【短編小説】地域猫のミャアちゃん:前編(589字)
ミャアちゃんはこの辺りの地域猫だ。
洋猫の血が混ざっているような灰色の毛で、可愛くて、賢くて、人懐っこくて、皆の人気者だ。
でも、なぜミャアちゃんが地域猫として外で暮らしているのか誰も知らない。
ミャアちゃんは、うちの隣のおじいさんの家によく遊びに来ていた。
おじいさんはミャアちゃんが出入りできるように、いつも縁側のガラス戸を少し開けていた。
私は、おじいさんがミャアちゃんにご飯をあげたり、ブラッシングをしている姿をたびたび見かけていた。
その様子はとても微笑ましくて、おじいさんがそのままミャアちゃんを
飼ってくれたら良いのに、と心の中で願っていた。
しかし、2年ほど経ってもミャアちゃんは地域猫のままだった。
おじいさんはミャアちゃんを可愛がっていたが、家の中で飼おうとはしなかった。
ミャアちゃんも外の楽しさを知っているからか、おじいさんの家に長居はしないようだった。
冬になり、この辺りもうっすらと雪が積もるようになっていた。
今年は大雪になるのだろうか…
ミャアちゃん達、外で暮らす猫のことが心配だった。
雪がしんしんと降った日。
これは積もるだろうな、と思いながら帰宅すると自宅の軒下にミャアちゃんがいた。
今日はおじいさんがいないみたいで、うちの軒下で雪宿りをしていたのだ。
「ミャアちゃん、寒いでしょう。うちに入る?」
そう声をかけて玄関を開けると、ミャアちゃんは私の後について家に入ってきた。
(続く)