『ソーシャルジャスティス 』刊行記念スペース コロナの5類移行について
内田舞
一夜限りの復活こびスぺ!早速始めていきましょう。
皆さん、今日は参加してくださってありがとうございます。めちゃくちゃ久しぶりのこびナビスペースで、私もテンション上がってます。
こびナビのスペースを初めて聞くっていう方もいらっしゃるかと思うので、ちょっとだけ説明をさせていただきますと、私達こびナビは、新型コロナワクチンの正確な科学情報を届ける非営利プロジェクトとして、2021年の1月に発足しました。それから1年強、本当に全力でメジャーメディアやソーシャルメディアなどを通して、あとはブックレット、リーフレット広告マンガ大賞などのいろんな方法で、コロナワクチンについての科学情報を届けてきました。こびナビの活動の中でも、このこびナビスペース(こびスペ)は、毎朝こびナビの医師がこのように集まって最新のコロナニュースを紹介したり、それについてみんなで生議論する私達の看板番組だったので、たくさんの方が聞いてくれましたし、メンバーにとっても私にとっても本当に思い入れの強いコンテンツでした。なので、今日の復活は、嬉しいものです。
さて、紹介が遅れましたが、私、内田舞と申します。本日は司会を務めさせていただきます。私はアメリカのボストンに住んでおりまして、ハーバードメディカルスクールのアソシエイト・プロフェッサーに最近プロモーションを受けました。日本語にすると、ハーバード大学医学部准教授っていう立場になったわけですが、引き続きハーバード大学附属病院であるマサチューセッツ総合病院の小児うつ病センターのセンター長をしておりまして、小児精神科医として、子供の心の不調の診察だったりとかまた、感情のコントロールに関わる脳神経科学の研究をしております。
こびナビについては、私自身が3人目の息子を妊娠中にワクチンを接種したことが、予想外に日本のメディアで爆発してしまったことがきっかけとなり、特に妊婦さん、あとは子供に向けたワクチンの情報を届ける活動をしてきました。すごくこの活動を誇りに思っていますし、その中で出会えた今日も参加してくださっている先生方のこの仲間っていうのは、もう人生の友であり、人生の宝です。
『ソーシャルジャスティス 小児精神科医社会を見る』(文藝春秋、内田舞著)
そんな私が、このたび本を出すことになりました!『ソーシャルジャスティス 小児精神科医社会を診る』っていうタイトルで、文藝春秋さんより、4月20日、日本で発売です。海外からも電子書籍やAmazonなどを通してご購入いただけます。
▼『ソーシャルジャスティス 小児精神科医社会を見る』(文藝春秋、内田舞著)
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784166614066
この本は、ワクチン啓発の中で私自身も経験した炎上や論破ゲームの波に乗らずに社会の分断や差別を乗り越えるためにはどうしたらいいのかという、ちょっと答えが出ないような問いに対して、私の専門である心と脳のメカニズムに立ち戻ってみたり、トランプアメリカからパンデミックの間の激動のアメリカ社会の変化を捉えてみたり、また子供3人を育てている母親としての立場から個人的なエピソードを通して私なりに考えてみた、社会を前進するヒント、自分を前進させるヒント、そんなものを詰め込んでみた本です。
この本のプロローグは私のコロナ禍での妊娠の不安から始まるんですけれども、そこからワクチン接種についてお話をします。今でこそ、妊娠中の新型コロナワクチンの接種は世界的に推奨されており、臨床研究の結果、妊娠や胎児にワクチンが悪影響を与えないことがわかっていますが、当時はまだそれが立証されていませんでした。しかし、妊娠中のコロナ感染は、重症化してしまうリスクが非常に高いこと、そしてその際おなかの中の赤ちゃんにも悪影響が及ぶこともあると考えると、妊娠中の感染は何としてでも避けたい、重症化リスクを何としてでも下げたいという思いがありました。それと逆に、ワクチン接種に関するリスクに関しては、mRNAワクチンのメカニズムを考えると悪影響は非常に考えにくいという、そんな科学的な考察を経て、私はワクチン接種をしました。しかし、アメリカにいる日本人の医師が妊婦として妊娠中にワクチンを接種したというニュースが日本に広まると、日本から残念ながら「無責任な母親」「この子供は絶対死ぬ」「児童虐待だ」というような誹謗中傷の嵐に晒されたんですね。
この状況で、私は「母親ってなんて損な存在なんだろう」と考えさせられました。親全体に言えることではありますが、世界的に、母親は家族のための責任ある決断を頻繁に迫られる状況にあるのに、その決断をするための情報にはなかなか手が届かないことが多いのです。またどんな決断をしたとしても、どんなによく考えて決断をしたとしても、それが批判の対象になることが本当に多くて、この状況は、私が日々接している小児精神科を受診する患者さんの親御さんにも通じることなんですよね。小児精神科疾患は、様々な生物学的な要素要因が絡み合って、子供の注意や行動をうまくコントロールできないことが起きるんですけれども、そんなお子さんを本当に一生懸命育児されている親御さんたちが、なぜか世間から「あの親は悪い親だ」という偏見に満ちた目を向けられることが多いです。そのような悩みを毎日聞く中で、やっぱり私は、こうやって誰かが間違った情報をもとに苦しむ状況を見ていられなくて、やはりこのような偏見や誤認識に打ち勝つためには科学、そしてその科学をたくさんの人にわかるように伝えることだって、そう思っています。
この本のタイトルの「ソーシャルジャスティス」というのは、誰かが苦しむ状況を変えるために環境に働きかけることなのかなと私は考えています。それが大きなデモだったり、政策を立てることだったり、こびナビのようなプロジェクトも、もちろんソーシャルジャスティスなんですけれども、そんな大それたことではなくても、日常生活の中で自分の心の声と向き合うこと、そして社会の声にも耳を傾けることで、その思いをシェアすることという、そんな一つひとつのコミュニケーションは、それこそがソーシャルジャスティスなんじゃないかという、そんなメッセージを込めて書いた本です。
まさに私達こびナビが医療啓発に関わった原点はきっとここにあると思っていますので、今日はこの本を先取りして読んでくださったナビメンバーの皆さんに感想を聞いたりするのも楽しみにしています。
新型コロナ感染症 5類に分類 生活はどう変わる?
