2021年5月16日

人新世(ひとしんせい)の「資本論」は読んでいないけれど、今日店に来た人が読んでおり、話を聞いた。この本は名前だけ見かけたことがあったが、どんな内容か全然知らなかった。なんかすごいらしい。地球環境を保護するために脱成長、脱資本主義を果たそう!それが実現できるのは、マルクスを正しく再解釈した真の共産主義、というような本らしい。これが2021年の新書大賞を獲り、今20万部売れているとか。

SDGsは「大衆のアヘン」である!

というコピーが、だいたいどのネット記事でも話題になっている。これはマルクスの「宗教は、逆境に悩める者のため息であり(中略)、それは民衆の阿片である」という言葉をもじった言葉。SDGs、みんな何かをやった気になって、アヘンのように陶酔している。SDGsは経済活動を行うにあたり、正当化の口実として利用されるだけの免罪符で、より質が悪い。成長を志す資本主義下で、環境保全なんていくらやっても根本的な解決からは程遠い。本当に持続可能な社会を作るのは、脱成長コミュニズムだとか。

本の内容については読んでから考えるとして、奥さんと「そもそも資本主義とは、社会主義とは」というような話をしていた。社会主義や共産主義が表舞台で話題に上がることなんて、ソ連の崩壊以来か?日本の大学の経済学部から、マルクス経済学が一掃されて久しい。社会主義や共産主義、資本論やカール・マルクスについて真面目に話していたら、時代遅れの狂信者かテロリストぐらいに思われていた時代も長かった。

だから今のこの事態が、とても不思議な光景に見える。レッドパージやら共産党アレルギーのあったアメリカでは、今でも起こり得ない議論だろう。もともと日本のマスコミなんかは左翼出身の人ばかりだったが、それでも2021年にマルクスが話題になるなんて、それも現代の問題に対応するために現代ナイズされたマルクス主義なんて、想像できただろうか?ソ連崩壊が1991年だから、30年ぶりの快挙(?)だと言える。

著者のプロフィールは日本の哲学者、経済思想史研究者となっている。経済学者ではない。アメリカの大学を卒業して、ドイツの大学院で修士・博士課程を修了、その後客員研究員をやっていたみたい。現在は大阪市立大学の准教授。日本でこの本が話題になるより前に、英語で本を出しておりドイッチャー記念賞に選ばれている。ドイッチャーはトロツキー伝などを書いた、アシュケナージのユダヤ人インターナショナリスト(この響き…)。

こういう話は、うちの親父とか臨床心理士の河合さんとかと大いに語りたいやつ。読んだ上で。

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