲。リフがあまりに直線的過ぎて印象に残らないのが残念。

9. Where Nightmares Belong

裏拍子を使わない抑え気味のテンポの曲。本編の中でも一際メロディを強化している。

10. The Storm That Comes

7分近くに及ぶ、The Crownにしては比較的長めの本編ラストナンバー。劇的な展開がないので後半になると冗長に思えてくるが、サビの渋い哀愁感は彼らならではだろう。

11. Eternally Infernal

ここからボーナストラック。イントロのエフェクトがゴシックを思わせるが、本編はブラストビート全開の疾走曲。この熱さは「Hell Is Here」時代を思わせるものがある。ソロも聴かせる。

12. No Fuel for God

イントロはかなり冴えないが、そこから予想を超えたドラマティックな発展をする曲。メロディは少々ありきたりな印象だ。

13. Mind Collapse

ラストを飾る疾走曲。目立った存在ではないが、中盤でドラムにもエフェクトが施されているのが特徴的。

全体を通して

マルコ・テルヴォネンが"兄弟みたいなアルバム"と振り返った過去2作『Cobra Speed Demon』『Royal Destroyer』と比較すると、今作はメロディック・デス・メタルへの回帰が目立つ作風に仕上がっている。チューニングも初期4枚で用いたEに戻したそうだ。こうした変化は、テルヴォネンと並んで結成以来作曲を担当してきたマグナス・オルスフェルトが離脱したことが影響しているのだろう。彼のハードコア/パンクスピリット溢れるソングライティングやバキバキのベース音がサウンドから消えてしまったのは寂しいが、クラスト・パンクをルーツに持つ新ベーシストのマティアス・ラムスセンやImpiousでもお馴染みのドラマー・ミカエル・ノレンはバンドの音楽性に新しいカラーを注ぎ込んでいる。何よりマーカス・スネソンの復帰は大きい。やはり彼のギターソロはThe Crownの音楽に華を添えてくれるし、フレーズが毎度耳に残る。メロディが引っ込み気味なサウンドプロダクションと楽曲バリエーションの減退、ややフックに欠けるリフワークは、「一歩前進」というにはあまりに計算的かつ堅実過ぎて手放しで賞賛はできかねるが、これからの可能性を大いに感じさせる佳作であることは間違いない。マグナスがいなくなった時点で、The Crownは『Deathrace King』の時のような"やさぐれ系デッスンロール"には戻らないだろうが、知名度を獲得する前の『Eternal Death』を名盤だと思っている私は、まだまだ今後の展望に期待できると思っている。

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