こびスペなので、それと同時にコロナニュースの話もさせていただきます。
さて、最近のニュースで皆さんもしかしたら気になってるかなと思うのが、新型コロナウイルスの5類への変更ですかね。これ、ニュースで皆さん聞いている方も多いと思うんですが、そもそもこの5類って何なのよという方もいらっしゃると思うので、軽く説明させていただきます。
感染症は、元々その病原体の感染しやすさや重症化リスクによって、1類から5類まで分類されていて、それぞれのリスクレベルに対応した対策があるんですね。例えば一番上の1類にはペストやエボラ出血熱という、名前からして怖そうな病原体が入っているんですけれども、感染しやすさや、患ってしまった場合の重篤性を考え合わせると、非常に危険性が高い感染症が入っているので、感染が確認された場合には汚染された建物への立ち入り禁止なんかが行われる仕組みになっています。
新型コロナウイルスは、その特性から、今まで数字のつかない独自の分類に入っていたんですけれども、やはり今、感染状況がずいぶん落ち着いてきたことや、既に感染された方、またワクチン接種した方が増え、免疫を持っている方が多いために、今後感染しても死亡に繋がってしまう方や、重症化の度合いが、今までと比べると減ること、今後感染者数が増えても数年前のような医療ひっ迫を起こすことはないだろうと予想できるので、5月より5類に分類が変わる予定です。
5類に変わるとどうなるのかというと、一番大きいのは、もしかしたら感染後の外出自粛が強制的でなくなることかなと思います。また、今までコロナ感染が確認された場合は、自治体指定の発熱外来や受け入れ病院に指定された場所に送られていたと思うんですけれども、それがなくなって、新型コロナ感染症の受診が他の機関でもできるようになるということです。また、治療や検査の公費負担が今後減る可能性もあります。これはすぐにというわけではなさそうですが、一部国民の負担に移行する可能性もあるといった変化が起こる予定です。
マスクに関しては、この何類っていうこととは関係なく、既に個々の施設や個人の判断になりましたので、やはり総合的に見て、公的な規制がなくなる分、自分たちで考えて自分たちで判断することが求められる変化になると思うんですね。
発熱しているときに人と会うのは、どんなに規制がなくても、自分のためにも相手のためにも無謀なわけで、やはりできる限り避けるべきだと思いますし、こういったことも含めて、今まで同様感染対策を大切にしながらも、感染対策によって失われるものがないように、個々の判断というものが大切になってくる感じですね。
「立ち合い出産」に見る感染対策をするリスクとしないリスク
例えば私は、最近日本の先生方とパンデミック中の立会い出産についての論文を書いたんですけれども、私達の研究によると、他の先進国では、妊婦さんが希望する場合は、感染状況に応じて出産時の希望のサポーターの立会いというものが認められていました。それにもかかわらず、日本ではあの時期、地域感染率や、どんな波が来ているかに関係なく、この数年間、一律に立会い出産を希望された妊婦さんの半数しか実現できなかったっていう結果だったんですね。同じく子供の入院などでも、付き添いに関して地域感染率などに関係なく一律に規制があった病院がほとんどだったようです。
もちろん感染対策は本当に大切ですが、やっぱり忘れてはいけないのは、ヘルスアウトカム(健康状態の変化)です。出産に関しても入院が必要な子供の病気に関しても、患者さんが信頼してるサポーターが近くにいるという要因がある方が、ヘルスアウトカムが圧倒的に良いという研究結果もあるということなんですよね。
パンデミック下に感染対策はもちろん本当に大切でしたし、これからも大切ですが、一律にダメということで失われるヘルスベネフィットもあるわけで、感染のリスクと感染対策のリスクを天秤にかける、難しい判断が必要になっていた時期かと思います。そしてその判断が、これから5類への移行ということに合わせて、一律にダメではなく、うまく実生活の中の大切な部分を取り戻していきながら感染をコントロールするという、そのバランスを考え直す時期に来ているのかなという印象です。ここからはちょっと他の先生方のコメントをいただきたいと思うんですけれども。
5類への移行に関してや、医療啓発家としてのソーシャルジャスティスへの思いなど、私の本を読んでくださった方もいらっしゃると思うんですけれどもその感想など、ご自由にお聞かせいただけたらと思います。では……峰先生も参加してるじゃないですか! 峰先生こんにちは。
峰宗太郎
こんばんは。
内田舞
お久しぶりです。ここでばぶらーさんの生きる喜びの噴水が湧き始めたんじゃないかと思います。本当に峰先生ありがとうございます。峰先生、今ばぶらーさんたちが「峰先生参加してるよ」って声を掛け合っている時期かと思うので、ばぶらーさんにもうちょっと参加する機会を与えてから峰先生の番にしますね。ちょっとお待ちください。では、いつも一番最初に発言してくださっていた安川康介先生お願いします。
安川康介
皆さんおはようございます。まず、内田先生の本の感想からお話しします。僕これ読んですごくいろいろ感動して、皆さんぜひ、日本だとあと4日後に発売になるから読んでいただきたいです。
何かその、ソーシャルジャスティスっていうと、日本だと、ハーバードのマイケル・サンデル先生の「これからの正義の話をしよう」という本が流行ったこともあり、正義って聞いたときに、なんか結構難しいジェレミー・ベンサムの功利主義とか、最大多数の最大幸福とか、自由主義とかを考えたり、「5人の人を轢くか1人の人を轢くか」みたいな、そういう問題を考えてしまう人が多分多いと思うんです。しかし、内田先生のこの本はそういう正義とは何かという定義について考える本ではなくて、ソーシャルジャスティスっていうと大層なことに聞こえるけれども、人間一人ひとりの関係の中、もっと細かく言えば、一つひとつのお互いに掛け合う言葉の中に、ソーシャルジャスティスはあるんだよという話だと、僕は感じました。むしろ「ソーシャルジャスティスとは何か」という入門本ではなく、どうしていけば、日常生活の中でどうやって人と関わっていけばいいのかということを考える、「ソーシャルジャスティスの実践の本」だと僕は思っています。本当にいい本だと思うので、ぜひおすすめいたします。
内田舞
ありがとうございます。安川康介先生はYouTuberなんですけど、本の中に出てくる再評価というコンセプトを説明するYouTube動画を最近作成しました。でもその前に出てきた先生の今週の動画がインパクトあり過ぎて、あれに続いてしまうと申し訳ない気がするけど大丈夫かな。皆さん、これね、見た方がいいですよ。何の説明をしているか私の口からは言いませんが、米国内科専門医 安川康介の医学チャンネルが、人体の不思議について、割とビジュアルにインパクトのあるものを、安川先生が真顔でずっと文献レビューをしながら話しているすごいすごい動画です。
木下喬弘
結局たまたまなのですか、あれは。
安川康介
わからない人のために説明すると、男性の玉の高さが違うのは、人類共通している解剖学的な特徴で、なぜそういうことが起きるのかを、医者の視点から考えた動画を撮りました。あれを撮るのに20本以上論文読んで結構大変だったので、もし見た人がいたら、いいね!ボタンを押していただければ嬉しいです。それと併せて、今、内田先生との動画を編集しているので、今週どこかの時点で出そうと思うので、もしソーシャルジャスティスの本を読んで、感想を持った方が見てみたら結構面白い動画になるんじゃないかなと思います。よろしくお願いします。
▼米国内科医 安川康介の医学チャンネル
【ハーバード 精神科医 内田舞先生】感情と向き合うことから始める ソーシャルジャスティス
内田舞
ありがとうございます。今日はフロリダからログインしてくださった、アメリカの感染症内科も一般内科もやってらっしゃる安川康介先生でした。では次は、こびナビの初代代表、私と同じく精神科医である吉村健佑先生いきましょう。
5類に移行 検疫は?診察は?
