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今日の引用 2021.5.30. 引越し

"引越しの良いところは、何もかもを「ちゃら」にできることである。近所づきあい、人間関係、その他もろもろの日常生活の雑事、そういうのが全部一瞬にしてパッと消滅してしまうのである。この快感はもう一度覚えると忘れることができない。僕の友だちに麻雀で役満を振り込むたびに「ええい、打ちこわしじゃ!」と言って卓を蹴倒す人がいるけど、まあ気持としてはそれに似ている。夜逃げこそが引越しの基本的原型である。"

村上朝日堂|村上春樹/安西水丸 p41

この文章は、村上春樹が引越しが好きだというエッセイ。僕も数多く引越しをしてきた。子供の頃に2回引越している。最初に住んでいた家から、小学校へ入る前にマンションへ。中学生の頃に一戸建てへ。就職してから大阪へ、その後転勤になって名古屋へ。名古屋で一度引越して、また大阪に戻って来て、1年後にまた引越している。

それから退職して、半年ほど実家で過ごした後カナダへ。カナダでも3回引越し。それからオーストラリアへ。オーストラリアでは点々としていた。長期で過ごした家は2軒。数えるのが面倒になってきたけど、その後アフリカに行ったりもして、帰国してから結婚してまた引越した。今まで住んだと言える家は、宿泊所等を除くと15ヶ所になるのか。

僕は転勤族ではなかったが、一時期は毎年引越していた。でも決して、引越しが好きだからではない。いろいろな事情があった。転勤もあったし、シェアハウスを始めていた。ワーホリで外国に行っている間は、必然的に多くなる。あれを引っ越しと呼んでいいのかわからないけれど、僕だけでなくみんなすぐに住む場所を変えていた。

引越しが好きかというと、どちらかと言えば嫌いだ。何より大変だから。荷物をまとめたり、運んだりもそうだけど、引越し先だったり場所を探すのも大変だ。お金もたくさんかかる。また、運んだ荷物を開けて陳列したり、何がどこに行ったかわからなくなったり、なくしていたり、壊していたり、新しい家にサイズが合わなかったり…。

ただそれでも、村上春樹が言うように「何もかもがチャラになる」ということは確かにいい。少し違うかもしれないけれど、僕は飽きっぽいから同じところにずっと住んでいると退屈になってくる。引っ越すと身の回りの環境を一新できる。何もかもが新鮮になる。それは引越しのいい点だった。

引越しが多かったため、当時は所有物を減らすように努力していた。物をあまり持たない、買わないよう心がけていた。飾るものなんて、全て不要と言わんばかりに。服は夏と冬服を一週間分だけ。破れて捨てるまで着ていた。物を買うときには、なるべく小さくて軽いものを選んでいた。小さきことは、良きことだ。

外国にいたときは、さすがに定住と呼べなかった。バックパックに入るだけの荷物だけで、2年も3年も過ごしていた。そういうのだったら引越しも楽です。もはや引越しとも呼べない、ただの移動。キャンプでテント生活を送るのと変わらない。それ以降僕は、家はテントで十分と言い張ってきた。

結婚して定住して丸2年が過ぎ、荷物もけっこう増えてきた。これから引越しをするとなったら、そんな簡単にはいかない。またつらく苦しい引越しに逆戻り、と思ったけど僕の荷物はまだそこまで多くなかった。

(今引越し先を探している段階で、まだ具体的なことは何一つ決まっていませんが、2,3年以内に引っ越しするかも知れません。同じ市内で。)

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