【音楽×本 鑑賞録】3月5日~ベンジャミン・ブリテン オペラ『ピーター・グライムズ』
音楽観を鍛える鑑賞録。
今日は珈琲録をお休みします。
3月5日のテーマは【主題】
とりあげる作品は、
ベンジャミン・ブリテン /
オペラ『ピーター・グライムズ』
です。
Till the strong foe the vital powers possess’d;
Then with an inward, broken voice he cried,
“Again they come!” and mutter’d as he died.
「強力な敵まで、生命力をもっている。
それから彼は心のなかで、つぶれた声で叫んだ、
「またあいつらが来た!」 死のきわで、そうつぶやいた。
ーThe Borough PETER GRIMES, by George Crabbe より抜粋
ブリテン男爵エドワード・ベンジャミン・ブリテン
Edward Benjamin Britten, Baron Britten
1913年11月22日 - 1976年12月4日
イギリスの作曲家・指揮者・ピアニスト。
『ピーター・グライムズ』 (Peter Grimes) 作品33、
台本はモンタギュー・スレイター (Montagu Slater) によるもので、
ジョージ・クラッブの詩『町』(The Borough)の一節である「ピーター・グライムズ」が原作。ブリテンにとって最初の本格的オペラです。
このピーター・グライムズの物語は、引きこまれるものでした。
主人公で漁師のグライムズも、責め立てる村人も、グライムズの手助けをしようとするエレン、ボルストロートやジョンも、物語が進むにつれ、登場人物の皆がおかしくなっていく。
この物語からは、ギュスターヴ・ル・ボンの『群集心理』を彷彿しました。
『群衆に加わると、本能的な人間、従って野蛮人と化していまうのだ」
ということを教えてくれているようです。
群衆のなかで、個々人の判断が思考停止状態になり、自己中心の世界観で閉じてしまったときの悲劇。現実世界でも起こりうるのではないかという危惧があります。
人類という組織体にいる限り、この危うさが常に憑きまとっていることを忘れないようにしたいところです。
このオペラは声楽パートを省き、管弦楽のみで演奏する『4つの海の間奏曲』と『パッサカリア』というオーケストラ用に編曲されたものもあります。
明け方の航海を行くようで啓示的な第1曲『夜明け』(Dawn )、軽やかで爽快感がありながら、どこか不穏な鐘の音が気になる第2曲『日曜の朝』(Sunday Morning)、夜の海に浮かぶ星々や月をイメージさせる第3曲『月光』(Moonlight)、スリリングで切迫感のある演奏のなか、ティンパニの無双が聞きごたえのある第4曲『嵐』(Storm)と、オーケストレーションを聴くだけでも、その情景を想像して楽しむことができます。
以前に日本で上演されたこともあるそうですが、
オペラを生でみたことがないだけに、いつか見てみたい作品のひとつになりました。