吉村健佑
はい、内田先生ありがとうございます。指名いただきましたこびナビの幹事を務めてます、吉村健佑です。バックグラウンドは精神科医ですが、厚生労働省での勤務などを経て、医療政策や公衆衛生教育研究を大学でもやっています。
先ほど5類の話を内田先生にずいぶんわかりやすくご紹介いただきました。今も、ここ1か月ぐらい、ちょうど3月末頃から、厚生労働省をはじめ国からたくさんの通知が自治体や医療機関に出されて、もう読みきれないぐらいの、要は正常化に向けての政策決定がバシバシなされてるんですね。いくつか我々の生活にも関係しそうなことを紹介したいと思います。
例えば、5月8日から5類相当になりますと、今コロナになると、医療機関を通じて発生届というのを集計したりします。それで感染状況を確認するんですが、そういったものがなくなります。さらに、入院先の調整も変わってきます。例えば今は病院間で連携したり、地域の中で保健所単位で連絡連携し、それがうまくいかないと都道府県が直接入院先を検索し医療を受けられるように、ないしは軽症であればご自宅で療養するよう指示を出します。これがなくなり、もし感染して症状が出た場合も、通常の診療と同じように入院先を医療機関が検索したり、行き先を救急隊と病院が相談して決めていく形になります。
これが急激な変化になりすぎると、仮に新型コロナになって重症化しても「うちはコロナの診療対応できない」と多くの医療機関が受け入れ不可の表明をすると行き先がなくなってしまう可能性もあります。そうすると、5類ではあるんだけど、当面は入院の調整を都道府県なども継続していきましょうとか、そういった話し合いがされています。ですので、ちょうど5月8日に向けてどういうふうな患者さんの取り扱いや治療の場を提供するかという議論中ですね。
もう少し具体的に言うと、例えば新型コロナの対応として、電話診療やオンライン診療が非常に使いやすいようにルールが緩和されてるんですね。これは時限的・特例的措置といって、これはアメリカなど欧米では当たり前にやっている電話・オンライン診療を、日本でも緩和して、初診から電話で診療して薬剤処方することが許されています。これも移行期間を経て7月31日には終了します。そんな感じで、医療のあり方も新型コロナから日常診療に移行します。
もう一つなんですけど、私は成田空港の検疫の支援を今もしていて、ここ2~3年関与しています。もう空港検疫は全飛行機の中からいくつかの機体を選んで「サンプル調査」で検査をし、それで変異ウイルスが出てくるかどうかのモニタリングにとどめています。どうしても熱が出て症状がある方に限って検査を行い、新型コロナ陽性になったら短期間療養してもらうというふうに、取り扱いも変わりました。療養施設にたくさんの人があふれている状況は、もうなくなりました。現在国は、次回こういったパンデミックが起こったらどうしようという医療計画を作っている途中だったり、新興感染症への対応もどのようなルール、対応、準備をしたらいいかをリストアップしています。私からは一旦以上です。どうですか内田先生。何か気になることはありますか?
内田舞
ありがとうございます。なるほど、こういう変化が起こるんだなということで。そうですね、私としては日本に帰りやすくなってくれればいいなと常に思っているので、検疫の部分が少し緩まるというのは、私個人としてはすごくありがたいなと思っております。でもその中で、日本がしっかり感染から守られるようにいいバランスでやっていく、その難しいバランスを常に様々な方が考えながらやってくれていることを現場にいる先生から聞くと、やはりありがたみが湧いてきます。本当にありがとうございました。
吉村健佑
はい、ありがとうございました。おそらく詳しくは谷口先生なんかも現場にいらっしゃるので、よく知ってらっしゃると思います。
内田舞
ありがとうございます。次、でしたら谷口先生今ご移動中かと思うんですけれども、もしお話ができたら、実際日本でコロナ診察をされていらっしゃるのは先生なので、ぜひ現場からの声を聞かせていただけたらと思います。
谷口俊文
聞こえますか。接続もちょっと悪くて出たり入ったりで申し訳ないのですが、今コロナの5類の話ですかね。コロナ病床って今まであったと思うんですけれども、それが実は、(今年の)9月末までは多分そういった枠組みで、コロナ病床ってのはまだ続くだろうというふうになっていてですね。一般の病院が診てくれるかというと、なかなか診てくれないんじゃないかという状況がまだあるんですよね。そのあたりはゆっくりと交渉しながら、県が調整しながら、診てくださる医療機関を増やしていくと。それまでの間は、いわゆる「コロナを今まで診ていた病院がコロナの病床を確保せよ」みたいな通知が来てしまったので、そういうことをやって、でもいきなりなくなるっていうのもね、なかなかそういったことも難しいと思うので、なので割とこう(接続途絶える)
内田舞
先生、今ちょっと接続悪くなってしまったかもしれないですね。そうですね。私もね、これ最初他の病院でも診れるよっていうのを聞いたときに、「でも診てくれるのかな?」っていうところが正直な感想だったんですよね。どこでもコロナ診療できるよって言われたところで、今までこの3年間(コロナ診療を)していなかった医療機関が突然できるんだろうかっていうことと、あと、もしかしたら今までコロナ指定病院だったところが「うちはちょっと減らします」という判断もできるのかなって思ったところで、実際コロナ診療ができる医療機関が減ってしまったらどうしようという不安が、私はよぎったんですけれども、その辺どうですかね谷口先生。
谷口俊文
そうですね。なので、病床を確保しながらソフトランディングっていう形を目指してるのかなと。千葉県は結構割と知事が過激だったりしてハードランディングするのかと思いきや、蓋を開けてみたら割としっかりと考えてくださっていて、それで病床確保しながら、順次減らしていく形になるのかなと思うので、完全に5類になったからといって、いきなりバーン!と変わるわけではないかなと思いました。以上です。
内田舞
ご移動中、ありがとうございます。次は池田早希先生にいきたいと思います。池田先生は、シングルマザーとして、アメリカでの小児科と小児感染症の研修をしながら、ロンドンの公衆衛生大学院から学位まで取っちゃう、さらにこびナビの副代表も務められた、本当にスーパーウーマンの小児科医の先生です。はい、早希先生お願いします。
池田早希
ありがとうございます。スーパーウーマンの内田舞先生にそんな紹介をいただいて、とても嬉しいです。怒涛の3年間でしたよね、本当に。今さっきの話に追加なんですけど、私は今日本で働いていて、小児のクリニックや、コロナの患者さんを診るような施設で働いていたりするんですけど、高齢者にとっては、いまだに新型コロナウイルスがとても怖い病気であることは変わりありません。もちろんワクチンも出てきたし、どういう感染症かはわかっていて、治療法などもどんどん出てきています。ただ、高齢者やリスクが高い方に関しては本当に注意が必要ですし、支援も必要ですよね。それで東京都に関しては、高齢者等医療支援型施設というのを当初より設けていて、それはしばらく継続するという方針が出ていましたが、今後それもどうなっていくのかには注目したいなと思っています。
