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【short-short】猫掻茶碗

陶芸家は猫と暮らしていた。
彼は猫をとても愛していて、猫が仕事場に入っても追い出さず
猫の好きにさせていた。

猫は自由気ままに、窯入れ前の並べられた皿の上を歩いたり
茶碗をちょいちょい引っ搔いたりしていた。
陶芸家は、猫がいたずらした器も気にせず窯に入れて焼いた。

出来上がった器には、猫の足跡や引っ掻いた爪痕が残っていた。
陶芸家はその器を気に入って、売りに出した。
町の人たちも、猫が陶芸をするのか、と面白がり買ってくれた。
陶芸家と猫の作った器は評判になり、とくに茶碗は
猫掻茶碗と呼ばれて、茶人たちに好まれ高値で売れた。

陶芸家は稼いだお金で猫にごちそうを与え、いままで以上に大切にした。

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