今日の引用 2021.6.8. 夏派
"先日某広告会社に勤める近くの知りあいの家に遊びに行ったら、奥さんが出てきて「すみません、夏の休暇が終わって今日から出勤したんですよ」ということであった。そう言われると、「そうか、夏が終わってみんな社会復帰していくんだな。水泳だ日光浴だ花火だビーチボーイズだサーフィンだといまだにちゃらちゃらと遊びまわっているのは僕くらいなんだな」とつらい気持ちになってしまう。僕だって九月はじめまでに仕上げなきゃいけない小説の仕事があるというのにまだ一行も書いていない。こんなことでいいんだろうか、と思う。"
村上朝日堂の逆襲|村上春樹/安西水丸 p123
村上春樹は夏派だそうです。僕も夏派か冬派かと問われたら夏派、春と秋を入れても夏派。ファッションが好きな人はいろいろ着飾れるから冬派と答える人が多い。女の人も冬派と答える人が多かった。夏は汗で化粧が崩れたり日焼けしたりいろいろ大変なのだそうだ。うちの奥さんは暑いのが苦手で、太陽光にも弱い。肌にアレルギー症状が出るから、夏はもっぱらエアコンのついた室内に引きこもっている。
僕は夏派だけど、夏のイベントだったりマリンスポーツには全く興味がない。夏フェスとか行ったことない。海は好きだけどそんなに泳げないから、行っても何もしない。ただ眺めているだけ。僕の海好きは、海のない京都市で生まれ育った人間による、ただの海憧れ。バーベキューとかも、用意や後片付けがめんどくさい割に、特別おいしくはないから好きじゃない。店で食べたほうがいい。アウトドア派というわけではない。
じゃあ一体夏の何が好きなのか。まず第一に、暑いから楽な格好ができること。ほぼ全裸と変わらないような格好で過ごすことが許される。服が重かったり邪魔だったり窮屈だったりすると過ごしづらい。できるかぎり減らしたい。原始人のような発想だ。年中暖かい国へ行くと、みんなとても楽な格好で過ごしていてうらやましい。暑い国に住みたいものだ。インドやタイや香港や台湾のように、湿度が高い地域は実際に住むと地獄かもしれない。住んだことがないからわからない。
オーストラリアのパース近郊に半年ほど住んだことがある。ちょうど冬の終わりから夏にかけての半年だったんだけど、冬でも18℃近くあり、基本的に暖かくて快適だった。夏場はめちゃくちゃ暑く、僕が居たときで最高気温42℃を観測した。農場で働いていたから、何度も熱中症になった。同僚(日本人)が20人近くいて、半分は女の人なんだけど、こういう環境下では化粧もせず日焼けも気にしてられず、黙々と働いていた。彼女たちも過ごしやすかっただろうか?夏でもカラッとしていて僕は好きだった。
夏のいいところをもう一つ。夜を長く過ごせるところ。日が短かったり寒い時期は、外に出るのが億劫になり、結局自宅で縮こまっているか、早く寝る。夏だと屋外のビアガーデンへ行ったりできる。鴨川でビールを飲んだっていい。冬場はそういう過ごし方はできない。花見シーズンでさえけっこう寒い。夜は日差しもなく、めちゃくちゃ暑いってほどでもない。その辺に座ったらケツが痛いのと、蚊に刺されるのと、トイレを探さないといけないという点は注意したい。
北米やヨーロッパ、オーストラリアでは、公共の場での飲酒が犯罪だった。路上だけでなく公園なども含まれる。だから道端で平気で酒を飲みながら歩ける日本は、酒飲みの外国人にとってパラダイスだと聞いたことがある。日本人にとってはあたりまえのことだけど、よく考えればどこでも飲酒できる方がおかしい。喫煙は厳しくなったが、飲酒はまだ変わってないんだろうか?
キューバへ行ったとき、一緒に行った友人と夜に酒を飲もうとしたら、店がことごとく閉まっていた。しかたなく缶ビールを買ってそのへんで飲もうという話になった。しかし、このあたりの法律がどっちなのかわからない。公共の場で飲んでいいのか、違法なのか。
スペイン語がわからず、訊ねることもできない。英語が通じそうな人に聞いても「意味がわからない」と言われる。そう、「外で酒を飲むのはイリーガルか?」という質問は、日本で外国人から訊ねられてもおそらく「はあ?」となるだろう。当たり前すぎることは、かえって質問の意味が通じない。結局キューバでは合法でした。当時のことで、今はどうか知りません。
全体的にキューバでの日々は、まさに夏の過ごし方という感じで快適だった。1月だったけど。