舞先生の本についても話させてください!舞先生とはいろんなお話を普段からしてますし、過去にもこびスペやいろんな記事で話してくれている内容も一部あるかなと思うんですけど、前から色んな人が感じているようなモヤモヤを、すごくうまく言葉で表してくれるんですよね、舞先生の文章だったり本とかは。そういうものが散りばめられていて、マイクロアグレッションの話とかもちろんそうですし。私達の気持ちを言語化し、代弁してくれてるんだなと感じるような本でした。
あとはもちろんソーシャルジャスティスに関しては、安川先生も言ってましたけど、これは身近なものなんだよ、それぞれ一人ひとりができることがあるんだよというのを、いろんなエピソードを交えながら説明してくれて、自分で何ができるんだろうと考えさせてくれる本だなと思っていました。
あとは先生のプライベートの話とか、旦那さんであるジャックさんと出会いのエピソードの話や子育ての話とかもいっぱい入っていて、内田舞先生のプロフェッショナルとしての魅力はもちろんだし、コロナ禍での経験ももちろんだけど、あとは人間としての魅力をギュッと詰めて教えてくれるようなものだな、もっともっと知りたいな、と思わせてくれるような本でした。
内田舞
ありがとうございます!この本には本当にたくさんのパーソナルなエピソードを詰め込んでみました。それはもう私が日々学ばせてもらっていることです。こびナビの中でも毎日いろんなことを学ばせてもらっているし、育児って子供は自分の思い通りにならないことの方が多いので、その中で交流だったりとか、私自身の考え方がチャレンジされることが本当に多くて、その一つひとつの中での考えるプロセスを少し紹介させていただきました。
では次はですね、まさかこの人よりも先に私が炎上の本を書くことになるとはという、手を洗う救急医こと木下喬弘先生お願いします。
木下喬弘
ほんまやで。
内田舞
本当よね。もうまさかよ、まさか。
木下喬弘
もう本当にそれだけはやめて欲しかったんですけど。これを読みながら、自分がもし炎上の本を書くとしたら何を書くのかってことを僕は考えたんですよ。とりあえず炎上するじゃないですか。それで何かワーッて言われるじゃないですか。すごい一気に批判とか来るじゃないですか。そうしたときになんか「いやこの人らは何言ってんのやろ」って思うっていう。
内田舞
1行で終わりじゃん、その本(笑) 本じゃなくてツイートよ。
木下喬弘
よくこれ280ページも書いたなぁと思って。
内田舞
ありがとうございます(笑) Taka先生からの褒め言葉として受け取っております。
木下喬弘
すごいですね。そしてこのスペース、もうこれえげつない数の人が聴いてますよ!人気コンテンツですね。ちょっとね朝なんでキレがあまり…。日本の皆さんに申し訳ない…。
内田舞
大丈夫。ちょっとテンション違うなってみんな感じてると思うけど、大丈夫ですよ。本当にありがとうございます。
安川康介
木下先生の発言の内容が本当に薄いんですけど、大丈夫ですかこれ。
内田舞
はい、次行きましょう(笑) Taka先生また近々会いましょうボストンで。
次は現代表のれおにい先生いきましょう。こびナビのインスタライブでは半年くらいの期間、毎日何千という質問に答えて、ワクチンに関して毎日同じような質問が何回来ても同じ答えを優しく答えてあげるという、そんな修行の滝に打たれていたれおにい先生、お願いします。
子どものワクチン接種について
岡田玲緒奈
どうも。そんなこともやってましたが、木下先生にいまだに「あれは頭おかしい施策だった」と言われています。
内田舞
いやいや、すごく効果はあったと思いますよ。あれを見て安心感を得た人はたくさんいますし。でもよく体力的にも精神的にも続いたなというのが私個人の感想です。
岡田玲緒奈
あれは確実に家庭不和の原因ではありました。それはさておき、結局のところ、あの企画は情報提供の目標とする年代として、インスタグラムですから若い親御さんを主に考えていたわけです。しかし、さっきも首相官邸の接種率を見てたんですが、小児の接種率はいまだに伸び悩んでいますね。あまりに世代間の格差が大きいので「なんでこうなるの?!」っていう感じでずっといます。インスタライブは時期としてはいま伸び悩んでいる小児の年代が接種対象になる前で時期的にはちょっとずれてはいましたけど、やはり小児科医としては小児の接種率には貢献できなかったっていうのが、申し訳ないなと思うところはありますね。
内田舞
私もそう思ってるんですよね。こびナビの中で私ができて良かったと思うのが、妊婦さんとそのパートナーの接種率を上げられたことで、できなかったなと思うのが、やはり子ども接種に関する科学的事実を十分に広めることでしたよね。
岡田玲緒奈
大人の方を見ればもう20代以上で区切ってもかなりの接種率なんで、全体としては日本はすごくよくやったとは思います。5類とか、マスクを外そうとか(外させる運動みたいのはちょっと意味がわからないですけど)、「コロナ前の社会に戻っていく」という流れの中においては、やっぱりこの小児の接種率を上げておいた方がいいんだけどなと思います。最近は僕たちに何か他にできることはあったのだろうかって思うようなことはありますよね。
先生の本はまだ序盤の方を読んでるって感じなんですけど、SNSとかで「それは何とか論法だ」とかって言われているのを目にするいろんなのが解説されていて、「へえ、そういう意味だったんだ」という物も結構ありますね。
内田舞
プロローグの後の第1章に、SNS上で使われている様々な論理のねじれ、本質について話すのではなく、ちょっと違う方向に論理を持っていくような、ねじれた論理の種類を紹介しているんですけれども、私としては、これを知っているか知ってないかで、そのときの自分の気持ちの保ち方が結構変わるんじゃないかなと思っています。どんなに論理がねじれた方向に持っていかれたとしても、自分自身は本質から離れないようにすることを私自身は心がけているのですが、重要なんじゃないかなと思います。
せっかくだから子供のワクチンについても話しましょう。子供のワクチンについて先生が今言いたいことはどんなことですかね。
岡田玲緒奈
まず一つ言えることは「子どもは重症化しない」というのは決して真ではありません。頻度が低いのは事実ですが「ほとんどの人は普通の風邪っぽい」みたいな中に、予測不能に命を失う人まで出るというむしろかなり困った病気です。一方でワクチンに関しては、低年齢の人たち、特に6か月〜5歳の人なんかは特にほとんどプラセボ群と差がなくて、副反応があまりありません。ワクチンを打っても大人のように熱もガッツリ出るとかいうこともないとなると、それこそワクチンを接種していくのが推奨されるべき感染症だと思います。接種が進んでいった方が安心して正常化に向けた動きをしていけるのかなとはずっと思っています。やはりいろんな重症例・死亡例の報告を見ていても「こんなん外来で診た段階で予測できないよ」っていう感じなんですよね。
内田舞
