【考察9】お化け好きのための宇宙論
お化け好きのための宇宙論とは、心霊現象を肯定するための宇宙論である。宇宙とは、それ自体が有機体(生物)であり、知能体であり、意識体です。
有機体論システムや創発などの用語については、以下の過去記事で説明されています。
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有機体論システムの系内部に宇宙が存在した場合の考察
この世の万象が有機体論システムに包含されているとすれば、量子系は粒子的にそれ単独で閉じているのではなく、地下茎のように有機的な力学的・熱力学的流束(ベクトルをもったエネルギーの流れ)のネットワークで結びついた構造を形成していると考えられます。量子系の構造は、ミクロからマクロにいたる階層構造間のフィードバックによって複雑に相互作用する非線形・非平衡の開放系をもちます。このため、特定の時空点どうしでの局所的相互作用(電磁気力および強弱核力)と、時空全体と連関する大域的相互作用(自己組織化をもたらすエントロピーの傾向、流束の自由度の逓減)の双方を併せもつことができます。
ミクロ・マクロ間のフィードバックにともなう創発過程により、流束は有機的に自己組織化し、宇宙そのものが自発的にエントロピーを減少させる知能体(情報処理装置)としてふるまいます。有機体論システムを備えた流束は自己組織化の傾向をもち、この傾向が量子の運動を決定するベクトルとして機能します。流束がこの世の空間の各座標軸に射影されることで、波動状態から粒子状態への遷移が説明されます。つまり、量子の運動とは、この世の空間軸と直交する上層の大域的秩序構造からのフィードバックによって、創発された新たな過程=結果を元の過程=原因に重ねていく推移となります。その経路は、流束ネットワークに分布するフィードバックの増減率(温度・圧力分布の非一様性)をもった広がりとして分布します。つまり、量子系とは、実体をもたない確率論的分布ではなく、その階層的大域的秩序構造のうちに時空を超えた過去と可能性を包括する、時空連続体として理解されます。
さて、時空が有機体論システムによって自己組織化しているならば、インフレーションを経て誕生したこの宇宙は“カオスの縁”に存在することになります。気体のような無秩序なカオスではランダムな動きしかもたず、固体のような完全な秩序では系はひとつの状態に落ちついてしまいます。無秩序化と秩序化の傾向が競合する中間付近の領域であるカオスの縁でこそ、内外部の状況の変化に応じて柔軟に適応することができる恒常性をもった、生命的な自己組織化現象を創発することができるのです。
力学的・熱力学的流束場では、無秩序化と秩序化というふたつの傾向がカオスの縁で競合するために、時間経過によって流束の自由に動きまわれる度合いが増減し、その系が無秩序状態と秩序状態の間をゆれ動きながらいくつかの準安定な相を遷移していきます。これは非線形力学特有のシステムであり、「カオス的遍歴」と呼ばれます。局所的相互作用(初期鋭敏性)により各ノードの挙動がばらける性質と、ネットワークの大域的相互作用(平均場)による各ノードの挙動がひとつの状態に引き込まれる性質が競合するため、系にさまざまな協調的パターンが現れることなるのです。わたしたちが住む動的宇宙は、この両性質の中間であるカオスの縁に存在します。階層的な自己組織化は、この力学的・熱力学的な分岐(準安定層への相転移)を経過しながら系の構造が固定化されていく課程を、何回とくりかえすことで積みあげられてきたものと考えられます。
両傾向の極限においては、各ノードが引き込まれ同期した秩序相(固相、凍結した秩序状態)が過渡的に出現し、またこの引き込み現象が崩壊した各ノードがばらばらにふるまうカオス相(気相、気体的なカオス状態)が間欠的に現れます。このとき、秩序相からカオス相への相転移にともなって流束の揃った位相がほどけて流れが生みだされると、微視的には、流束の自由度の最大化に応じて系内すべてのノードへとエネルギーがほぼ等分配され、各ノードの流入出量はバランスするので、正負の対称性が保たれた真の真空場(無の領域)が創出されます。カオス相での場は、非周期的な流束の入出力よって乱雑な位相で振動するノードから構成された、無限の振動数からなる均質なエネルギー大気で一挙に満たされることになります。
分岐による準安定相への過渡期において、流束の系がこのカオス相の平衡状態からわずかにでもズレを起こすと、ノードの流入出数のバランスが崩れて流束密度のゆらぎが生成されることになります。これが宇宙誕生の種火である無のゆらぎに対応します。