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今更だけど『星の王子さま』を読む②
インナーチャイルドカードの解釈を深める為に読んだ星の王子さまについての備忘録。
前回①のつづきです。
北杜夫氏監修・鳥取絹子氏著の『大人のための「星の王子さま」愛の旅人サン=テグジュペリが本当に伝えたかったこと』を読んで、他にも深堀りできたところが多々あります。おもしろい!
◇何が「大事」なのか?
王子さまが渡り鳥につかまって6つの星をめぐったのは、何か仕事をさせてもらって勉強するためでした。でも…。
そこで出会う大人たちは、作者サン=テグジュペリの一部でもあると解説されています。理由を読むと確かに!まぁでも、人間誰しもの中にある側面でもありますか。
1.王様:
自分を裁判することが一番難しいという人格者なのに、命令ばかりで偉そう。
2.うぬぼれ男:
拍手されると必ず挨拶する律儀な面もあるが、褒められたい。
3.呑み助:
飲むのが恥ずかしいからそれを忘れたくて飲む。そして飲むのは恥ずかしい。ただの酒好きだがなぜか哲学的。
4.実業屋:
星(金)の勘定に忙しいと執着し続ける仕事人。
5.点燈夫:
時間に追われるが仕事に意義を見出せない、愛すべき庶民。
6.地理学者:
変わらないことにしか興味がない、自分では動こうとしない。『はかない』の意味を教え、地球へ行く事を提案。
「おとなって、ほんとにへんなものだなぁ」とつぶやきながら星めぐりをする王子さま。みんなそれぞれ一生懸命にしているこの大人たちからは、自分にとって何が大切なのかを考える機会を得られます。
飛行士がでたらめな事を言って王子さまを怒らせたこと。王子さまが大切にしていることこそが、『星の王子さま』のテーマの一つなんだと気づかされます。
◇キツネからの秘密のおくりもの
地球(サハラ砂漠)に降り立った王子さま。ヘビと出会った後、高い山へ登り、バラが咲き誇る庭を通り、自分の星にある特別だと思っていた火山やバラの花が珍しくもなんともないのだと知って泣くのですが、キツネに出会い色々な話をし、再度庭にたくさんのバラを見に行く時には、王子さまはあのバラの花が特別な存在であったことに気づいています。
キツネはそんな王子さまに名セリフを。
心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。
かんじんなことは、目に見えないんだよ。
キツネとお互いを飼いならした(関係を築いた)ことで、王子さまはあのバラの花との関係も心の目で見られるようになっていました。
もしあのバラの花がここに咲く同じ花たちをみたら、気分を害して機嫌を損ねるだろうと想像し、自分が介抱するフリをしてあげなければ…と考えられるのですもの。
そして本書では、『星の王子さま』が世界的にベストセラーになった要因の一つとして、見えるものを信じるという西洋思想の国で育ったサン=テグジュペリが「目に見えないことが大切」というメッセージを込めたからだと記されています。
またキツネからのもう一つ秘密のプレゼント、
めんどうみたあいてには、いつまでも責任があるんだ。
まもらなきゃならないんだよ、バラの花との約束をね・・・・・・
「バラの花との約束を守らなきゃならない」この日本語訳を、本書では原文より『きみは、きみのバラの花に責任があるんだ』と意訳してしています。
めんどうをみたというのは、バラのためにひまをつぶした(=無駄にしたとも意訳されていますが)時間は、それだけバラの花のために何かを一生懸命にしたことであって、二人の関係がそれだけ深いことを示していると思います。
後に飛行士との話に登場するあきんどに対しても、何を求めているのか分からない大人という比喩で、ひまつぶし(時間を無駄に)する相手がいる分幸せだということを伝えていることも、王子さまがバラの花に対して特別な気持ちを持っていることが察せられます。
そんなバラに対して責任とは、王子さまが星へ帰ってあげることを意味しているのでしょう。
作者サン=テグジュペリが、リビア砂漠を飛行中に墜落し奇跡の生還を遂げたのは妻コンスエロへの責任感からだとも述べられていて、そんな実体験から生まれたメッセージだったのだと気付かされました。
◇美しいものも、大切なものも…
飲み水が最後の一滴となった飛行士に、井戸を探し行こうと誘う王子さま。会話があり、沈黙があり、キツネとの関係のように二人はお互いを徐々に飼いならしていく場面。
星も砂漠も美しく感じる二人。
星が美しいのは、あのバラの花が1つあるからで、
砂漠が美しいのも、どこかに井戸を隠しているから。
「でも、美しいところは、目には見えないのさ。」
目には見えないことを大切にしている王子さまが美しく感じる飛行士もまた、目には見えないことが大切であると、眠る王子さまを抱きかかえながら歩く飛行士の気づきのシーンも素敵です。
◇探しているものは?
井戸が、目をさまして歌っているようにしてカラカラという音をたてる。飛行士が汲み上げてくれた特別な水をごちそうを食べるように飲むシーン。
王子さまが『大人たちは何が欲しいのか分からずに動き回っている』と言うように、現代の私たちも本当に求めているもの、大切なことが分からないでいることが往々にしてあります。
でも探しているものは、『たった1つのバラの花の中にも、すこしの水にだってある』と、王子さまは教えてくれています。だから「心でさがさないとね」なんですよね。
地球へきて一年目の記念日だと知らされ、次の日に王子さまが星へ帰るまでの二人のやりとりは、また違うメッセージがあり、切なく胸にぐっと来るクライマックス。
王子さまが別れに飛行士にプレゼントしたものは、鈴のような王子さまの笑い声でした。これもまた目に見えない大切にしたい素敵な贈り物です。
③に続く。