そうですよね。「誰が重症化するかはわからないよ」っていう。
岡田玲緒奈
やはりそういう感染症っていうのは一般に、ワクチンがあって欲しいものですが、実際に今あるわけですから、広く子どもたちに接種がすすめられればいいんだけどなと思っています。
内田舞
いや本当に私も同感です。子供はコロナ感染してしまった場合に、大人と比べて重症化しにくいというのは事実です。しかし「重症化しにくい」ということと「重症化しない」というのは全く別のことです。重症化してしまった場合も、それが死に至らなかったとしても、本当に入院が必要なくらいになっているお子さんの、息苦しさや、熱にうなされている状況というのは、見ていられないものなんですよね。そのような重症化リスクを約75%下げられるこのワクチンは、ワクチン自体のリスクは非常に低いものであって、こんなにリスクが低くて、感染によるリスクを下げられるものを、私は打たない手はないと思っております。
また、残念ながらお子さんでコロナ感染症によって亡くなってしまった方が、アメリカのような感染大国においては2000人以上いますし、日本でも20人は超えてしまっているんですよね。その中で基礎疾患がなければ大丈夫なんじゃないかと思われる方もいらっしゃると思うんですけど、実はそんなことはなくて、入院が必要になったコロナ感染症のお子さんのうち、3分の1は基礎疾患のない方だったんですね。なので、今のところ誰が重症化してしまうか、誰が死亡に繋がってしまうかがわからないのが本当に怖いところなのです。そんなかなり怖い感染症のリスクを下げる手段があることが、もっと多くの人に知られて欲しいなと思います。実際、子供用のワクチンというのは、成分は全く大人と同じなんですけれども、量がかなり減らされておりまして、その分、副反応の率も大人と比べると、子供は発熱や倦怠感の出る確率が相当低い感じなんですよね。なので7歳、6歳、2歳のうちの子供たちも全員接種しておりまして、副反応はほとんどありませんでした。
アメリカは分断の国なので、ワクチン接種率に関しても相当な分断があるんですが、私が住んでいるボストン郊外の町では99%の接種率でありまして、子供たちのクラスメイトも全員接種しているような状態です。
今日の話の最初に「5類に下げるということは、自分たちで自分たちの判断をしていく」ということを申し上げましたが、その中で一番リスクが低く、感染してしまった場合のリスクを下げられる手段で一番効率がいいのはワクチンです。まだ接種されていないという方が聞いてらっしゃる方の中にいらしたりとか、お子さんについての接種を悩んでるっていう方がいらしたら、今まで私達こびナビが作ってきたコンテンツがホームページやツイートなどにありますので、ぜひ参考にしていただけたらと思います。ありがとうございます。
ではですね、ばぶらーの皆さんお待たせしました。峰宗太郎先生お願いいたします。
SNSでの情報発信 一対多 or 一対一の会話
峰宗太郎
どうもこんばんは。1100人も聞いてるんですね。すごいことですね。しかも、Twitterアプリ開くのが久しぶりだったんで、どうやって使うんだったか(笑) というか、Twitterまだあったんですね。なんかねイーロン・マスクさんが何とかで消えちゃったのかと思ってました。
内田舞
いや私もね、このオーナーのこのプラットフォームを私が消費することによって、どんな悪い社会影響を及ぼしてしまっているんだろうということを、日々葛藤しながら使っています。
峰宗太郎
そんな状況なんですね。先生の本のゲラなのかな?これは。端っこに十字のマークが入ってる本を読むのは苦手なのですが、ゲラを読んでましてね、要は、SNSとかでよく炎上とかいろんなつっかかってくる方とかどういう心理状態なのかも含めてですね、よくよく本当にわかりやすく書いていただいて素晴らしいなと思ったんですけども何より驚いたのは、先生日本語上手ですね(笑)
内田舞
いやね、上手になったんですよ! ありがとうございます。私アメリカに来て16年経ったところなんですけれども、本当あの新型コロナワクチン接種するまでの14年間くらい全く本当に日本と関わっていなくって、そしたら突然日本のメディアから声がかかるようになって、最初はもう英語混じりの日本語だったのが、最近スラスラ出てくるようになりました。このこびスペでの会話のおかげかと思っています。
峰宗太郎
ただ結構やっぱりルー大柴っぽい感じだなっていうくらい、英単語をなじませて翻訳できるといいなとは思いつつですね、なるほどなるほどと読んでいたんですけど。要はですね、一番届けたい人っていうのは誰なのかっていうのは難しい話だと思うんですけど、ソーシャルメディアとかと関わる方はみんな読んでいいんじゃないかなというような感じですよね。とにかく実際にエコーチェンバーとかにはまっちゃったり、いろんなことを炎上させてしまう人たちに本当はこういうことを理解しておいていただくと、そういうことが起こらない予防薬になるんだろうなと思いつつ、そういう人にはもう届かないと思いますんでね、基本的には。じゃなくて、巻き込まれる側とかね、それからそういうことをしてしまう人の周りで苦しんでる人とかね、そういう人はね、一度読んでいただけるとすごくいいなっていうところが、とにかく1章の方は多かったかなと思います。
あとはさっき分断の話がありましたけど、アメリカっていうのは、住んでいたときは思ってましたけど、本当に分断がすごい社会なんですね。明らかにリアルでもね。一方、日本の方が分断というのはなかなか見えにくい状況な国なんですけど、SNSに入ってみるとこれがまた分断が結局見えるという。それはもちろんSNSの拡声器みたいな効果があって、少数の人でも目立つ人とか悪目立ちする人の声が非常に大きく見えると。ただ、こういうのがいろんな運動に繋がって、変わってる人同士が結びつきやすくなるとかですね、これが政治運動や団体運動に繋がるということが、やはりSNSがパワーを持ってしまったので、まさにそういうところからソーシャルに分断を進めてしまうという現象が、もうかなり起こってますよね。
特にここ数年間皆さん感じてられると思いますけど、SNSを発にする政党とかですね、政治運動、社会運動、しかもかなり偏ったものですよね。そういったものが非常に大きな力を持ちつつあることを日本の皆さんも結構感じておられるんじゃないか。僕も感じてますけど。
そういう中で、どうしてそういうのが分断に繋がっていくかとか、社会全体で正義を考えるというのは、いいタイミングだなと思って良い素材を見つけられたなと思ってですね、結構にやにやしながら読んでいたわけ。
内田舞
ありがとうございます。峰先生といえば、聞いてくださっている方々の不安や思いに共感しながら、必要な情報を届けるプロフェッショナルな方だったと思うんですけれども、どうしてそうなられたんですかね。どうしてそのモチベーションが湧いたのか、そしてどうしてそれができるようになったのか、何かお考えになることってありますか。
峰宗太郎
