『欲しい』がつらい
※ こちらは2024年10月11日、本アカウントの方に掲載していたもののお引越し記事です。コメントいただいた後、『これは確かに心配をかけてしまう』と思い直し、本アカウントでは記事を下書きに戻しました。
こちらは私にとって自由な場所なので、その時の気持ちそのままという意味で載せておきます。今は元気です。
◇ ◆ ◇
別アカウントにログインするのが面倒くさくてこちらに書いている。
気持ちが少し落ち込んでいる。
ちょっと吐き出したいだけ。
何かを『欲しい』と思うことに対して、罪悪感を抱くようになってしまった。
私は、働いていないわけではない。
フルタイムで、結局白衣を着て、細かいことをしてお給料をもらっている。場合によっては土日祝日も出る。大人一人が食べていくことは十分できる。でも、結婚する前のような働き方はもうできない。したがって、結婚する前のような稼ぎ方でもない。寿命がそのまま日本円に換金されていたような、ああいう。
でも、心の底ではいつでも、ああいう働き方をして職場で倒れてそのまま死ねたら本望だと思っている。倒れたところで、ハリーコール掛かってそのまま救命にぶち込まれるだろうけど。そもそも、本望って、どういうことやねん、とも思う。だけど他にいい表現が思いつかない。
結婚しなければ、転職しなければ、ふと思いとどまらなければ、多分私は今ここにいない。変な働き方をしてしまった。そのせいか、それとも気持ちの不具合のせいか、私はいつもいつも、働きながら『足りない』と焦っている。
できれば、意識が遠のくまで、気を失うまで、燃え尽きるように働きたい。
家のことも、夫のことも、友だちも、きょうだいも、愛する全ての何もかもを一切ほったらかしにして。
定時で帰るなんてとんでもない。
まだ働きたい。
もっと働きたい。
そう思ってしまう。
体を壊して、ついでに心も壊して、それでもフルタイムにしがみついて、『休みたい!行きたくない!今日は家にいたい!傷跡が痛い!頭が痛い!』と朝っぱらから声に出して泣いているのに、まあ笑ってもらって全然いいんだけど、うまいこと化粧をして、気づくともう会社にいるのだ。面白いだろう。私は多分、ワープができるのだ。誤解されたくないから注釈をつけると、仕事はとても楽しいし、個人的に就業環境もいい。ただ時々、気持ちと体がバラバラになる。
検体を捌いて、試薬を調製して、論文を読んで、ミーティングをして、申し送りをして、上長と来週の見通しを立てて、隣のデスクと雑談をしたり、お菓子を交換したり、首から下げているタイマーがピピピと鳴るたび実験室に飛び込んで、毎日あっという間に、9時が17時になる。電車に乗って帰って、買い物をして、晩ご飯を作って……。
働いている。はずだ、私は。
分からなくなる。
諸外国を飛び回っている友だち、新卒の頃からずっと同じ会社で頑張っている友だち、少し調子を悪くして週に3日のパートをしながら治療をしている友だち。
みんな『働いている』。
それで、口を揃えて、私に対して『あなたも働いている』と言う。
夫も、きょうだいも、私に対して『怠けている』と言った人は誰一人としていない。
いついかなる時も、私だけだ。
私に対して『お前はまともに働きもせずに夫から搾取を続ける見下げ果てたおぞましい寄生虫女』だと暴言を吐くのは。
ひどい話だ。
なぜ。
分からない。私の状況をうまく認識ができない。
そのくせ『欲しい』と思う担当も私の中にいる。
『欲しい』のたびに、暴言を吐く担当が『働きもしないくせに図々しい、死ね!』と私に言うから、『欲しい』がつらいのだ。
ほんのちょっとの『欲しい』なのに。
たまたま雑貨店で見つけた細かいものを『かわいいな、欲しいな』と思っただけなのに『死ね!お前のような怠け者は死ね!図々しい!』と、体の中にバリバリと轟音が鳴る。叫び声だ。暴力を伴う叫び声が響いて苦しい。とてもつらい。
ほんのちょっとの『ほしい』を、時々、セリアかなんかで解決している。
マスキングテープだって、勇気を出して買えるようになったから、油断していた。
今さっき、私は、急須を『欲しい』と思った。ヘッダー画像の、小さな急須。
上司が出張土産でくれた和菓子が大変美味で、これは温かいお茶に最高に合うだろう、それなら、小さな急須なんかあれば、夫と一緒に楽しめるなあ、とかなんとか思って、そんな動機。
可愛い急須を見つけた。
あ、欲しい、と思った。
それで『働いてもいないくせに!』と、体の中で鳴り響いて、震えている。
私は、働いているはずだ。
今日だってたくさん検体を捌いた。帰ってきて、ごはんだって作ったし、さっきまで、食器の洗い物や洗濯、お風呂の掃除もして、ちょっとスマホで楽天を眺めていただけなのに。
欲しい、が、つらい。
死んでしまいたい。
このままこの調子で生きていくことは辛い。苦しい。不自由だ、気持ちが。
でも、明日は忙しい。
生きなくては。
働かなくては。
首なんか吊ったら働けない。
頭がぐるぐるする。
私が働いているということを、ちゃんと信じたい。
命がそのままお金になっているという価値観を変えたい。
きちんと『欲しい』に向き合いたい。
つらい。
なぜこうなってしまったのか。
私の命を残高にできるなら、その額を知りたい。それで、詫び料として夫の口座に振り込まれたい。
なぜ小さな急須たったひとつで私は。