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日本生まれ、日本育ちの私がイギリス人になった話 2
私がイギリス国籍を取得し、イギリス人になった理由は就職です。
大多数の仕事は永住権や就労可能なビザがあればできますが、私の仕事はそうではありませんでした。
少し背景を説明すると、
私は現在、イギリスに住む48歳女性です。19年前に夫の転勤でイギリスに引っ越し、すぐに長男が誕生し、その2年後に次男。夫の仕事が忙しかったため、そして私の実家からも夫の実家からも離れて暮らしていたため、しばらく子育てに専念。次男がナーサリーに通い始めたのをきっかけにパートタイムでできる語学教師の仕事を始め、10年続けました。次男が14歳になったのを機に、フルタイムで仕事をしたいと考えるようになり、英語ネイティブでないことが障壁にならない仕事は何かと考え始め、結果、プログラミングスクールに通い、IT職でのフルタイム就職を目指すことに。
46歳だった私は、プログラミングスクールのクラスの中で最高齢でした。ですがペアプログラミングやグループプロジェクトなどはとても楽しく、クラスメートも皆気さくに接してくれたため歳の差を感じることはなく、和気藹々と学び合いました。(日本では中高年の学び直しが「リスキリング」と呼ばれ、流行っているとか?😀)一番仲良しになったのは28歳のイギリス人元助産師Sと、42歳のスペイン人元客室乗務員L。特に歳の近いLとは共通点が多く、今も月1で会っています。
業界未経験・非ネイティブ・高齢という障壁に加え、私がスクールを卒業して就職活動を始めると同時に、IT業界はリストラの嵐を迎えました。(2023年春〜)怒涛の就職活動のことは長くなるので省きます。(体験談もほかに色々あるようですし)
就職活動があまりに大変で心が擦り切れたあたりで、自分には到底無理と思っていたとある職の内定をもらいました。奇跡としか思えませんでした。この時点で就職活動開始から半年以上かかっていましたが、それまでに応募した数十件の職の中で、最も条件が良いもので、心は思わず舞い上がりました。
ところが
バックグラウンドチェックが無事に終了し、正式に内定をもらった(と思った)翌日、HRから、国籍要件が該当しないため、雇用手続きを続けることはできません、とのメールが。国籍要件は、以下のようなものでした。
「イギリス国籍、あるいはEUかコモンウェルスの国籍をもつ者」
コモンウェルスは旧イギリス植民地からなる国々の連合です。イギリスの公共福祉を守る公的機関の職なので、こういった要件がありました。
その時のショックは言葉では表現しようがありませんが、長くなるので端折ります。
その後、奇跡的に(第二の奇跡)採用担当の方の力添えにより、私が一定期間内にイギリス国籍を取得することができるのなら、それまで待ってもらえることになりました。
ですが、所定期間内に国籍取得ができなかった場合、国籍取得は無駄になります。
どうすべきか迷いましたが、そのあたりの心の葛藤もここでは端折ります。
私は職を得るためにイギリス国籍を取得することにしました。
私には日本に高齢の両親がいます。私が日本国籍を喪失することで、どんなデメリットがあるのか、ググってみたりしたのですが、大きなデメリットが見つかりませんでした。(日本国内に居住しないことによるデメリットはもちろんありますが、永住権のままイギリスに住む場合とイギリス人としてイギリスに住む場合の大きな違いが見つからなかったという意味です)見落としているだけかもしれませんし、今後、デメリットに直面するかもしれません。
ネットで国籍喪失について調べる中、在外日本人が日本国籍を保持する一番の理由は、感情的な要素が強いとの印象を受けました。日本人というアイデンティティを失いたくないから、と。とてもよくわかります。では、私はどうか、自答した際、国籍がなくなっても、日本で生まれ育った私のアイデンティティがなくなるわけではない。こちらで生活基盤、人とのネットワークを築いてきたので、老後日本に戻りたいといった希望は今のところない。(今後絶対にないとは言い切れない、人間だから)はっきりと見えないデメリットを心配するよりも、はっきりと見えるメリット(職)に賭けたい。職につけば、尚更イギリス人としてイギリスで生きるモチベーションは上がるだろう、、そんな考えがめぐりました。
私がイギリスに引っ越した理由は夫の転勤ですが、もし何か予測不可能なことが起こり、夫と一緒に暮らせない状況になったらどうするか、とも自答しました。それでも、私はイギリスに居続けるだろうなと思いました。子供のこともあるし、やはり生活の基盤を19年間こちらで築いてきたので。
そして、こんなに職歴にブランクがあるのに、未経験分野なのに、結構なトシなのに、採用してもらえたということがやはり奇跡のように感じられ、この奇跡を手放したくないと思いました。
そんなこんなで、手続きを開始しました。