いや僕の場合は「対社会」って考えたことはあまりなかったんですね。今でもあんまりないんです。もう「対個人」なんですよね。とりあえず目の前にいる人に向かい合うっていうことから始めたっていうのがもう全てで、それから私自身も1人の人間なので等価な人間ですよということでしか発信できないのでですね、発信だけじゃなくて大言壮語を吐くとかですね、先導したいっていう思いがあるわけじゃなくて、「私はこう考えています。あなたはどうですか?」ということです。それから、当然ですね、人間って想像力大事ですけど、やっぱり経験も大事で、こういう経験をしているから私はこう思うよっていうこと、それは一つのエビデンスと一緒で、それがあまり経験に偏りすぎると、当然のことながら科学的な思考ではなくなるわけですが、それでもリアルな経験というのは非常に強いわけですよね。
なので私がたまたまですね変な道を歩んだっていうこともあったり、自分自身が悩んだことに共感してくださる方も多かったのでね。自分の経験とかから伝えられることを、できるだけ一対一で伝えたいって思いでやっているので、僕はマシュマロプラットフォームが大好きだったのは、確かに多くの人が見てもらうんですけど、質問に対する回答は一対一なんですよね。
バーッと全体に届けることよりは、一つひとつ自分の考えを述べることでやってきたっていうことで、別に強く共感するとか、拾い上げるのが上手だったというよりも、プラットフォームの使い方がそうであったっていう。一対一であると。一対一であればですね、炎上するとしてもまずは一対一ですから、相手が一人ですから。そういう思いはあります。
内田舞
確かにね。ろうそくの火は吹けば消えますからね。
峰宗太郎
そういうことです。
内田舞
なるほど、なるほど。いや私はこびスペの中でも思い出の回は何回かあって、一つは谷口先生が死産になってしまったコロナ感染症の妊婦さんのお話をしてくださった涙の回だったのと、それからもう一つは峰先生と私で予定外のメンタルヘルス対談みたいなのをしたときだったんですよね。先生がご自身のうつ病の経験というものを語ってくださったことを。人間って感情的な動物なので、データや数字も大切でありながら、やはり個人のストーリーに心が動かされると思うんですけれども、その点、峰先生がご自分のストーリーを語ってくださったことを本当に私はありがたかったなと思っています。ぜひともこれからも、精神科ということに関しても、先生と一緒にいい心の動きっていうのを作っていけたらなと思っていますので、どうぞよろしくお願いします。
峰宗太郎
もちろんよろしくお願いします。あの回は私も非常によく覚えておりまして、あのときは本当にね、誰も来てくれなかったんですよね確か(笑) メインテーマを話して欲しい人が来てくれなくてそうなっちゃったっていう回だったんですけど(笑) ただですね、僕自身のメンタルヘルスというと、私、うつ病も燃え尽きも、一時はOCD(強迫性障害)やパニック障害に近い状況もあったし、若いときっていうのはいろんな症状が出ることがあったりしてですね。もちろん社会人の状況でも、精神の追い詰められ方って変わるので、聞いておられる方とかで「なんでそうなっちゃうんだろう。俺はそんなことなったことないよ」って思う方もいると思いますが、状況が変わると簡単に陥ることがあり得るわけですよ。
そういうときにね、やはり予防薬として、知識として知っているとか、周りの人が知っていることで助けられることって、いっぱいあると思うんですよね。僕もいい経験ばっかりしているわけじゃなくて、こういう経験してる人も多少はいると思うんですけど、身近にですね、やっぱり防げなかった自死ですね、自分で死を選んでしまった方とか、誰がどう言ってもどうしても精神状態が改善しない方とか、精神状態以前の問題に改善しなければいけないことがいっぱいある方がいらっしゃるんです。社会経済的状況とかですね。
でもそこまで一対一で人間ってがっぷり四つに組んでも1人の人を助けることができるかっていうと、それは自助なくしては無理なんですよね。自助っていうのは、自分を救いたいという気持ちが出てこなければいけないんですが、この気持ちってどこから湧いてくるのかなって思うとセルフィッシュ(自己中心的)な気持ちでは無理なんですよね。
やっぱり社会の中で人間生きてるから、生きがいだとか安定だとか、それから自己実現だとか、そういったことも含めて、あとは何のために社会があるのかとか、どうして我々は生きてるのかっていうことも全部含めて考えていかないと、人の心って安定しないんですよね。
だから、そういう意味では内田先生の本のプライベートなストーリーにあることや、悩みの吐露、いろんな経験を共有すること、それから社会全体の中での自分の立ち位置とかですね、社会をどう見るかだけじゃなくて自分をどう見るかに繋がっていると。そう思ったので、今悩んでいる人もそうですし、周りに悩んでる人がいるような人にぜひ読んでいただきたいとすごく感じました。メンタルヘルスって、実は他の病気と違って、1人の個人を診ていても治らないんですね。そういうことをよくわかって、精神科医というのは扱っているものが、他の医師とはまた違うところがあってね、そういう観点からも物を見てられるなというので、楽しんで読ませてもらいました。
内田舞
ありがとうございます。
木下喬弘
ちょっと。おじさん久しぶりにTwitter出てきてなんか喋りすぎちゃう? テンション上がり過ぎやで。
峰宗太郎
いや、おじさんねえ、そもそもこれ、なんだっけ。どんな雰囲気で今まで喋ってたんだか思い出せないんですけど。
内田舞
こんな感じでしたよ。
木下喬弘
おじさんTwitterやって良くなったの?
峰宗太郎
Twitterダメですよ、ダメです。
木下喬弘
では皆さんで通報してください。どうもありがとうございました。
内田舞
だめだめ、しないでしないで。いやこの声みんな聞きたいじゃないですか。
最後は黑ちゃんにいけますかね。
黑川友哉
こんばんは。ありがとうございます。電波よしおになりましたかね。
内田舞
よしおさん、いらっしゃーい!
黑川友哉
峰先生、全然変わらないですよね、調子が。トーンも含めて。
私はこびナビの事務局長をやらせていただいております。バックグラウンドとしては耳鼻咽喉科の医者ではありますが、皆さんコロナのことで何回か耳にしたことがあるかもしれませんが、PMDAという、お薬の審査とか、開発の相談とかをやってるような組織に、数年前に一時期所属したことがあります。そういった経験を踏まえて、コロナの情報発信の活動で、行政の視点とか、お薬の開発とか規制の話とかで何かお役に立てればということで、一緒に活動させていただいております。
あの、今日はこれ、たまたまの話ですか? たまたまの話、もう終わったんですか?
▼米国内科医 安川康介の医学チャンネル
金玉 左右差 日本人男性の75%が左が下?何故左の方が下なのか【医師が解説】 - YouTube)
内田舞
もう終わった!
黑川友哉
たまたまの話はすごい面白かったですね。私も思わず見直しましたね。
内田舞
いかがでした? 左でした?(笑)
黑川友哉
左だなと思いながら、結論はよくわかんなかったんですけど(笑)
今日、これほぼ全員集合ですか。
内田舞
こびナビ幹事会は全員集合ですね!
