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今日の引用 2021.6.11. 禁煙のノウハウ

"僕は思うのだけれど、禁煙に成功する・しないというのは意志の力とはそれほど関係ないみたいである。そりゃもちろん意志の力がまったくなきゃ禁煙できるわけないけれど、いちばん大事なのはノウハウである。「どうすれば有効に禁煙できるか」というノウハウがわかっていれば、禁煙というものはある程度システマティックに完遂できる筋合いのものなのだ。家中に「禁煙」と書いた紙をべたべたと貼ったり、ライターと灰皿をまとめて川に投げ込んだりだりするような人をしばしば見かけるが、こういうのは見かけが派手なわりに効果はあまりない。

禁煙のノウハウというのは人それぞれに少しずつ違うものだけれど、僕の場合は次の三点に要約できる。

(1)禁煙を始めたら三週間は仕事をしない。
(2)他人にあたる。汚い言葉を吐く。どんどん嫌味を言う。
(3)好きなだけ好きなものを食べる。

この三つの条件が充たされれば、僕はわりに簡単に煙草をやめることができる。"

村上朝日堂の逆襲|村上春樹/安西水丸 p201-202

僕はよく禁煙ネタを書いているけれど、またです。同じ禁煙ネタなので、全く同じことを言ってるかもしれません。村上春樹はこのコラムを書いていた当時、長編執筆の期間には喫煙していて、終わるとやめるというサイクルを繰り返していたそうだ。後にマラソンを始めてから完全にやめていた気がする。確か、上岡龍太郎もマラソンを始めてからタバコをやめたような。タバコをやめたければ、マラソンを始めるのが一番いいのではないか。

僕はマラソンもジョギングもしていないけれど、禁煙を始めてちょうど2年が経った。この2年間は全く一本も吸っていない。夢の中では何本も吸った。タバコにまつわる夢は今でもときどき見る。2年も禁煙が続いているけれど、もし奥さんに捨てられたら喫煙を再開するだろう。ストレスが一番の要因になる。

村上春樹の禁煙ノウハウも、タバコを吸うことによって逃していたストレスを、いかに別の方法で逃すかに一点集中している気がする。仕事をしないこと、嫌味を言うこと、好きなだけ食べることで、タバコを吸うことに匹敵するストレス解消を行っている。

僕の禁煙ノウハウは、タバコにまつわることを何も考えないようにすること。全く考えないのは無理だから、タバコに関する何かが頭に思い浮かぼうものなら、意識的に別のことを考える。タバコを思い起こす物は身の回りに置かない。ライターや灰皿は捨てた。こんなもんは買えばどうにでもなるんだけど、目の届く場所に置かないことが重要だった。

他に、タバコを吸う場に行かないこと。喫煙可のバーなどに行けばけっこうな割合でタバコを吸っている。禁煙を始めた当時が、タバコを吸う人との付き合いがないタイミングで功を奏した。

映画やドラマもよくない。本当に、ドラッグのフラッシュバックやら禁断症状みたいなのが起こる。そうなると我慢するのが苦しい。だから可能な限り喫煙描写を遠ざける。

僕のノウハウも、村上春樹のと近い。全然違うじゃないか、と思うかもしれないが、意志の力に頼らないという点においては全く同じ。自分の意志だったり決意の力なんて信用していないから、環境そのものを変えてしまう。これは禁煙に限らず、生活習慣の改善や勉強、運動習慣をつけるにあたっても最適だと思う。自分の意志の力を信じず、環境の力に頼る。

大前研一の有名な言葉で、

"人間が変わる方法は3つしかない。
1番目は時間配分を変える。
2番目は住む場所を変える。
3番目はつきあう人を変える。
この3つの要素でしか人間は変わらない。
最も無意味なのは、『決意を新たにする』ことだ。"

こういうのがあった。このやり方はまんま禁煙に当てはまるのではないか。僕は大前研一の事は全然知らないし、時間配分や住む場所や付き合う人を変えても人間は変わらないと思うけれど、生活習慣程度だったら環境を変えることで、必然的に変わると思う。

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