さまよい
ここではないどこかを
探す気力すらなかった
そんなところがあると
憶うことすらできなかった
行く場所も帰る場所もなく
さまよい続けたある日
小さな島に足を下ろした
その刹那
心の底から安堵した
そこはわたしの島だった
怯えず息ができた
空洞が塞がった
力が抜けた
静かに運命は舞い降りた
たましいのふるさとにめぐりあった
疑う隙もなく満たされた
故郷になじめぬ寂しさが消えた
東京でしか生きられぬ私が消えた
ここに墓を建てよう
還る家を作ろう
さまよえるたましいが
いずれ根を下ろせるように
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