5類になってコロナ感染症自体が変わるわけではない
黑川友哉
皆さんが本当にいろんな情報を出してくださいました。やはりコロナのことに関して重要なのは、5月8日、多分皆さんにとって、Xデーというか、何か一つの区切りみたいに感じてらっしゃる方が、たくさんいらっしゃるんじゃないかなと思うんです。そのこと自体は私はそう悪いことではないと思っています。
でも大事なのは、コロナウイルスって、5月8日に誕生日を迎えて進化するとか退化するということはまずあり得ないじゃないですか。これは社会の仕組みがこういうふうになりますよっていうことだけなので、引き続きコロナっていうのは、いる!ということは理解していただきたいですし、社会の仕組み上で、先ほども吉村先生から「いろんな通知が出されてるんですよ、社会の仕組みが変わろうとしていますよ、元に戻ろうとしてますよ」っていうお話がありましたけど、療養期間のこととか、あとは病院にもしかしたら入院できない方もいらっしゃるとか、そういうことを踏まえると、よりコロナって、すごく身近に隣り合わせに付き合うことになる病気になると思うんですね。なので、ワクチンとかも皆さん多くの方が打っていただいてると思いますので、これからも、細かな、日々できるうがいとか手洗いとか、マスクをするとかっていうことが……なんかすごく(マスクを)外そうみたいな気運で、政府も何かそっちを前面に出してるのが気になるなとは思うんですけど……大切なことはこれからも変わらないということは、知っておいてもいいのかなと思います。
今の日本の感染状況って、大体4割ぐらいの方が既にコロナに感染していることが、献血の検体を用いて抗体価とかを見たときに明らかになってきているそうです。これは大体去年のイギリスの状況と同じということもわかっていて、ここから行動制限などが撤廃されたときに、今までみたいに爆発的に広がるってことはないんじゃないかと期待をされているんですけど、これはあくまでも今までのオミクロンの方が大多数を占めるときはそういう状況でしょうということです。今、ニュースとかでもう皆さんあまり興味がなくなっているかもしれませんが、新しいバリアント(変異体)が日本でも増えつつある状況です。XBB系統と呼ばれていますけれども、こういったものが今までのオミクロンよりも、またさらに広がりやすいんじゃないか、免疫逃避しやすいんじゃないかとも言われています。ただですね、重症化しやすいとかそういったことは今のところ明らかではないので、そこまで恐怖におびえる必要はないかなと思いますけども、今後どんなふうな広がり方をするのかはわからないので、引き続き感染予防策は意識して生活していただくといいんじゃないかなと思います。
その上で大事なのは、やっぱり皆さんの社会生活をみんなで継続していこうという考え方かなと思います。ぜひこれからもコロナのことは忘れず、しっかりとできることを続けていっていただけるといいのかな、それが皆さんにとっての「ソーシャルジャスティス」になるんじゃないかという気がしますので、ぜひ意識していただきたいです。
有害事象と副反応の違い
あともう一つだけ、このコロナの活動、こびナビの活動を通してすごく今回問題だったと思っているのが、日本で有害事象と副反応の違いの考え方が浸透していないとか、ワクチン打った後に起きた事象が報道されたとか、あとは小児でも変な症状が出たよっていうこととかが、すごく強く着目されたことです。そこで不安を感じた国民の方は、たくさんいらっしゃるんじゃないかなと思います。この副反応の報告の取りまとめの制度に穴があることは、事実だったんですね。
これがこの3年間のパンデミックを経て、昨年の12月に予防接種法が改正され、ワクチンの接種の情報も、しっかりとデータベース化しましょうと。一元管理をして、他のデータベースと紐付けながら、副反応の状況であったり様々な解析ができるようにしましょうということで、これが法律として制定されました。もちろんデータベースを作るのにすごく時間がかかるので、2025年度内っていうのが目処として目標が立てられていますけれども、日本のこのワクチンの接種状況が、今後はより質の高いデータが蓄積されるようになります。国民の皆さんに与えてきた、よくわからない、本当に有害事象なのか副反応なのか、それともたまたまワクチン接種後にそういった症状が出てるだけなのかっていうのがはっきりわからない状況だったかなと思うんですけども、そういったことも、今後はより見える化していくので、そういった状況は期待できるのかなと思っています。
内田舞
ありがとうございます。すごく重要なことですよね。これ、有害事象と副反応とにどのような違いがあるのか、知らない方もいらっしゃるかと思うんですけれども、有害事象っていうのはワクチンを打った後に起きたこと全てですね。そして副反応というのはワクチンを打ったから起きたこと、打った影響で起きたことということです。
ワクチンを打った後に石につまずいて転んで膝を擦りむく、そんなこともあるわけですよね。それもワクチンの後に起きたことなので、有害事象と言われるものなのです。でもそれが、ワクチンを打ったからなのかというとそうではないので、それは副反応ではない。でも、これが1個1個のケースを見ているだけでは、有害事象なのか副反応なのかわからないので、個人の経験をしているときは、それだけ不安があるということももちろんありますし、そしてその不安があるからこそ、組織として、団体として、どれが副反応なのか、どれが有害事象なのかを判断できるようにシステムを作らなければならないというのが、今黑川先生がおっしゃったことなんですね。
アメリカの場合どのようなシステムがあるかというと、ワクチンを打った後に起きたことは、全て報告するんですね。ワクチンを打った後に起きたことが、一般発生率、つまり、ワクチンと関係なく、ワクチンがなかった時期に、この事象がどのくらいの頻度で起きていたかと比較するんですね。そうすると、もしそのワクチンを打った後にこういったことが起きている頻度が一般発生率よりも高かったとわかれば、それはワクチンが原因になっているだろうとわかります。そのような検証でわかったのが、10代の若い男性の心筋炎ですね。確かに一般発生率よりもワクチン接種後に起きているというのがわかって、それに関しては、もしワクチン接種後に胸の痛みなどあった場合は、こういったことをしてくださいみたいなことが勧告されました。
もう一つの例を出すと、妊娠中にワクチンを打った方が流産されてしまった場合についてです。残念ながら流産というのは、ワクチンが存在する前から、大体世界の中では約13%ぐらいの妊娠が流産という形で終わってしまうというのが現実です。ワクチンを打った後に流産してしまったということがあったときに、それはワクチンのせいだったのかどうかを調べるために、ワクチン接種した多くの妊婦さんが、観察調査研究に参加しました。私自身も被験者として研究に参加しました。そのレートを見てみると、ワクチンを接種した後の流産率っていうのは、実は13%以下で、一般の流産率よりも低かったぐらいでした。そのような一般率との比較をして、大きなデータで見てみると、これはワクチンに関係あるものなのか、ワクチンに関係ないものなのかがわかってくるんですね。結論を言うと、ワクチンは流産は引き起こしません。今は妊娠中のワクチンは、世界的に推奨されています。
こういったシステムは、データがしっかり集められる環境でないと検証ができないので、そのようなデータを集めるシステムが日本でも作られている最中だよっていうことですよね、黑川先生。
黑川友哉
そうですね。日本のワクチン政策も、おそらくもう次のステージに入る準備が整ってるかな、整いつつあるかなと思いますので、期待したいです。
