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10代での留学の思わぬ苦労と、そこから得たもの

「若くていいねー!これから何でもできるじゃん!」
「それは若いからだよ。」
「まだまだ若いよね。」

 これは留学当時18歳だった私が、日本に帰国するまでの約8年で数えきれない程言われてきた言葉です。
 良い意味でも、悪い意味でも、です。

 誰も悪意があって言ってはいないですし、「若い」は大体の場合、良い意味や羨ましさの意で使われますから、私も嫌だったと言いたい訳ではありません。

 ただ、なんとなく語学の吸収が早そうでメリットばかりのような10代での留学にも「盲点だった戸惑い」があり、それを自分なりの解釈で乗り越えた経験について書いていこうと思います。 

国の枠を超えた世代間ギャップの壁

 高校を卒業してすぐに留学した私は、海外に飛び込むと同時に、初めて様々な年齢の学生がいる環境に触れました。
 日本でのバイト経験もなく、同い年の友達しか周りにいなかった環境から、いきなり世界中の20代30代がほとんどを占める環境に飛び込んだ、世間知らずの田舎娘。
 それはわくわくすると同時に、時に疎外感を感じる寂しい経験も生み出しました。

 当時18歳。通い始めた語学学校に同い年の生徒が何人かいましたが、最年少でした。大体が大学生や、社会経験を積んだ20代。
 私が無知であっただけ、と前置きした上で言いますが、そう、休み時間や授業中の会話で話が合わない、そしてついていけないのです。人間的な思考の深さも全然違う。相手が自国での大学の事や仕事の事、または社会情勢やニュースの話など、理解できない、ついていけない、想像できないので、相槌を打つしかありませんでした。英語の勉強以前の問題です。

人生経験の差で、共感できる話題に乏しい

 日本人同士でも、外国人のクラスメイト相手でも、フリートークに中々花が咲かない。それまで関わる年上はせいぜい1、2歳上くらいだったのが、10歳以上離れた人もたくさんいて、それは私にとって新鮮で、学ぶことが多くて楽しかったことに間違いはないのですが、他人が仲良くなる上で重要な「共感」できる話題が圧倒的に少なかったので、仲良くなりたいのに、関係を深めることにどうしても難しさを感じてしまうのです。
 そして、20代の人たちにとって18歳の私なんて子ども。その分たくさん可愛がってもらえたメリットもあれど、子ども扱いされていると感じると、何だか自分の価値観を語るのすら恥ずかしかったことを覚えています。
 
 それはやはり、少し寂しくて、悔しくて、疎外感。

 当時は、どこへ行っても子ども扱いされること、共感し合いながらダラダラと雑談できないこと、若さ故のノリが時に面倒くさがられることを、ずっともどかしく思っていました。

 自分は早くに来すぎたのかもしれない、とさえ思いました。
経験の差は埋まらない。年下というものはいつでもどこでも、その経験豊富な背中を追い続けるのです。

単純な気付きで掴んだ年上との距離の縮め方のコツ

 でも、ある時とても単純なことに気が付いたのです。

 差があるのはあくまでも「自国での経験値」であって、留学してからの経験値は皆ほぼ同じだということに。

 語学学校に通っている生徒は、どんなに年齢にばらつきがあっても、留学歴には数か月程度の差しかない。

 全員にとって初めての国。初めての文化の違い。初めての言語。初めての経験。
 皆手探りで、皆不安。

 お互いの経験についてのフリートークに共通点がなくても、生徒全員に「留学生」という圧倒的な共通点がある。慣れない国でそれぞれが色んな苦労や心躍る経験をしながら、なりたい自分に近づくために頑張っている。

 医師、歯科医師、看護師、会社経営者、歌手、研究者、エンジニア、デザイナーなど、到底書ききれない程様々な職業の留学生がいて、皆自分の知り得ない未知の世界を生きてきて、高校を卒業したばかりの私なんて足元にも及ばない程未熟な存在だったけれど、留学先での立場は皆同じなのです。

 それに気が付いて、意図的に意識するようになってから、良い意味で遠慮や変な疎外感が薄れていき、心地よい距離感の縮め方のコツが掴めていったように思います。

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 こんな雑談で、お互い気を張ることなくリラックスして距離を縮めながら、時にお互いの自国での話で刺激を受ける。
 なんてことない雑談と、わからないことを正直に聞く勇気と、留学先という共通の場で同じことを感じる経験が、少しずつ年齢や経験値による溝を埋めてくれた気がします。
 そんな風に話せる相手が増えていくと、いくら付いていけない話題が多くても、聞いているだけで一歩大人に近づけるかのような楽しさを感じる余裕が出てきて、留学生活がより楽しくなりました。

 今となっては、世代間ギャップの「ギャップ」は、溝ではなく幅なんだなと思います。

結果

 留学当初、社会経験が全くなく、違う世代の人たちと接する機会が全くなかった状態から、いきなり海外で世代間ギャップを経験したので、語学的な苦労に若さ故の心細さが上乗せされたように感じてしまった訳ですが、今思えばそれは私にとってプラスでしかなくて、世界中の異なる世代の人たちとのコミュニケーションが、大人になりかけだった私の価値観を、少しずつ豊かに紡いでくれました。次第に年上といる方が安心できて心地よいと思うようになり、30代になった今もそれは変わらぬまま。

 けれど今度は自分よりも若い子たちの方が周りに多い環境に代わり、自分の知らない世界を若い世代から教えてもらうことの楽しさを新たに経験している最中です。



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