池田早希
黑ちゃんがさっき5類にシフトチェンジして生活がどうなるかっていう話をしてるときに、多分こびナビのフォロワーの方々って、結構アメリカの情報も知りたいなっていう人もいると思うんですよ。内田舞先生はアメリカにいらして、アメリカって、日本よりも早く、コロナと共に生活して、感染対策…マスクも、個人の自由だったりオフだったりっていうことを言ってたと思うんだけど、アメリカの生活の状況とか聞きたいんじゃないかなと思いまして。例えば小児のワクチンでも、コロナのワクチンが定期接種になってたりとか、それにアジャスト(調整)するための方法とかいろいろあると思うんですけど、話してもらってもいいですか。
「自分は自分、他人は他人」 自分のことを自分で判断するオーナーシップ
内田舞
了解です。そうですね、マスクに関しては、大体去年の夏ぐらいから個人の自由というふうになったのですが、夏の時点では人が集まるところや室内のスーパーマーケット等では、マスクしてる人の方が多いなという印象でした。とにかくアメリカは分断の国なので、本当に地域差があるんですよね。しかし私の生活の中では割とマスクをしてる人が去年の夏ぐらいまでは多かったのが、今この春になってみるとしてない人の方が増えてきたなという印象ですね。
そして、でも病院内では医療者もスタッフも患者さんもマスクが義務になっているので、やはりリスクが高い場所ではして、低い場所ではしないという感じです。あとは、アメリカは割と個人主義の国なので、自分は自分、他人は他人という感じで、「私はマスクするから」と言ってずっとしている子供の友達も学校にいるし、でもほとんどの子は今はしていない状況ですね。
(※医療機関内のマスク義務も2023年5月になくなりました。)
ワクチンに関しては、私が例えば医療カルテを開けると、この人はワクチンを何回まで打ってますよというのがトップページに出てきます。もしブースターまで打っていない人がいたら、何科の診察であっても話してみてくださいねというメッセージがあるので、この人はブースターを打っていないと出ていたら、「(ブースターのワクチンを)打っていないみたいだけれど、これについてどう思ってるの?」
という会話が医療にかかるごとにされるような、リマインダーみたいなのが出てきています。
子供も同じですね。ワクチンが接種対象になっているのが6か月以上の子供から全員なので、6か月以上の子の医療面談、診察のときには、打っていない人にはそれについての考えを聞いてみて、もちろん最終的に接種するかしないかは、個人、あるいは保護者たちの判断なので、その判断がいい悪いということはないのですが、それについて話す機会は提供する、そのような習慣がありますね。
子供の場合は毎年定期検診みたいなのが、何歳児検診みたいなのがあるので、そのときに「まだブースター打ってないみたいだから今日打ってく?」みたいな軽い会話で「あ、打っとく打っとく」みたいなのがあります。また、アメリカは薬局でワクチンが接種できるので、近くの薬局でオンラインで予約して「さあ行こう」っていう感じでも接種できますね。
今の生活としては割と「ウィズコロナだけれどもあまり聞かなくなったな」というのが現状ではありますが、本当に地域差があります。私の場合は先ほど言った個人主義という点では、何か楽しみにしていることがある前は、もうマスク死守!みたいな感じでいます。個人の判断を皆が自分の心にしっくりくるようにしている感じかと思います。そんな感じですかね、Taka先生、安川先生。
木下喬弘
うん、うん。いや油断してたわけじゃないんだけど、決して油断してたわけじゃないんだけど、うん、そんな感じちゃいますかね。
黑川友哉
これは油断してたな。
内田舞
最初から最後までこのトーンじゃんずっと(笑)
私、自分の判断でっていうのは悪いことじゃないと思うんですよ。日本の方々は真面目で、その真面目さは本当に素晴らしいと思いますし、ルールがあることにはルールに従うというのは全然悪いことじゃないと思うんですね。でも、ルールがなくなった中で自分はどうしたいのかを考える機会は大切なものです。
実は『ソーシャルジャスティス』の中にも書いてあるのですが、「オーナーシップ」という心理的な用語があって、オーナーシップって所有権、所有するっていうことなのですが、自分で考えたこと自分の経験や自分集めた情報で自分で考えた、自分のための決断に対して自分で責任を持つっていう、その感覚って、なんでもかんでもオーナーシップって言うと「あなたの判断はあなたの問題だから」って押し付けちゃうことになるかもしれないので、そういうものではなくて、やっぱり自分の中で考えるプロセスとして大切なことだし、自分の判断ということは、何がその後に起きたとしても、やっぱり自分として気持ちがいいものだと思うんですね。
自分の大切な人のために責任ある決断ができるようになるには、本当に正確な情報が必要だし、自分たちにとっては何が一番いいのかを考えるプロセスが必要だし、それを大切にすることは、私はすごくいいことだと思います。そのオーナーシップのプロセスがここから日本のコロナ対策においても始まる時期なのかなと、そんな感覚でいます。
池田早希
ありがとうございます。日本でも3月13日からマスクの着用が個人の判断になったので、私はてっきり13日になったら、マスク外してる人がもっと多いのかなと思ったんですけど、(マスクを)している人の方が圧倒的にマジョリティーですね。電車の中とかも。でも舞先生がおっしゃっていたように、やっぱり一人ひとりがマスクの話だけじゃなくて人生において、生活において、自分で適切な情報を収集して、自己決定して、その決定に関して責任を持つ、そして他の人たちが、した選択や考え方、決定に関しても尊重するというのは、すごく大事なプロセスだと思うし、そのためにはやはり、正確な情報を収集することや、あとはガイダンスもすごく参考になると思いますね。
内田舞
本当にその通りですね。ありがとうございます。ではこの辺でちょっと締めていこうかと思います。やっぱり昨年までの私達のこびスぺと比べて今日の会話のトーンを見ても、パンデミックは次のチャプターに来ているなというのは、皆さん感じていただけたかなと思います。次の段階に来た今、皆さんがどのように生きていくかは、正解がないことではあるんですけれども、自分にとって一番いい選択ができるように今日のこびスペが少しでも参考になったのであれば、私達も嬉しい気持ちです。
この話にも繋がるのですが、自分のため、それから他人のため、自分の大切な人のために、じっくり考えて決断すること、コミュニケートすること、それを考えるきっかけになればと思って書いたのが「ソーシャルジャスティス」という、私の今回発売になる本です。是非多くの方に手に取っていただけたらと私は強く願っております。
ではでは、今日は長い間お聞きいただき、ありがとうございました。先生方、今日は本当にどうもありがとうございました。すっごく私、楽しかったです。何かまたやりたいですよね、そのうち何かの機会に。
安川康介
やりましょう。木下先生はなんかあまり建設的な意見を言わないから、次はなくてもいいかもしれない。
木下喬弘
いやいや、たまたまです。
▼米国内科医 安川康介の医学チャンネル
金玉 左右差 日本人男性の75%が左が下?何故左の方が下なのか【医師が解説】 - YouTube)
黑川友哉
たまたま言うな。たまたまって言うな。(笑)
内田舞
たまたまこびスぺに立ち寄って下さった方々も(笑)、ずっとこびナビを応援して下さった方々も、今日はお聞きいただき、どうもありがとうございました。
ではまた会う日まで、ぜひともお元気で過ごしてください。
See you next time! Bye!